生涯無職のひきこもり40歳が抱く「老後」の年金不安と「納付猶予」「全額免除」制度について

 

全国には驚くほどに多くのひきこもり成人たちがいらっしゃいます。そして彼らの末路は…両親亡き後は主に公的年金 (国民年金) と頼るということになるのです。

・母・・・65歳 (パート) 
・長男・・・40歳 (無職でひきこもり)
・父・・・1年前に死亡

 

現在は遺族年金と母のパート収入で生計を立てている2人ですが、母は息子の将来がとても不安です。

 

 

年金の納付猶予を受け続けている長男

そんな長男は二十歳の頃からずっと納付猶予の手続きをしています。この場合、長男は老齢基礎年金 (国民年金) を全くもらえないということになります。納付猶予の手続きをして認められた場合、国民年金の保険料を支払う必要はありません (毎月の支払いは0円) 。未納扱いにならないので催告状が届いたり財産を差し押さえられたりすることはありませんが、将来もらえる老齢基礎年金は0円なのです。

 

 

老齢基礎年金を増やすには

このまま納付猶予を続けている限り、長男は老齢基礎年金を一銭たりとももらうことはできません。そこでやるべきことといえば「追納制度を利用して追納する」か「働いて年金分も稼ぐ」かのいずれかになります。ここでは前者について考えてみましょう。「追納」とは、納付の猶予・免除をしていた期間のうち10年前までであればさかのぼって保険料を支払うことで老齢基礎年金がもらえる制度のことをいいます (10年以上前の分は時効により追納できません)。

では、どのくらいの金額を払って (年金を) いくらほどもらえるようになるのでしょうか?1ヶ月あたりの追納保険料およそ15,000円として、可能な限りにおいて3年、5年、10年の追納をしたとしましょう。まとめて払うので、結構な高額になりますね。にも関わらず、年金はそんなに増えないんです。考えようによっては払い損になりそうな気もします。だって、支払った保険料を年金で回収しようとすると約10年間もかかるからです。

65〜75歳の10年間に受給してようやくトントンになるといえます。男性の平均寿命は82歳くらいですから、必ずしも払い損になるとは言い切れませんが、「何歳まで生きる予定か」「家計の状況は?」などをよく考えて追納するかどうかを決断してみてください。

 

 

追納以外にも方法がある

もし仮に、この長男が「納付猶予」ではなく「全額免除」の条件を満たして「全額免除」の手続きを行っているのであれば、老齢基礎年金は通常納付した場合の半分をもらうことができます。つまり、納付猶予よりも全額免除の方が断然有利ということです。もちろん、全額免除に該当するかどうかは家族の所得審査により必ずしも認められるわけではありませんが、父親が亡くなった後の家計の状況から全額免除に該当する可能性も高いと言えるでしょう。

「納付猶予」から「全額免除」に切り替えることで、長男の老齢基礎年金は増えていくのです。仮に追納しなかった場合でも、毎月約3万円はもらえそうです。

 

 

おわりに

「年金制度が複雑すぎる」と思い悩んでいる方は少なくないはずです。しかしながら「よくわからない」とほったらかしにしておいても何もよいことはありません。「お子さんにとって最もよい選択肢は何なのか」。よーく考えてみましょう。

「追納」や「全額免除」に関する相談は年金事務所や役所などで受けられますので、疑問に思うことがあれば遠慮なく相談してみましょう。全額免除の手続きにも時効がありますので、早めに行動することが大事ですよ。