無宗教者の葬儀【まとめ】

「無神論」と混同されやすいのですが、「無宗教」では神仏の存在を否定しているわけではありません。日本には「無宗教」的な考えを持つ人が多いと言われていますが、行事ではお寺や神社に行く人が多いため、「無信仰」という方がより正確かもしれません。近年は、特定の宗教・宗派に属さない「無宗教」の方や特別な信仰心のない「無信仰」の方が増えてきているため、そのような方々を中心に「無宗教葬」が増えてきています。

無宗教の葬儀は、決まった儀礼や伝統的作法では執り行わず、また、宗教者による読経・説教なども必要ありません。文字通り「自由葬」なのです。でも、決まった流れやマニュアルがあるわけではない分、どうしたらいいのか迷う方もいるのではないでしょうか。そこで参考までに、流れの一例を以下に紹介しておきましょう。たとえば、

● 故人が好きだった音楽を流す (生演奏・合唱をする)
● スライドや動画を見ながら故人の思い出を語る
● 故人の趣味や思い出の品を展示する

つまりは定められた形式がないため、自由に内容や段取りを決めることができるのです。仏式葬儀から宗教の要素をなくした形と考えるとわかりやすいかもしれません。しかしながら、良くも悪くも喪主次第になってしまうので、不安な方は葬儀社の方に相談してみるといいでしょう。

病院で亡くなった場合には、病院の方からできるだけ速やかに病院からご安置所までご遺体を運ぶように指示されます。ご遺体の搬送や安置に関しては、無宗教葬であっても他の葬儀と変わりません。故人が好きだった食べ物をお供えしたり、好きだった音楽を流したりと好みに合わせて行うとよいでしょう。通夜は、告別式や葬式の前夜に、故人と親しかった人たちが故人のご遺体に付き添い、故人との最期の時間を偲ぶものとして考えられています。一般的な通夜では、僧侶による読経やご焼香が行われますが、無宗教葬ではそういった儀礼・儀式に捉われる必要はありません。場合によっては通夜を行わず、葬儀だけを行うということでもいいでしょう。

無宗教葬には決まった流れがありません。故人を温かく見送ることが何より大切です。そして、一般的な仏式葬儀では、葬儀後に初七日や四十九日などの法事があり、読経や焼香を行ないます。四十九日を終えて忌明けとなった後も、一周忌や三周忌などの法事が続きます。無宗教葬では、こうした風習にもこだわる必要はありません。「まったく何も行なわない」というのもひとつの方法ですし、「故人を偲ぶ食事会やスポーツコンペを行う」といったことでもいいでしょう。故人を思い出し偲ぶのは、どのような宗教・宗派であろうと大事なことです。たとえ無宗教葬であっても、葬儀の後「故人のことを思い出す機会をつくる」ことは大切です。

① 開式の言葉

司会者が開式の言葉を述べます。

② 黙祷

お経の代わりに全員で黙祷を行います。

③ 献奏

故人の好きだった曲を流したり生演奏をしたりします。

④ 故人の経歴紹介

経歴を紹介したり、故人が残したメッセージなどを読みます。

⑤ スライド・ビデオの上映

故人との思い出を元にしたスライドやビデオを上映します。

⑥ 別れの言葉

届いた弔電を読み上げたり、遺族などが感謝の言葉を述べたりします。

⑦ 献花

焼香の代わりに、遺族・親族・参列者の順で一人ずつ花を供えていきます。そして全員で故人とのお別れを行います。

⑧ 閉式の言葉

喪主は参列者にお礼を述べます。

⑨ 出棺

葬儀後は出棺し、火葬場へと向かいます。　　　　　

⑩ 会食

火葬の後に会食を行う場合もあります。

無宗教の葬儀と一言でいってもその形は様々です。家族葬のような少人数で執り行うスタイルのものもあれば、大人数で行う一般葬スタイルのものもあります。そのため、費用は葬儀の規模などで変わってきます。少人数で大がかりな内容を含まない場合には20～30万円ほどで執り行えますが、演出にこだわったり規模が大きくなったりすると100万円を超えることもあります。宗教的な儀式に捉われない分自由なので、予算をあらかじめ決めて規模や演出を選ぶという方法がおすすめです。

「小さなお葬式」として告別式・火葬を1日で行うのもいいですし、極力費用を抑えたい方は直葬を選択するといいでしょう。直葬はお別れに最低限必要なものだけを揃えているので、葬儀費用も最小限に抑えることができます。無宗教葬儀では僧侶を呼ばないため、お布施を渡す必要もありません。そのため、無宗教葬儀は仏式の葬儀よりも葬儀全体にかかる費用を大幅に抑えることができます。とはいえ、無宗教葬儀の形は千差万別。「無宗教葬儀だから葬儀は安くなる」というのではなく、「工夫次第で費用を抑えることはできる」と考えておくといいでしょう。

無宗教葬儀に参列する場合、服装について特別な指示がない場合には、略式の喪服を着用して参列しましょう。男性は黒のスーツを着用し、ネクタイやベルト、靴なども黒で揃えます。女性は黒のワンピースやアンサンブルを着用し、黒のストッキングやタイツを履きます。なお、「平服」との指定がある場合には、喪服に準じる服装 (ダークスーツや地味な色のワンピースなど) を着用すれば問題ないでしょう。男性の場合、ネクタイのみ黒い色のものを用意しておけば、会場の雰囲気に合わせて変えることもできます。

バッグは布製で金具などの飾りがないものを選び、メイクはナチュラルメイクにしておきましょう。また、数珠は仏教式のように持っていかなくても失礼にはあたりません。持って行こうか迷われている方は、念のため持っていくといいでしょう。

香典は一般的な仏教式の葬儀と同じく、不祝儀袋あるいは白い封筒に包んで持参しましょう。なお、表書きは「御霊前」や「御香典」「御花料」と書き、フルネームも書いておきましょう。

1．自分の番になったら前に進み、遺族に一礼します。
2．スタッフから花を受け取ります (花を右手側、茎を左手側に持ちます)。
3．献花台の前で故人の遺影に一礼します。
4．根本が祭壇側に向くように花を持ち、献花台に置きます。
5．故人の遺影を向いて再度一礼し、黙祷します。
6．遺族に一礼してから席に戻ります。

また、無宗教葬であっても「焼香はしたい」という方も少なくありません。このような場合、焼香を行っても問題はありません。ただし、葬儀式場以外の場所では禁止されていることがほとんどです。このように、式の進行・演出は式場の規約に合わせて考える必要があります。

🔴 永代供養

永代供養とは、お寺や霊園の管理運営者が遺族に代わって遺骨の管理・供養をすることをいいます。通常のお墓と違って承継を前提としていないので、従来は承継者がいない人や身寄りのない人のための供養手段として用いられていました。しかし近年、「お墓を建てる必要がない」「供養にかかる費用を抑えたい」「子供に迷惑をかけたくない」という理由で永代供養を選ぶ人が増えています。また、永代供養だけでなく、「納骨堂」「樹木葬」といった選択肢もあります。

🔵 海洋散骨

海洋散骨は、粉砕したお骨を海に撒く埋葬方法です。「自然に還したい」という気持ちから、海洋散骨を希望する人が増えているようです。海洋散骨は通常のお墓よりも費用が安く、維持費もかかりません。また、宗教にとらわれず埋葬できるのもメリットの一つといえるでしょう。

ある調査によると、「自分の葬式を無宗教葬で行ってほしいか」という質問に50%以上の人が「そうは思わない」と答えています。宗教意識の薄い日本人ですらこうです。よって、無宗教葬には柔軟な対応が必要と言えるでしょう。また、故人や自分たちに菩提寺がある場合には、お寺に「無宗教葬を行う」旨、許可を得ておく必要があります。無宗教の葬儀を行った場合、遺骨は菩提寺のお墓ではなく、宗教宗派を問わない公営墓地や民営墓地に納めなくてはいけません。後で揉めないためにも、事前によく話し合っておきましょう。菩提寺に先祖代々のお墓がすでにある場合には、無宗教の葬儀は極力避けた方がいいでしょう。

また、無宗教の葬儀は経済的な負担や自由なスタイルで行うことができるといったメリットがある一方で、遺族や親族の理解を得なければならないというデメリットもあります。彼らの理解を得ずに無宗教の葬儀を行なってしまうと、トラブルの元となってしまいます。さらにもう一つ。無宗教葬儀に慣れていない葬儀社に依頼した場合、葬儀の内容について具体的な提案がなされない場合もあります。こうなってしまうと、葬儀式場で何も行うことがないまま10分ほどで式が終了…といったことにもなりかねません。後日改めてお別れ会を行うというやり方でもいいので、事前打ち合わせだけはしっかりと行っておきましょう。

⭕️ メリット

• 故人の遺志を尊重した、自由な形で故人を送り出せる
• 宗教者に支払うコストが減り、費用を抑えられる

「堅苦しい雰囲気で送り出されたくない」といった故人の希望がある場合はやはり無宗教での葬儀がオススメです。加えて、お坊さんを呼ぶ必要がなくなり、「読経代」「お布施代」などが必要でなくなります。さらに、法事・法要をするという決まりがないことも金銭的なメリットになります。

❌ デメリット

• お寺や遺族・親族と話し合う必要がある
• 葬儀の内容が喪主や葬儀社の力量に左右されてしまう

また、無宗教葬儀に実績のある葬儀社を選ぶ必要もあります。

「葬儀の式中に読経や焼香は行わない」のも自由ですし、「火葬場で僧侶に読経をあげてもらう」のも自由です。また、お通夜と葬儀・告別式の2日間のお別れを行い、お通夜は無宗教葬、葬儀・告別式は仏教葬を選ぶ家族もいます。仏教を信仰しているわけではないのですが、「見送った」という実感を得るための心の収め方として、僧侶に読経を依頼する方もいらっしゃるようです。

一方、無宗教葬の場合、そうした決まりはありません。いつ供養を行ってもよいということになります。一般的には命日に執り行うことが多いようです。供養の内容にも決まりがないため、家族みんなで集まって故人の好きな音楽をかける、会食の場を設けて故人の思い出話に花を咲かせるなど、思い思いに過ごすことになります。位牌や仏壇も必要がないため、遺影写真や愛用品、お墓に手を合わせることになります。また、現代的な宗教色のない仏壇も販売されているため、それを購入するという方法もあります。