麻木久仁子さんの闘病生活に学ぶ健康への意識の在り方

 

タレントの麻木久仁子さん (1962年生まれ) は、仕事が順調だった40代の終わりに「脳梗塞」と「乳がん」に見舞われました。

「運動は嫌いですが、栄養のことを考えてほぼ自炊していましたし、人間ドックの検査項目は毎回Aが並ぶほどだったんです。健康には自信あったのになぁ。」

 

2010年12月、仕事に出かけるため玄関の鍵をかけようとしていた時のことでした。急に身体が震え、動かそうとしても動かなくなってしまったのです。しばらくするとすぐにおさまりましたが、医療番組に度々出演していたことから、「もしかして脳に異常があるのかも…」と思った麻木さん。

すぐに神経内科で受診を受けますが、検査結果を待っている間にも度々「右手が動かなくなる」「発作が起こる」といった症状に見舞われます。

 

「救急車を呼ぶほどではないけれど、これを繰り返していたらある日フッと逝ってしまうのかなと怖くて不安でした。」

 

 

脳梗塞の原因はストレスだった?

右手 & 右足が動かなくなるという発作を度々繰り返し、精密検査を受けた麻木さん。結果は中脳に小さな脳梗塞があるという診断でした。

原因となる病気や障害は見つからず、主治医からは「まれではありますが、ストレスが原因の可能性もあります」と説明されたそうです。

 

 

思い当たる節はありました。発作と前後して前夫とのトラブル騒動があり、連日マスコミに追われ、仕事を自粛せざるを得ない状態にあったからです。

発作の症状を抑える薬を飲んでいたようですが、完全に発作を抑えるわけではなく軽減させるだけ。当時、記者会見の際には右手を左手で押さえ込むようにして震えを気づかれないようにしていたそうです。

 

 

 

乳がん発覚

精神的に落ち着いたのはそれから2か月ほどたった頃のことです。しかしながら、脳梗塞は1度起こすと再発しやすくなる。。。というわけで麻木さんは再発を抑える薬を飲みながら、できるだけ前向きに日々を過ごしていく決意をしたのです。

その後の人間ドックの結果は良好。ホッと安心していた頃に、次の新たな病魔が待ちかまえていたのです。

 

2012年夏、人間ドックの中でマンモグラフィーとエコー検査を受けたところ、白いぼんやりした影が左右両胸に映っていたのです (乳がん発見)。しこりは右が0.7cm、左が0.9cm。早期のものでした。

しかしながら、患部は乳首に近い所にあり、右は切除した端にがんが残っていたため再手術が必要だったのです。

 

主治医からは、「できるだけ温存しますが、安全のためにもっと取るべきだと判断した時は乳首・乳輪を切除するかもしれません。」と言われ、麻木さん自身も「バッサリ切ってください。命の方が大事ですから。」と覚悟を決めました。

それでも、再手術までの間は不安で仕方ありませんでした。

 

 

 

主治医を信じて

右胸の再手術で、乳首や乳輪を切除することになるかもしれない。覚悟はしたつもりでしたが、やはり「乳首と乳輪を失うんだ」というイメージが心に迫ってきました。

「私が私であるために、乳首なんて関係ない。」と自分に言い聞かせていたのですが、やっぱり失ったらえもいわれぬ寂しさを感じるだろうと辛かったのです。胸を押さえて失った時のことを想像したり、乳首や乳房再建のことをインターネットで調べてみたり。

 

 

それでも、「なるようにしかならない」と考えるようになった麻木さん。手術前夜、主治医が「医師が丁寧な説明をし、患者が選択するのは当然のこと。でも実際、医師が圧倒的に多くの情報を持っているんです。」と語ったのはとっても印象的なことでした。

この時麻木さんは、「先生はプロとして私以上に決断してくれているんだ。」と思うことができたのです。

 

 

 

支えは一人娘!

幸か不幸か、麻木さんのがんはホルモン療法が効くタイプのものでした。手術後約1か月間は放射線治療を行い、その後、がんを増殖させる女性ホルモンの働きを抑えるホルモン療法を始めたのです。

その副作用で、更年期障害のような症状は出てしまいますが、比較的少なく、仕事をしながら治療を続けることができました。

 

麻木さんにとって大病が重なったこの3年、支えは18歳の一人娘でした。脳梗塞と騒動で家に引きこもった時は、「ママ、犬の散歩に行こう」と近くの河原を一緒に歩いてくれました。

乳がんがわかった時、娘は涙ぐみながら、「ママの病気がママとお医者さんで頑張るしかないなら、私は勉強を頑張って心配かけないようにする!」と猛勉強。第1志望の大学に見事合格し、ほっとさせてくれたのです。

 

 

 

50歳になって

病気知らずで仕事に邁進していた麻木さん。アラフィフ (50歳前後) になって、「脳梗塞」「乳がん」と立て続けに患ってしまいました。

これらの闘病生活を経て、彼女は悟りのような気持ちを抱くようになりました。「しゃかりきになるより、一日一日いろんなことを丁寧に拾って楽しむことが大事だな。」と。

 

 

幸い、軽く済んでよかったわけですが、麻木さんの体に表れた「繰り返される痺れの発作」は「脳虚血発作」というもので、大したことはないと軽く考えて受診しない方もいるそうです。

実はこれが 曲者で、5%くらいは本当の脳梗塞になる可能性もあるようです。その場合、現在では良い薬があって、発症してから4〜5時間以内に投薬すれば助かる可能性が高まるそうですが、手遅れにならないためには甘く見ないほうがいいでしょう。

 

「私の場合、仕事の予定などもあって、4〜5時間どころか4~5日後の受診ですから、大事に至らなかったのは運が良かったのでしょう。」

「体の片側のみに違和感を覚えたら、まずは受診しましょう!」

 

 

 

おわりに

人は、なまじ健康に自信があったりすると、危険の兆候を見落としたり、軽く考えたりするものです。医療費高騰の折、軽い症状で受診することへの批判もありますが、こと脳卒中に関しては「軽いうちに手を打つべき」だと思うのです。

なにより、大事な命を救うため、さらにはリハビリ後の社会復帰まで考えれば、早め早めに手を打つべきなのです。

 

「なにかいつもと違う感じがする」…と思ったら、迷わずすぐに受診しましょう!そして、大切な家族や友人たちの異変にも気付き合えるといいですね。