精神疾患の原因と対策 ② イジメる子へのメンタルケアが大事
近年、度重なる「いじめを苦にした自殺」と「いじめに対する学校や教育委員会の対応への不信感」が大きな話題となっています。そもそも、なぜ、いじめはなくならないのでしょうか?
「いじめる子の気持ち」に無関心ではありませんか?
ここでは、いじめる側の心情を焦点に考えてみたいと思います。
★ イジメる子の気持ち
人をいじめてしまうのは、その子が今、何か大きな問題を抱えているからだと思われます。この「いじめる子」側の気持ちに目を注がなければ、どんなにイジメを厳罰化したり「なくす運動」を強化したとしても、イジメはなくならないでしょう。
いじめは自分の心を守るための「防衛」…
そこには、誰かをいじめることで「何か」から少しでも楽になりたいと願う心情が働いているのです。
人は、心の状態がとても不安定になると、その危機的な心理から逃れるために無意識に心の安定を保つメカニズムを働かせます。これを「防衛機制」といいます。防衛機制にはたくさんの種類があります。
たとえば、宿題の前についゲームにふけってしまうのは「逃避」という防衛機制です。下にきょうだいが生まれた途端に母親にベタベタ甘えるのは「退行」という防衛機制です。失敗したことに都合のいい言い訳をするのは「合理化」という防衛機制です。
こうした防衛機制を働かせることで、いっときでもフラストレーションや葛藤、不安から楽になることができます。誰かを攻撃する「いじめ」にも、こうした防衛機制が関わっているのです。
では、いじめはどんな防衛機制に当たるのでしょうか?
★ イジメは無意識の防御機能
①「置き換え」
まず、「置き換え」という防衛機制が考えられます。これは、ある対象への感情を他のものに向けることです。つまり、いじめる子がいじめられる子に向けている怒りは、本当は別の人に向けたい怒りだということです。怒りをその人に向けられないから、たやすく攻撃できる相手に置き換え、八つ当たりをしているわけです。
② 「補償」
「補償」という防衛機制も考えられます。これは、劣等感を他の優越感で補おうとする防衛機制です。誰かをいじめれば優越感が得られます。本来はいじめではなく、他のことで優越感を得たいのに、それが無理だと感じているのでイジメによって優越感を補っているわけです。
こうした防衛機制は誰の心にも無意識に生じるものです。
そのため、「いじめ」とまではいえないような小さな八つ当たりや自慢、ひやかしなどが、小さな子どもの間ではよく起こっているのです。
しかし、、、相手を深く傷つけ、自殺に追い込むほどに行動がエスカレートしてしまうのは、いじめる側に相当強い怒りやわだかまりがあると同時に、その気持ちが見過ごされ、真剣な関わりが得られていないこと、また、同じような鬱屈を抱えた仲間が集まり、集団極性化していく過程が見過ごされているという環境の問題が大きいのではないかと思います。
★ いじめる子の本当の気持ち
誰かをいじめる場合、その気持ちの根底には「自分を受け止め認めてほしい人に受け止められていない」「認められない悲しみや不安が渦巻いている」ことが多いのです。未成年の場合、その多くが親に対する思いだと思います。
「いつも頭ごなしに怒ってばかり!」「もっと気持ちを真剣に聞いて!」と言いたいのに、その気持ちをぶつけても真剣に取り合ってもらえない。言っても「文句言う暇があったら勉強しなさい!」と頭ごなしに非難されるだけ・・・。
こうした諦めの気持ちが生じると、親にぶつけられない怒りを弱い子に向け「憂さを晴らして楽になりたい」と思うこともあるのです。
子どもには、成績だけでなく「もっと自分の本質を理解しその良さを分かってほしい」という気持ちがあるのです。
子どもの話をじっくり聞いてあげましょう!
いじめは、本当の気持ちを受け止めてもらえない悔しさや、表面的な評価を求められるプレッシャー、こうした気持ちを抱えて追いつめられた人が、自分を防衛するための無意識にしてしまう行為なのだと思います。
したがって、いくらいじめる人を断罪し「いじめをなくそう」と啓発してもイジメはなくならないでしょう。
さらに、一度「いじめっ子」とレッテルを貼られてしまうと、親でさえその子を特別な目で見てしまうものです。その子が何を言っても、「いじめっ子」という先入観からまともに話が聞けなくなり、何を言ってもわがままや甘え、言い訳に聞こえ、つい説教したくなってしまうのではないでしょうか。
そこで、なにより大切なのは、じっくり相手の気持ちになって話を聞くことなのです。
★ より深い支援に導くために
誰か一人でも気持ちを受け止めてくれる人がいれば救われます!
人は、自分の素直な気持ちを信頼する誰かに理解され、受け止めてもらうことで、心の奥にあるわだかまりを浄化することができます。この浄化の体験によって、人は自分の考え方や行動を振り返り、もう一度人生を建設的な方向に築いていこうという気持ちになれます。
本来であれば、親がその役割に気づき、子どものありのままの気持ちを受け止められればいいのですが、残念ながら、理想的な関わりを全ての親に期待できるわけではありません。
なので、誰か一人でいいので、その子が信頼する周りの大人が気持ちを受け止めてあげることが大切になります。教師、きょうだい、祖父母、おじおば、部活のコーチ、塾の先生など、誰でもいいのです。
しかしながら、
話を受け止める側がいじめる子の気持ちを全て一人で抱え込むのは困難かもしれません。そんなときは、スクールカウンセラーやソーシャルワーカーなど学校の心理相談窓口を利用したり、地域の相談窓口などを利用して、アドバイスを受けるといいと思います。
もちろん、相談機関には守秘義務がありますので秘密は固く守られます。周りの人がカウンセラーやソーシャルワーカーなどの専門家と繋がることで、より深い相談支援へと導くこともできるのです。
★ まとめ
繰り返しになりますが、「いじめられる子を救うだけ」「いじめる子を批判するだけ」「いじめをなくそうと叫ぶだけ」ではイジメはなくなりません!
周りの人が、つい人をいじめてしまう子の気持ちに早く気づき、その子の心の奥にある思いを受け止め、真摯に向き合ってあげることが大切なのだと思うのです。