アルベルト・シュバイツァー ② 全てを投げ打って医師の道へ
アルベルト・シュヴァイツァー博士は、30歳にならないうちから世界的に有名な音楽家として、また学者として大活躍!
本当に多才でした!
そればかりか、牧師の助手として貧しい人たちのために熱心に働き、
さらに、古くて良いパイプオルガンが壊れ滅びていくのを黙って見過ごすことができず、パイプオルガンを救うための活動にヨーロッパ中を駆け回ったのです。
ところが…
突然、この成功者としての生活を全て投げ捨て、文明の世界から原住民相手の生活に大きく転換するのです。
今でこそアフリカも発展し、新しい独立国がいくつも出来ていますが、当時のアフリカと言えば、陸にはライオンやヒョウがウロつき、水の中にはカバやワニが群がり、原住民たちが弓や槍を持って追い回している、そんな野蛮で未開の地だと思われていました。
音楽も学問もあったものではありません。
原住民か猛獣に殺されるかもしれません。
悪い病気にかかってそれっきり、なんてことになるかもしれないのです。
何もわざわざ、名誉も地位も手に入れたシュバイツァー博士のような人が出かけていくことはないはずです。
それでも、シュバイツァーには止むに止まれぬ思いがあり、医師になる勉強をするためもう一度学生になり、6年もの長い月日をかけて医師になったのです。よほどの覚悟がなければできないことでしょう。
「30歳になるまでは、学問と芸術のために生きることを許されていると考え、迷わずその道を励もう。それから後の一生は、真っ直ぐに、人々のために尽くすのだ。」
こう考えていたシュバイツァー博士は、
この間にも、慈善団体の仕事を引き受け貧しい家庭を訪問して回ったり、孤児を引き取って世話をしたりもしていました。
そして…
30歳を前に
「何をしたらいいんだろう?」・・・
それまでやってきた慈善団体の仕事や孤児の世話では満足できません。もっと、全力をあげて打ち込めるような何か、誰の世話にもならない仕事はないものか…
(慈善団体の活動は、お金持ちからお金を貰ってこなくてはなりません。博士にはそれが納得できなかったのです)
「独立して自由に仕事をやりたい!」
そんなある日、アフリカのコンゴ地方について書かれていたパンフレットが彼の注意を引きます。
アフリカの原住民が惨めな暮らしをしている。。。
少年時代、お父さんがよく話してくれていたので、小さい頃からアフリカには深い関心がありました。
今、シュバイツァーはそのパンフレットを読んでいます。アフリカでの惨めな生活が、次から次へと彼の前に繰り広げられました。シュバイツァーは静かにそのパンフレットを置き、ついに決意したのです。
有名な大学教授であり音楽家であったシュバイツァーは、周囲から反対され無駄な議論に時間を取られるのを避けるため、直前まで誰にも話しませんでした。
これまで、哲学や音楽のことばかりやってきたシュバイツァー。
ゼロからのスタートです!
アフリカの原住民を相手にするとなれば、内科とか耳鼻科とか、一つの専門をやっただけではダメなのです。あらゆる種類の病人を手がけるために。。。
30歳。ゼロからのスタートです!
両親や恩師たち、友人たちは怒り罵りました。それでも、彼の覚悟は揺るぎません。
しかしその後、
シュバイツァーの本当の気持ちがわかるにつれ、人々の驚きと非難は深い尊敬へと変わっていったのです。
こうして、
6年にわたる、長く苦しい医学の勉強が始まったのです。