【高齢知的障害者の認知症】診断方法と必要なサービスについて

 

高齢化に伴う認知症患者の急増が危惧されていますが、こと知的障害者にとっては、生涯に渡り「知的能力」「社会適応」の面で苦労しています。「健康」に「長生き」できるよう、常に社会の支援が必要です。

ある調査によれば、65歳以上の知的障害者の約5%が認知症と考えられており、これは同年齢層の健常者とほぼ同じ程度とされています。

 

ダウン症の人にもたらされるアルツハイマーの影響

知的障害の原因の一つであるダウン症の人に限って言えば、40歳以上の約25%、60歳以上の約65%に認知症の主たる原因であるアルツハイマー病がみられます。つまり、ダウン症の人は他の人たちより認知症を発病する率が非常に高いのです。

これは、ダウン症の原因がアミ ロイド前駆蛋白質(APP)を含む21番 染色体が通常より1本多く、3本存在する染色体異常であることによると考えられています。

 

こうした背景もあって、高齢ダウン症患者のほとんどにアルツハイマー病の特徴である「脳の異変」がみられています (平均発病年齢は50歳、平均死亡年齢は58歳)。一般の人と比べると20年ほど発病が早いわけですが、症状は同じです。

「知的能力」の低下は一般のアルツハイマー病患者によく見られる症状ですが、もともと言語能力やコミュニケーションなど知的機能に障害のあるダウン症患者の変化を見極めることはけっして容易ではありません。

 

 

知的障害者の認知症の診断方法

まずはじめに、高齢の知的障害者を対象とした専用の「認知症の有無を診断するテスト」はない、ということを覚えておきましょう。現状、知的障害者に対しても、一般の高齢者と同じ方法で診断が行われています。

そもそも、一般の高齢者を対象として作成された認知症診断テストは、知的障害者 (特に障害の重い人) には不向きです。認知症の診断には、 「知的能力」に対する評価に加えて「身体検査」「医学検査」「神経学」「放射線」「病理 」などの検査を総合的に行う必要があります。

また、確実に認知症の診断をするためには、6〜12か月の観察期間を経た後にこうした総合的な検査を再度行なうのが良いとされています。こうした慎重な診断方法は、ほかの病気の可能性、あるいは一過性痴呆症の可能性を排除するためにも重要です。

高齢知的障害者の場合も、一般高齢者の場合と同様、家族や本人をよく知る人から症状についての聞き取りを行うことも大切になってきます。

 

 

必要なサービス

認知症を発病した知的障害者も、適切な支援が得られれば、これまで通りの日常生活を普通に過ごすことができます。認知症を持つ知的障害者に合ったサービスを提供している団体もありますので、お住いの近くでそのような団体が存在しないかどうか、一度探してみるといいでしょう。

生活のリズムを保ち、適切な支援を受けるために「デイケアーサービ ス」の利用も一考に値します。また、在宅サービスを利用することで、コストの高い老人ホームや積極的なケアをする施設などの利用を減らせたり、遅らせたりすることが可能です。

 

 

おわりに

知的障害者の高齢化は、欧米でも日本でも話題になり始めています。高齢になれば、内科的な様々な病気が増えますし、身体機能 & 認知機能の低下も目立ってきます。

知的障害とは、子供の頃から通常と同じ認知発達の道筋を辿らなかった人たちです。高齢になればさらに認知機能が低下していきます。中には、その機能低下が急激に起こり、何事に対しても無関心になったり、これまで見せたことのない行動を示したりする、認知症の症状が見られる場合も少なくありません。

 

認知症を持つ知的障害者に対する支援の原則は、「個々のニーズに合った援助を提供すること」です。個々の障害当事者の持つ「長所」「能力」「技術」を活かし、 本人の意志を尊重することが大事です。

希望する住居や地域に住み続けられるよう、可能な限り支援していっていただければと思います。「過剰な心配」はしなくても大丈夫ですよ。