発達障害児の正しい教育法

 

文部科学省の調査で、発達障害の子どもが全体の6.5%ほどいることがわかっています。これは言い換えると、クラスに一人くらいは普通に発達障害の可能性のある子がいるということです。そんな中、彼らを支援する法律が着実に整備されてきており、授業のあり方も変化してきています。

明らかな障害がある子どもだけでなく、障害の可能性のあるグレーゾーンの子どもたちへの配慮も含めて多様性が求められるようになってきたのです。子どもに寄り添い、個別に合わせた指導や授業を行う必要性は確実に高まりそうです。

 

教師が抱えている課題

発達障害の可能性がある子どもも含めた「支援」が進むのは良いことですが、その前提となる「診断」を受けることを保護者にどう説明するかに頭を悩ませる先生も少なくありません。早く診断を受けて、状況に応じた配慮・措置・支援を受けた方がその子にとってプラスになるはずなのですが、家族はなかなか納得しないのです。

とはいえ、やはり本人のため、可能な限り個別の対応を行なっていくことが大事になってきます。家族も先生も、コミュニケーションが苦手な子に対しては、小さい時はできるだけ叱らずに褒めてあげてください。叱られると、誰かに相談する意欲が下がってしまいます。なるべく気軽に相談し、協力してもらいやすい環境を作ることが大切です。

 

 

二次障害の危険性

上述しているような育て方を行っていれば問題ないのですが、やり方を間違えると「うつ」などの二次障害を招きかねません。たとえば、苦手克服のために訓練を過剰に行う育て方や本人の意志に任せ過ぎる育て方は良くありません。そんな誤った育て方をしてしまうと、成長してから「不安」や「うつ」などの二次障害が起きやすくなります。

コミュニケーションが苦手な子どもや集中しにくい子どもに対して、「××してはダメ」「○○をやりなさい」と指示だけしても、本人はポカーンとなってしまうだけです。子どもの特性に応じて、「大事なことは書面で見せる」「気が散りにくい静かな場所で伝える」など、工夫が必要になります。

 

 

苦手克服の強要はダメ

発達障害の特性を持つ人は、たいてい何か苦手なことがあるものです。ところが、それを無理やり克服させようと、過剰な課題を与え続ける親御さんのなんと多いことか。たとえば、字が上手に書けない子に無理やり書き方を教えてもなかなか身につきません。にも関わらず、他の子の何倍も漢字ドリルを練習させる親御さんがいます。この場合、その子はどんどん自信を失っていきます。

このようなことが続くと、子どもは自信を失い、常に周りからプレッシャーをかけられる生活を送ることになります。大人になっても、ストレスを避け、無気力、無関心になります。やがて、「自分はどうせろくな就職ができない」「ニートになるしかない」と諦めてしまうようになるのです。

 

 

本人の意志に任せ過ぎる育て方もダメ

高学歴の人であっても、「あの人は一流大学を出ているくせに仕事が全くできない」などと言われることがしばしばあります。実際、発達障害の子の中には成績がとても良い子がいます。成績がいいと、親としてはもっと勉強させていい学校に行かせたい、と思うのが人情です。そこで、「勉強さえすれば他の苦手なことは何もしなくていい」と、本人の意志に任せ過ぎてしまうわけです。

こういった育てられ方をしてしまうと、大人になっても好きなこと以外はやらなくなってしまいます。結局、「いい学校を出ている割に仕事のできない人」というレッテルを貼られ、会社で行き詰まってしまうことがあるわけです。

 

 

まとめ

発達障害の子どもの支援を考える上で、「育て方」はとても重要です。本人に対する教育が大切なだけでなく、適切な環境をつくっていくために、周りの人たちの理解も不可欠なのです。皆さんは、「みにくいアヒルの子」という有名な童話をご存知でしょうか。たくさんのアヒルのひながいる中で、1羽だけほかのアヒルたちと姿の違うひなが生まれたというお話です。

「なんて変なアヒルの子だろう」と周りから白い目で見られていたのですが、やがてそのひなは美しい白鳥になったのです。この童話から私たちが学ばなければならないことは、違う鳥のひなには違う鳥の育て方があるということです。つまり、発達障害の特性のある子どもには、その特性に合った育て方があるはずなのです。大人たちが、「普通」の育て方ではダメだということに気づくべきなのです。

本人がこだわってどうしても変えられない点は尊重しつつも、伸びることや好きなことはしっかり保障する。これを徹底できると、子どもは明るく育ち、親も自信を持って育てられます。そして、その両方を支えていくのが周りの支援なのです。まずは「理解できない」と思っている子どもの行動の背景を知ることから始めてみましょう。