知的障害者も認知症になるの?

 

認知症は誰でもかかり得る病気の一つです。周囲の人たちは、「認知症になると何もわからなくなる」「徘徊や妄想など不可解な行動を起こす」などと決めつけてしまいがちですが、果たして本当にそうなのでしょうか?答えはYESでありNOでもあります (個人差あり)。

確かに、認知力が低下し (中核症状) 、「妄想」「異食行動」「暴言」「不潔行動」など様々な周辺症状も伴います。

 

さて、

世の中には生まれつき知的障害の方がいらっしゃいます。そのような方々を見て、「あれっ、もしかしてあの人認知症かな?」と思われる方もいることでしょう。「認知」に問題があり、ちょっとおかしな言動があるため、「普通ではない」と感じつつ、それが認知症から来ているのか、知的障害から来ているのかが微妙なケースもあります。

 

 

認知症?それとも知的障害?

高齢者 (義父母など) の言動を見ていて、「認知症なのか知的障害なのかよく分らず困っている」という方がいらっしゃいます。

 

例えば、

 

 人の話が理解出来ない

 小学生でも読み書きできるような漢字・言葉が分らない

 簡単な計算もできない

 

 近所の人の庭に勝手に入って野菜などを盗んでくる

 お風呂には「入って」と言わないとなかなか入らない

 とにかく騒がしい独り言が多すぎる

 

挙げればキリがないのですが、このような言動はいったいどう判断したらよいのでしょうか?認知症?それとも知的障害?

 

 

 

介護保険使っていれば療育手帳は必要ない?

「こんな人をこれまで見たことがなかったので、どういう風に接すればいいのかわかりません。」

「認知症の人を怒ってはいけないと言いますが、人に迷惑をかけるような場合でも怒ってはいけないのでしょうか?」

 

 

原因が「認知症」なのか「知的障害」なのかわからない場合は一度専門医に診てもらう方法もありますが、「年齢も年齢だし今更…」とお考えのご家族も多いのではないでしょうか。「家族ではこれ以上対応できないので、施設に入所してもらおう」と検討している方もいることでしょう。

ちなみに、私の知人のケースを例にとってお話ししますと、専門医でも「よくわからない」と話されていたそうです。「今の状態が昔からなら知的障害だろうけど、歳とともにおかしくなってきたのであれば認知症でしょう」ってことです。

役所に相談しても、「もう75歳だし、介護保険使ってれば知的障害(療育手帳)は申請する必要ないでしょう」と言われるケースが多いのではないでしょうか。

 

 

 

デイサービスでは苦情が…

一時期、デイサービスに通わせていたことがあったそうですが、他の利用者さんから苦情があり、やめざるを得なかったそうです。その後、普通のデイサービスでダメなら知的障害者用の通所施設に通わせようと思ったそうですが、障害者手帳を持っていなければ行くことが出来ず、現在は申請待ち。。。なのだとか。

しかも、役所でテストを受けないといけないらしいのですが、それが半年待ちらしく。。。とにかく大変です。

 

 問題行動を起こさず、静かに生活してくれるようにするにはどうしたら良いのでしょうか?

 それとも、「もう変わることはない」と諦めるしかないのでしょうか?

 

 

しかし、家族 (介護者) はほとほと疲れ果ててしまいます。このままでいいわけありません。

 

ここで、今更ですが、「知的障害は先天性」「後天的なものを認知症と呼ぶ」と覚えておきましょう。もしも知的障害があれば、多くの方は療育手帳の交付を受けているはずです。とはいえ、昔の時代はそういうわけにもいかず、そのまま放ったらかしになっているケースも少なくありません。

つまり、本当は知的障害なのに交付を受けておらず、高齢になってから「あれっ、認知症なの?」と思われてしまう場合もあるのです。だからといって悩んでばかりもいられません。一度専門家に相談しておきましょう。

 

このままだと介護者の方が先に精神的にも肉体的にもやられてしまいます。何とか、サービスを有効に使うことを考えましょう。

 

 

 

施設入所も検討しよう

実は精神疾患 (知的障害を含む) だったのに、なぜか今まで治療も受けず、周囲もあまり関わりたがらなくて、晩年になって問題が起こってくる…ということは多々あります。

そもそも、お役所は認知症と精神疾患の境界線が不明瞭なので、対応が定まっておりません。らちがあきません。直接精神科に連れて行きましょう。きっと、介護者は限界にきており、今後の事まで考えるとおそらく通院では無理かもしれません。

まずは精神科の物忘れ外来を受診し、認知症の治療が優先か精神疾患の治療が先かを診てもらいましょう (認知症入所施設か精神科入院施設に入ることも検討)。

 

 

 

結論

知的障害者も、健常者同様「認知症」になる時はなります。今や世界中で知的障害者の高齢化が問題にもなってきています (日本でも、65歳以上の知的障害者は軽く5万人を超えています)。

高齢になれば内科的な病気が増えますし、身体機能の低下も目立ってきます。そして、認知機能も次第に低下していきます。

 

 

知的障害者とは、子どもの頃から認知発達に問題があった人たちのこと。さらに、 加齢とともに認知機能がますます低下していきます。中には、その機能低下が急激に起こり、何事に対しても無関心になったり、これまで見せたことのない行動を示したりする場合も少なくありません。

そして、その年齢は一般の高齢者より少し早い傾向にあります。

 

介護者にとっては、「認知症」であろうと「知的障害」であろうと、本人がおとなしくならないと本当に大変です。何より、周囲に迷惑をかけてしまうということが苦痛で仕方ないかもしれません。

しかしながら、良い先生に巡り合っておとなしくなった方を私は知っています (何も施設に入れる必要などありません)。そんな良縁を信じて、諦めることなく優しく接してあげていってくださいね。