小林麻央さんに後悔なし?「余命」「障害」「重病」を告知された人とその家族が考えること

 

余命を告知されたとき、自分や家族の重い病気や障害を知らされたとき、人は大なり小なりショックを受けます。そのショックから事実を受け入れるまでに、人はどのような心理的プロセスをたどるのでしょうか?

 

2017年6月22日、乳がんで闘病中だったフリーアナウンサーの小林麻央さんが亡くました(享年34)。そしてその後、彼女が通っていたクリニックに「業務停止命令」が下ったことが話題に。

そのクリニックは、がん治療や美容に効果があるとうたい、さい帯血(妊婦のへその緒などに含まれる血液)を患者に投与する再生医療を無届けで行っていたというのです。

 

これをきっかけに、小林麻央さんは実は「医学的根拠の乏しい施術を受け続けたことで適切な治療を受けるのが遅れたのではないか」との声が挙がってきているのです。さらに、夫の市川海老蔵さん(39)のスピリチュアル信仰が悪影響を及ぼしたのではないかとの憶測まで飛び交っているようです。

事実、そのクリニックのホームページには「外科手術では取りきれなかったガン細胞が消えた」「主治医からガン細胞が縮小し転移も全くないと診断された」といった患者の声も掲載されているのですが……。

 

この療法は歴史が浅く、有用性があるかどうかは現時点ではハッキリとしたことが言えません。それに、普通に考えて水素水のお湯に浸かっただけでガンの治療に効果があるというのは信じがたいことです。少なくとも、医学的根拠が明確化された治療でないことは間違いありません。

小林麻央さんは、がん発見後に医師から抗がん剤治療などの「標準治療」を勧められたそうですが、それを断って1年以上も前述の療法や「気功治療」などを行っていたといいます。つまりは、これらの療法が原因で (本来行われるべきだった) 治療が遅れたと思われるのです。

 

真意のほどはともかくとして、

(麻央さんの心境や行動などを念頭に置いて) 人は「余命」「障害」「重病」などを告知された時にどんなことを考えどんな行動をとるのかを少しだけ考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

「標準治療」を断った背景には出産への思いが?

 

全国がんセンター協議会の調査によれば、乳がんは初期のステージ1なら「5年生存率」が99.9%と言われています。リンパ節への転移などが認められるステージ2でも95.2%と高い生存率があります。

小林麻央さんのケースで言えば、がん発見直後に (本来の) 治療に取りかかっていれば「5年生存率」は90%以上だったとも言われています。ただ、残念ながら、麻央さんが「標準治療」に訪れたのは発見から1年4カ月後でした。この頃にはもう、手の施しようがなくなっていたといいます。

 

 

たらればを言っても仕方ないことなのですが、

  • 海老蔵さんのスピリチュアル信仰がなければ
  • 海老蔵さんが謎の占い師に傾倒していなければ
  • 海老蔵さんが麻央さんに怪しげな治療を勧めていなければ
  • もう一人、子供を望んでいなければ

 

麻央さんは適切な治療を早期に受けることができ、助かったのかもしれません。

 

 

麻央さんは生前、「私はふたり姉妹で育ってきたので、麗禾に妹ができたらいいなとか、勸玄にも分かり合える弟ができたらいいな」などとブログに綴っていました。男兄弟のいない海老蔵さんも勸玄くんに弟ができることを夢見ていたそうです。

そうした思いから、抗がん剤治療を拒否したかった思いが強かったのかもしれません。なぜなら、抗がん剤治療には若くして閉経したり生殖機能が低下したりといった副作用があるからです。

 

海老蔵さんは麻央さんのために1億円を超えるほどの治療費を費やしていたと言われています。これからすると、麻央さんへの思いは紛れもなく本物です。治療費捻出のために二人でブログ収入を獲得していた背景もよくわかります。

ただ、麻央さんの死後も麻央さん人気にあやかり彼女のブログを英訳して更新したりすることに関しては、どんなに美談を提供されても (実際には) 治療費をカバーするための行動としか受け取ることができません。

 

 

ともあれ、患者側には様々な思いや事情がありますし、藁 (わら) にもすがる思いのがん患者を食い物にするような連中がいるとすれば絶対に許されることではありません。

 

 

 

 

 

余命宣告をされた時、人の気持ちはどうなる?

 

多くの人は死を忌み、普段はなるべく考えないようにして生きています。しかし、「死」は確実に誰にでも訪れます。その死が目前に迫ったとき、私たちはどんな行動をとるのでしょうか?

アメリカの精神科医師であるキューブラー・ロスは著書『死ぬ瞬間』の中で、余命を知った多くの患者たちが次のような5つの心理的プロセスをたどったことを伝えています。

 

 

1. 否認と隔離

死が近いと知ると非常に大きなショックを受け、「そんなことありえない!」「何かの間違いに決まっている!」と否認。また、孤立してコミュニケーションを避けるようになるといいます。

 

2. 怒り

「どうして私がこんな目に遭わなければならないの?」「なぜあの人は元気なのに私だけが!!」というように怒りの感情が噴出。そして、見るもの聞くもの、あらゆるものに対して怒りを感じ、その感情を周囲にもぶつけます。

 

3. 取引

例えば神にすがったり、何かの良い行いをすることで奇跡を得ようとします。延命や回復の奇跡を期待するのです。「もう一度だけ○○ができれば、運命を受け入れます」などと期限を条件に願いをかけることもあります。

 

4. 抑うつ

死を避けることができないと知り、さらに病気の症状が悪化して衰弱してくると、絶望的になって非常に強く落ち込む人も少なくありません。命とともに、築いてきたもの全てを失う喪失感が襲い、悲しみの底に沈むのです。

 

5. 受容

体は衰弱し、感情はほとんどなくなります。誰かと話したいという気持ちもなくなり、自らの死の運命をそっと静かに受け入れ、最期のときを穏やかに過ごそうとします。

 


 

このように、迫りくる死の運命を知ると「衝撃」「怒り」「期待」「絶望」といった感情が噴き出すのですが、最期のときにはそうした一切の激しい感情から解き放たれ、静かに自分の運命を受け入れる、とロスは説いています。

 

 

 

 

 

障害の事実を知ったとき、人の気持ちはどうなる?

 

近年、こうした心理的プロセスは「障害」や「重病」の事実を知ったときにも現れると考えられるようになりました。

自分自身や家族、パートナーなどが、病気や事故の後遺症によって、または生まれつき「障害」があると知ったとき、その事実を受け入れるまでには、以下のような5つの心理的プロセスをたどると考えられています。

 

 

1. ショック期

事実を知ってショックを受け、なすすべもなく呆然とする。

 

2. 否認期

「そんなわけない!」などと強く否定し、認めたくないという気持ちになる。

 

3. 混乱期

否認できない事実と受け止め、怒りや悲しみで心が満たされ、強く落ち込む。

 

4. 解決への努力期

感情的になっても何も変わらないと知り、前向きな解決に向かって努力しようとする。

 

5. 受容期

価値観が変わり、障害を持って生きる自分自身を前向きに捉えるようになる。

 

 


 

このように、事実を知った後はしばらくの間複雑な感情が激しく噴出します。しかし、その感情を十分に経験した後に、冷静になって現状を受け入れるように変遷していくのです。

もちろん、すべての人が同じような心理的プロセスを経験するわけではありません。しかし、多くの当事者にこうした心境の変遷が現れると考えられています。

 

 

 

 

 

支える側の複雑な心情はどうしたらいいの?

 

では、「大切な人」がこうした事実に遭遇したとき、支える側の人はどう接したらいいのでしょうか?

 

実際のところ、支える側の人も当事者と同じように動揺し、(特に初期には) 同じような心理的プロセスをたどっていくことが多いと思われます。

しかし、支える側には「当事者の感情を受け止める」という重要な役割があります。そのためには気持ちを切り替えることが大切ですが、その難行を1人で行うのは非常に困難です。

 

そこでまず、支える側の人に (自分自身の) 複雑な心情を受け止めてもらうため、病院や専門機関のソーシャルワーカーなどに不安な気持ち、やりきれない思いをすべて打ち明けてもらいましょう。

冷静さは、感情を吐露し、その感情をまるごと受け止めてもらうことで取り戻すことができます。

 


 

「余命」や「障害」などの事実を知ったとき、当事者が支えを期待するのは多くの場合、当事者がいちばん愛し信頼している人でしょう。

その相手をしっかりと支えられるように、(当事者と同じように湧いてくる) 複雑な感情を、まずは専門家にしっかり受け止めてもらうことから始めていきましょう。

 

 

 

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