病気が疑われる「独り言」の原因を知ろう
会話相手のいない状況下で何らかの言葉を発することを独り言といいます。周囲にいる人にとって、とぼけたユーモラスなつぶやきの独り言であればまだしも、延々と続く愚痴めいた独り言であれば苦痛以外のなにものでもありません。
さらに、自宅ならまだしも、学校や職場といった社会的場面では、周囲に少なからぬ悪影響を与えてしまいます。「邪魔」「イライラする」「集中できない」「うっとうしい」…
学校であれば、「あいつ何か変…」と奇異さを感じ、イジメにつながってしまうかもしれません。
職場であれば、フロア全体の士気や生産性の低下を招くことになるかもしれません。実際、この種の独り言に対する嘆きは多く、「集中力をそがれる」ことに対し、多くの人が困っているのです。
とはいえ、独り言は悪いことばかりではありません。
独り言は迷惑行為である一方、その発声が “発し手の意思決定や行動の遂行に好ましい働きをする” 場合があるようです。
どこまでを独り言とするかは悩ましいところですが、巷では、以下を独り言の好ましい点として考えています。
◆ 独り言を口にすることで得られる効果
・ストレス発散
・精神的安定
・安心を得る
・集中力や自己肯定感が増す
・アイデアや思考の整理
・意思決定・行動が 円滑に行える
・言いにくい事を婉曲的に周囲の人に伝える事が出来る
みなさんはどうお感じになりますか?
以上述べてきたように、独り言は「功と罪」を併せ持っています。本人にとっては功、周囲の人たちにとっては罪となるでしょう。
つぶやかれる場面やその内容いかんによっては、非常に迷惑かつ心配な( 病的要素のある)独り言とも言えます。
判別しにくいかもしれませんね。そのような場合は、以下の点を参考にすると良いでしょう。
◆ 独り言の内容
・現実場面に沿っているか
・極端に攻撃的あるいは悲観的でないか
・支離滅裂ではないか
・周囲に対し極端に疑り深くなっていないか
・自分が攻撃されているといった意味の発言はないか
・幻聴が聞こえているかのような内容ではないか
◆ 発する回数・頻度
・同じ言葉を延々と何十分も繰り返してはいないか
・回数が極端に増えていないか
◆ 発し手の表情・言動
・無表情、うすら笑い
・そわそわしている
・極端に怒りっぽい
・身だしなみが悪くなった
以上の項目を参考にして、「本人の様子が普段と違う」「何か変だ」と感じたら、精神疾患の可能性も視野に、注意深い見守りが必要になってきます。
例えば、
・激務で疲労がピークに達している
・介護負担を背負っている
などの強いストレスにさらされている時は、健康な人であっても通常とは異なる精神状態におかれています。この場合の独り言はSOSのサイン…かもしれません。
強いストレス状態が長いこと続くと、睡眠障害やうつ病など、他の疾患への移行が懸念されます。注意力が低下し、物事の捉え方が悲観的に歪み、抑うつ的になる高いリスクを秘めたこの時期は、独り言の有無に関わらず、周囲ができる限りのサポートを行っていく必要があります。
独り言は、精神科領域では独語(どくご)と呼ばれ、統合失調症やうつ病の症状と捉えられています。これらの精神疾患はそれぞれに発症のメカニズムが異なるうえ、急性期には多彩な症状で現れるため、独り言に限らずその人物全体から醸し出される、通常とは異なる様子に気づく人も多いようです。
うつ病では、表情変化に乏しくなり、無気力で自責的、食欲不振に陥る人がいる一方で、本当は疲れているのに休むことができず過活動傾向になる人もいます。
「どうも様子がおかしいな」と感じたら、
”最近、夜は眠れているか”
”週末は休めているか”
といった体調を気遣う質問を投げかけてみてください。
(過眠傾向になる場合もありますが、一般的には、精神疾患では不眠を訴える人が多いようです)
統合失調症では、(周囲から悪口を言われている)、(自分の思考を周りから見透かされている)、と感じる症状によって、独り言が発せられる場合があります。
緊張、興奮、焦り、怒りっぽさ、妄想を思わせるような発言が見られたら、早急に医療スタッフと連携を組み、安心して専門施設を受診できる環境を整える事が必要です。
このほか、認知機能障害 (認知症など) や一部の発達障害でも独り言が見られる場合があります。知的障害の一つの症状でもあります。
はたから見て「心配だな」と思う独り言は、発し手の体調、気分、睡眠状態、最近の言動などを総合的に考慮したうえで見極めていくことが重要です。
・独り言は発する場面や程度によって、周囲に「迷惑」ととられたり「奇異」に映ったりすることがあります
・独り言によって集中力や自己肯定感が増す、意思決定のプロセスが円滑になるなど、その効用を実感する人もいます