眠れずに死んでしまう病気「致死性家族性不眠症」と、一般的な「不眠症」の特徴・原因・リスク
致死性家族性不眠症 (Fatal Familial Insomnia) とは、有効な治療法が未だ確率されていない難病の一種で、突然変異で遺伝するため、家系的に発症することがあります。
ただし、非常に珍しい病気なので、世界中でわずか数十家系、日本では数家系でしか報告されていません。
そんな「致死性家族性不眠症」を発病してしまうと、多くの場合、1〜2年で亡くなってしまうようです。「少しぐらい眠らなくても死にはしない」という言葉がありますが、この病気に罹ってしまうと、連日連夜不眠が続いて最後には死んでしまうのです。
「致死性家族性不眠症」の症状
はじめに気づく症状は、「昼寝ができない」「夜に眠れない」「熟睡感がない」といった不眠症状です。また、やる気がなくなったり(無気力感) 、これまで楽しめていたものに興味がなくなるといった、性格の変化も見られます。
そのほか、(交感神経系の活動が高まりすぎるため) ものが二重に見える・眼が疲れる・夜間の発熱・高血圧・汗や涙が増える・呼吸が荒くなる、といった症状が現れることもあります。
「致死性家族性不眠症」が進行するとひどい睡眠不足になるため、日中もウトウトするようになり、幻覚が見えたり記憶力が低下したりします。「夢幻様混迷」という状態に陥るのです。
夢幻様混迷とは、日中に突然眠って夢を見て、その夢に関連して体を動かしてしまうことです。これは、目を開けていても現れることがあります。夢幻様混迷は初めのうちは数秒間だけですが、病気が進行するに従って回数が増え時間も長くなっていきます。
そのうち、筋肉が痙攣したり (ミオクローヌス)、関節が固くなったり、バランス感覚が悪くなったり、おしっこが出にくくなったりします。やがて「認知症」のようにもなり、
物が飲み込めなくなったり言葉が出にくくなったりする頃には、コミュニケーションが難しくなっています。最終的には、やせ衰えて寝たきりとなり、死んでいくのです。
「不眠症」とは
上述した「致死性家族性不眠症」は非常に怖い難病なのですが、一般的に言うところの「不眠症」は日本国民の約2割 (成人の5人に1人) が悩みを抱えているほどにメジャーな障害です。
その「不眠症」の定義は、
「寝つけない」「夜中に目が覚めてしまう」などの睡眠トラブルを感じることがしばしばあり(週2回以上)、少なくともそれが1ヶ月以上続き、結果として苦痛を感じたり、あるいは日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下などが現れたりして、日常生活に支障をきたしてしまう状態…です。
「不眠症」の原因は?
不眠症の原因には様々なものがありますが、例えば以下のような原因が挙げられます。
- (不規則な生活からの) 体内時計の乱れ
- ストレス
- 心や体の病気
- ホルモンバランスの乱れ
- (腸内環境の悪化による) セロトニンの減少
- (カフェインやアルコールなどの) 刺激物
- 薬の副作用
「不眠症」がもたらすリスク
不眠でぐっすり眠れないと、日中に眠気が生じ、集中力や記憶力、作業能力が低下しがちです。すると、仕事や学業に身が入らなくなってしまったり、大きな事故を起こしたりします。
また、不眠が続くとホルモン分泌や自律神経の働きが乱れるため、食欲が増し肥満になりやすくなったり、血糖値や血圧が上昇して「糖尿病」や「高血圧」を発症するリスクが高くなったりします。
さらには、「心筋梗塞」や「脳梗塞」など、生命に関わる病気を引き起こす危険性も高くなります。
また、「うつ病」の人は不眠症になりやすい傾向がありますが、逆に不眠が続くことによって気分が沈み込み、うつ病へと進展するケースもあります。
まとめ
イタリア・ヴェネチアに住むシルヴァーノという男性は、1980年代に53歳で「致死性家族性不眠症」という不治の病に屈しました。彼の父親と2人の姉妹も同じ病で亡くなっているのです。
そこで、彼は自らの遺志で、この病の原因究明のために自分の脳を提供することにしたのです。この話は、『眠れない一族 ― 食人の痕跡と殺人タンパクの謎』という本にまとめられています。
結果的にはシルヴァーノやその家族の命を救うことはできませんでしたが、おかげでこの病の原因の一つがわかったのです。
それは、遺伝子異常によってタンパク質の「プリオン」という物質が変形し、脳内に蓄積してしまうことが元凶だということ・・・
FFIの遺伝子を持っていたアメリカ人の別の患者は、ただ死を待つのではなく、ありとあらゆる治療法を試しました。いつの間にか眠りに落ちて、ついにしっかりと4時間半の至福の睡眠をとることができたのです♡
ただ、その後彼は目覚めた時に自分が生きているのか死んでいるのかよくわからなくなり、数年間苦しんだ末、ついに命を落としたのです。
みなさんには、
世の中にはこんなにも大変な病気があるんだということを心して、日々の睡眠に感謝しながら快眠をとっていただきたいものです。