重複障害の偉人ヘレンケラー② サリバン先生から学んだ「愛」
ヘレン・ケラーはアメリカ出身の社会福祉活動家です。視覚と聴覚の重複障害者 (盲ろう者) でありながら、世界各地を歴訪し、障害者の教育・福祉の発展に大きく貢献しました。
よく「三重苦」だったと言われていますが、発声に関してはある程度克服していました。ヘレンの妹の孫によれば、抑揚はないものの話すことができたといいます。
そんなヘレン・ケラーについて書いた本記事、第②回目の今回は、ヘレンが出会った素晴らしい大人たちについて書いてみたいと思います。
ヘレンに妹 (ミルドレッド) ができました。しかしどうも、このかわった生き物がベッドの中にいるのが面白くありません。
そのせいか、この頃ヘレンは目立って怒りっぽくなり、いたずらが激しくなってきました。そこら辺のものを手当たり次第ハサミで切り刻んだり…
あるときは、危うく妹を殺すところだったのです。
「なんとかして、1日も早く、ヘレンのために力を尽くしてくださる先生を探さないと!」
ヘレン6歳。父はヘレンと汽車に乗り、「ぼんやりでも辺りの景色がわかったり、私たちの顔の見分けがつくようになればいい」と願い、偉い医師のもとへ向かいます。
道中、「お嬢さんのお目目が治るようお祈りしていますよ。元気でね。」そう言って涙ぐむ人たちもいました。
しかし、、、
「残念ですが、私の力ではこのお子さんの目をどうすることもできません。」
「今の医学では、世界のどこの医者へ行かれても、お子さんの目を治すことはできないと思います。」
・・・
「あっ、そうだ!グラハム・ベル博士を訪ねて行かれたらどうですか。良い方法があるかもしれません。」
「先生は有名な学者で、小さい時から苦労された方です。世の中の目の見えない人とか、口のきけない人には、特に同情深い方ですから、いっそ、そこへいらしてみたらいかがですか。」
アーサーはがっかりした気持ちを奮い起こして、ベル博士が住んでいるワシントンへ向かうことにしました。
ベル博士は、いじらしいヘレンの姿を見るとすぐ膝の上に抱き上げて、優しく頰ずりをしてこう言います。
「私は電気のことなら少しは研究していますが、目や耳のことは何にも知らないのです。私の親しい人に紹介状を書きますから、そこへ行ってご相談なさってごらんなさい。」
このベル博士とは、1876年に世界で初めて電話を発明したあのベル博士だったのです。
そして、博士が紹介状を書いてくれた先はボストンのパーキンス学院。ここは有名な、身体の不自由な子供のための学院だったのです。
アーサーはさっそくパーキンス学院に手紙を書き、返事を待ちわびていると、ついに、校長から返事が届いたのです。
「あなたのお子さんのヘレンを教育するのに最適な先生がいますから、その人をお宅へ伺わせるようにいたしました。しばらくお待ちください。」

サリバン先生は、アナグノス校長の「これは、1人の女の子を救うだけでなく、人類のために我々がしなければならない事業なんですよ。」という言葉を思い出しながら、ボストンからタスカンビアへ。
そして、もうじき7歳になろうとするヘレンと運命の出会いを果たすのです。
サリバン先生がプレゼントに持ってきたお人形を気に入っていつまでも触っているヘレン。すると、サリバンはヘレンの手をとって「D O L L 」と綴ったのです。
もちろん、この時のヘレンには何のことかわかりません。しかし、これがサリバン先生の最初の教えだったのです。面白い遊びだと思ったヘレンは、何度も繰り返し、夢中でお母さんのところへ行き、今覚えたことをお母さんにもしてみたかったのです。
それから少しずつ、他の文字も覚えていきますが、次第に、こんな面倒なことは嫌になってしまいました。ついに、人形を床に投げつけ壊してしまいます。
サリバン先生は怒ることなく、そのかけらを丹念に掃き寄せると、ヘレンに帽子を被せます。ヘレンはお庭に出られるとわかりご機嫌です。
サリバン先生は、井戸で冷たい水を汲み上げて、ヘレンの小さな手に垂らします。それから、ヘレンの手のひらに「WATER」と綴ります。
このとき、ヘレンの頭の中で、それが何であるかわかってきました。それは、この生き物のようなもの、冷たくて、渇いた喉を潤してくれる大切なものが「水」であるとわかったのです。
ヘレンの眠っていた魂は、初めて生き生きと目を覚まします。汲み上げた水で手を洗ってうちに帰ると、ヘレンには、今まで手で触れていたあらゆるものが、生命をもって、生きて動いているのがわかってきました。
(さっき壊したお人形さん、ごめんなさい)
ヘレンの目には、涙が溜まっていました。人間らしい心のなかったヘレンに、サリバン先生は人間としての心を持つことを教えてくれたのです。
そういうことがあってから、ヘレンは今まで以上にサリバン先生だけでなく、お父さんもお母さんも大好きになりました。
いろんな言葉を覚えたヘレンはある日サリバン先生の手をとると、「愛とは何ですか?」と質問。
難しい質問でしたが、サリバン先生は根気よく、いろんな手段を使い丁寧に教え続けていきます。その甲斐あって、「愛」や「考える」などの言葉も、何となくわかるようになってきたヘレン。
それからのヘレンは、点字の本で美しい物語や詩を読み、今まで知らなかった世界を少しずつ知るようになっていくのです。
他にも、算数を勉強したり、粘土で立体地図を作り地理を学んだりもしました。動物や植物についても学び、地球は昔大洪水に遭ったことがあることまで学んだのです。
その後、旅に出て海に行ってからは海が好きになりました。雪も大好きです。
ラムソン夫人やフラー先生に、唇に触れながら口の動きを真似ることを学び、一生懸命勉強した結果、まとまった文章を発音できるまでに成長しました。
普通の人が言うのとはちょっと変わっていても、とにかく人間の言葉を話せるようになったのです。
その後ヘレンは、ベル博士たちの尽力もあり、目や耳の不自由な人のために新たに建てられた学校で学び、その後ケンブリッジ女学校へ。
ここでもサリバン先生と二人三脚での勉強です。ヘレンはいろんなことを学べて嬉しくてなりません。
そんなある日のこと、
父アーサーが亡くなりました。
重複障害の偉人ヘレンケラー ③ 「不自由な人たちよ、幸せになれ!」