大人の発達障害の支援と就労に必要なスキルについて
大人の発達障害における一番の課題は、就職・仕事です。
どのような仕事が向いているかは人それぞれですが、なるべく得意な能力を活かし、かつ苦手なことが目立たないような仕事に就けるよう支援していく必要があります。
仕事に不向きな例としては、
例えば、ADHDの人であれば精密機械の工場で勤務することは難しいかもしれません(うっかりミスが多い)。自閉症スペクトラムの人であれば営業は厳しい、のではないでしょうか。
障害者の就労支援に携わった私自身の経験の一つにこんなことがありました。
自閉症スペクトラムのAさん (20代男性) は電機メーカーのオペレーターに就職。その後わずか5年でチーフに取り立てられるという異例の出世を果たしたのです。
仕事自体が得意領域であったことに加え、彼は思ったことをズバズバ言う性格でした。それが積極的な発言と評価され、好意的に受け止めてもらえたことがプラスになったのです。
長い人類の歴史において、近年ようやく発達障害に対する理解が広まりつつありますが、まだまだ世間の目には厳しいものがあります。
そこで皆さんにお願いです。
大人の発達障害の人たちには
・特性を配慮した就労支援
・発達障害と併存障害への精神科的なサポート
が必要です。
是非、積極的に彼らを支援してあげてください!
そうすることで彼らはすごくハッピーになれますし、社会全体がそう動いていくことで、様々な問題が解決へと向かっていくことでしょう。
この記事では、こうした就労支援について語っていきたいと思います。
きちんと職場で理解が得られており、十分な力を発揮できている場合には、就労支援は必要ありません。しかし現実にはそうでない場合も多いのです。
例えば職場でトラブルが続いている場合、「発達障害者支援センター」などの相談支援機関を利用していくことも検討されるべきなんです。
その後は、以下のような就労支援機関を利用して、より適切な仕事に就けるよう、丁寧な指導と就労支援を受けるべきでしょう。
※ これらの機関は障害者手帳を持っていなくても利用することが可能です。
・ハローワーク
職業相談、紹介、就労の準備、職場定着までを支援
・障害者職業センター
職業能力評価、職業準備、職場に適応するための定着支援など
・障害者就業・生活支援センター
福祉・教育との連携とそれを通した生活面における支援、就業現場での支援専門家(ジョブコーチ)による就業場所内での訓練、職場とのコーディネートや職場環境を整備するための支援
ただし、長年「障害者就労支援」の仕事に携わってきた私の個人的な感想を申し上げますと、これらの機関の多くはまだまだ体制が十分に整っているとは言い難く…
お役所仕事、流れ作業の印象も拭いきれません。
障害は身体・精神・発達・知的など多岐にわたりますが、それぞれの特性に沿って専門的かつ献身的に支援活動を行っている民間の市民団体や企業、NPO団体などもありますので、
お住いの近くにそのような組織があれば、是非利用してみてください。
「トライアル雇用 (障害者試用雇用事業) 制度」というものがあります。これは、支援を受ける側にとっては貴重な就労体験になります。
企業側にとっては受け入れの準備期間になりますし、奨励金の支給があるのもポイントです。加えて、雇用する際には助成金も用意されており、企業側にもメリットを提供しています。
さらに、障害者雇用促進法においては障害者枠というものが設けられています。これは、障害者手帳の所持者が対象となっていますが、この枠を利用して就業を目指していくことも一つの選択肢となるでしょう。
ここまでは、現在利用可能な、様々な支援制度の概要をみてきました。
しかしながらこれだけでは不十分!
個人差がありますので一概には言えませんが、二次的な問題や併存障害がある場合には、カウンセリングや薬物療法を用いることも検討しましょう。
就労支援におけるポイントは一気に就業を目指しすぎないこと。無理をさせてしまうと挫折に繋がりかねません。
基本的な考え方としては、在宅→集団参加→職業訓練→就業の4段階を、ひとつひとつステップアップしながら就業を目指していくことです。
発達障害の方が社会人として生活していくために必要なスキルは、大きく分けて2つあります。そのうちの一つは「自律スキル」です。
「自分でやれること、やれないことを判断する力」
「自分のことをある程度わかっている」ということが重要なのです。
もちろん、苦手なことも含め、すべての面で客観的に自分をわかるというのは非常に難しいことですが、どこまでやれるのかを判断し、「これ以上はやれない」…という線引きをする能力が大切なのです。
発達障害の方が社会人として生活していくために必要なスキルのもう一つは「ソーシャル・スキル」です。
これは一言で言うならば「相談する力」
他者から指摘や助言を受けたとき、その言葉に素直に耳を傾けることができるかどうかも重要です。ただし、必ずしも協調性という段階までいかなくても大丈夫!
大事なのは、「抱え込みすぎずにきちんと相談していくことができる」能力を備えているかどうかということなのです。
発達障害の方に対しては、自律スキルとソーシャル・スキルがどのレベルにあるのかを判断してあげるところから始めましょう。
これが、「支援」と「就労」の基本であり最も大切なことなのです。
いくらIQや能力が高くても、この2つのスキルが欠けていると、できないことでも「やれます!」と請け負ってしまい、あとで大変なことになるケースがあります。
ただし
今の日本社会ではこれら2つのスキルは十分には教えられていません。相談するとかえって叱られたりもします。
この点、義務教育の段階から根本的に改善させていく必要がありそうですね。
それでも、悪いのは社会の方であり、私たちにはこの2つのスキルを子どもの頃からきちんと身につける必要があります。
発達障害の方に対しても、子どもの頃から支援を続けていると、多くの場合はこれらのスキルを得ることができます。
さあ!
皆が生き生きと働いていける社会を目指して!
みんなで協力しながら頑張ってまいりましょう!