中東の歴史を作った名スパイ「アラビアのロレンス」

 

スパイ (SPY) とは、敵の情報を得るために諜報活動をする人たちのこと。アメリカの元CIA諜報員リンジー・モランさん (女スパイ) は、映画「007」に憧れたことをきっかけに厳しい訓練に耐え、やがて正真正銘のスパイとなりました。

彼女いわく、「実際と映画は全く異なる」「人間不信になる」「親友や家族にも本当の職業を言えない」とのこと。精神的にも肉体的にも過酷なトレーニングを積んでようやく掴み取ったスパイという職業。

今回は、そんな仕事を選び、中東の歴史に大きな影響を与えたスパイたちの人生を振り返ってみたいと思います。
 

 

英雄「アラビアのロレンス」

1918年、ロレンス大佐はバッキンガム宮殿に呼び出され、国王から大英帝国の勲章であるナイト爵を授かろうとしていました。戦争での活躍が評価されたのです。ロレンスは子供の頃から騎士の物語に憧れ、「いつの日か自分もナイトになりたい」と夢見ていました。

しかし、彼はこの時この栄誉を辞退したのです。自身がもたらした勝利に自責の念を抱き、生涯そのことから逃れることができないでいたのです。

 

第一次世界大戦においてアラブの反乱軍を指揮し、敵国オスマン帝国を翻弄した英雄「アラビアのロレンス」。そんな彼は、実は「引っ込み思案」で「内向的」で「1人で居ることを好む」ような人物でした。

しかし、そんな彼がとった中東での行動の結果は、現代においても大きな影響を与え続けています。それゆえ、時に「英雄」と呼ばれ、時に「悪魔」と囁かれているのです。

 

トーマス・エドワード・ロレンス

 

本当の彼は、アラブ反乱軍を指揮しアラブ人に独立をもたらそうとした真の英雄だったのでしょうか。それとも、イギリスがアラブ人との約束を反故にすることを知りながらアラブ人を扇動し、最後にアラブ人を裏切ったペテン師だったのでしょうか。

謎多きロレンスという男、あなたはどう思いますか?

 

 

 

4人の若きスパイたち

第一次大戦中 (1914〜1918年)、中東情勢に大きな影響を与えた有名なスパイがロレンスを含め4人いました。他の3人は以下の通りです ↓

 

◉  ウイリアム・イェール

彼はアメリカの大富豪イェール家に生まれ育ちます (有名なイェール大学は彼の祖父が創設した大学です)。しかし、彼が大学生の時に起きた世界恐慌で一家は破産。イェールは石油会社に就職し、オイルマンとして中東に赴任します。

ちょうどその時、第一次世界大戦が始まり、同社所属のままアメリカの情報官として中東で情報収集をすることになるのです (のちにロレンスと協力してアラブの独立を助けようと奮闘)。

 


 

◉  クルト・プリューファー

彼はドイツの庶民階級で生まれ育ち、のちに学者となります。完璧なアラブ語を操り、その才能を見込まれた彼は在カイロ・ドイツ大使館で外交界デビュー。その後、エジプトで反英国ジハードを起こさせようと画策したことがバレ、外交官としてのキャリアを断たれてしまいます。

しかしその後、第一次世界大戦が始まると中東におけるドイツスパイの元締めとして暗躍することになるのです (後年、彼はナチ党に魅了されナチの外交官として活躍)。

 


 

◉  アーロン・アーロンソン

ルーマニア系ユダヤ人農学者の彼は最先端の技術を駆使し、「パレスチナを旧約聖書にあるような緑の楽園にする」ことを自らの使命と考えます。シオニズムに傾倒していた彼は大戦が始まるとユダヤ人スパイ組織NILIを結成。

パレスチナにユダヤ人居住地を築くため奔走。しかしこのことが、現在も続くパレスチナ問題の端緒となってしまったのです。

 

 

 

暗躍するロレンス

アラブ独立闘争を率いたロレンス (イギリス陸軍将校:1888〜1935年) の敵はオスマン帝国とドイツ帝国だけでありませんでした。彼はイギリス & フランス政府の帝国主義者たちとも戦っていたのです。

こうしたこともあってロレンスは、自国の秘密協定を第三者に漏らすことも辞さなかったのです。アラブが独立を勝ち得るために、反乱をシリアにも拡大しアラブ軍が血を流す必要があると考えたのです。

ロレンスは通信手段の不備を利用して、アラブ軍の利益になるよう状況を巧みに動かしていきます。

 

 

 

おわりに

ロレンスのみならず、こうしたスパイたちが水面下で激しく暗躍した結果、現代の中東情勢、強いては今の世界が築かれていったのです。もしも彼がいなかったら、あるいは別の行動をとっていたら、現代の社会情勢は大きく異なっていたことでしょう。

冒頭で紹介した元CIA諜報員のリンジー・モランさんは、のちにこう語っています。

 

「素晴らしい人々に出会い、貴重な経験ができたことに感謝しています。多くの元同僚たちからは、私もあなたのように辞める決断をするべきだったと言われたりしています。」

「私は自分の中の本当の“私”を失いかけていると感じたから退局しました。でも、CIAで働いたことに後悔はありません。今いる場所や、もっと明確な本来の自分に導いてくれた大切な人生の一ページなのだから。」

 

皆さんも、人生において厳しい状況に直面したら、彼らのようにポジティブ・マインドをキープし、本心に耳を傾け、自分を見失うと気が付いた物事からは手を引く勇気を持つようにしてください。

心から納得できる人生を歩んでいっていってもらいたいものです。