人類にとって「病と向き合うこと」は普遍的な課題です。とはいえ、人は大病を患ったとき「私が何をしたの?」と誰を責めるでもない問いを抱かずにはいられません。そんな葛藤や苦悩の先に、生きる意味を見つけたり、大切な何かに気づいたり…。
難病や苦しみは、幸せな日常に突然やってきます。そこには破壊と再生の物語があり、複雑なヒューマンドラマがあります。夏目雅子さん、本田美奈子さん、小林麻央さん・・・みな「病気」に敗れ、若くしてこの世を去っていきました。
闘病生活の中で、人は何かを学び、何かに気づき、そして周囲の人たちに多くのモノを残していくのです。
今回は、そんな「病」に焦点を当て「病を扱った映画」を紹介していきたいと思います。何かを感じ取っていただけたら幸いです。

黒澤明監督の手により1948年に公開された本作の時代背景は終戦間もない1948年。
《続きを読む》主演の三船敏郎さんが、肺結核に冒された破滅的な生き方をするヤクザの役を熱演し、一躍スターの仲間入りを果たした作品です。
戦前は「国民病・亡国病」と呼ばれて恐れられていた肺結核ですが、1951年に結核予防法が制定され、抗生物質(ペニシリン)を用いた化学療法が普及して以降、治る可能性の高い病気となりました。
1952年に公開された、胃がんをテーマにした黒澤作品の一つです。
《続きを読む》志村喬演じる主人公の病名は「胃がん」。現在なら早期発見して切除したりステージが進行していたとしても化学療法などで延命措置ができるのでしょうが、当時はそういった時代ではありません。
どうにも手の施しようのない「不治の病」として胃がんが重く描写されています。

現代病のひとつ、パーキンソン病を描いた作品です。
《続きを読む》この病気は震え、無動などを引き起こす難病です。現代医療を持ってしても解決できていない病気であり、誰もが将来罹ってしまうかもしれない病気でもあります。
ちなみにこの映画は実話をもとに作られています。パーキンソン病に罹ったロバート・デニーロ扮する患者に対して懸命に病気を治そうと試みる医師ロビン・ウイリアムズ。
実はこのロビン演じる医者自体もある問題を抱えているのですが、パーキンソン病の患者と付き合っていくことによって生きることや家族の大切さなどに気づいていくわけなんです。
1980年代を中心に世界中を恐怖に陥れた「エイズ」。現在は治療法も存在しており、当時のように絶望的な病ではなくなりましたが。。。
《続きを読む》南野陽子さんが患者役を熱演した本作 (1992年公開) は、日本映画で初めてエイズ問題を真正面から取り扱ったヒューマンドラマです。 当時あまり知られていなかったその実態や症状が分かりやすく伝わるような内容になっており、病への過度な偏見・誤解を解くことに大きく貢献しました。

副腎白質ジストロフィー(ALD)という不治の病に冒された息子を救うために奮闘する両親の姿を描いた、実話をもとにした人間ドラマです。
《続きを読む》奇行や乱暴を繰り返してしまう不治の病に侵された息子を、懸命に救おうとする両親の姿を感動的に映し出しています。主演は「サウス・キャロライナ 愛と追憶の彼方」のニック・ノルティ、「テルマ&ルイーズ」のスーザン・サランドン、「死海殺人事件」のピーター・ユスチノフ (1992年公開)。
普通の人よりも4倍の速さで成長を続けてしまうという早老症 (奇病) の小学生を演じたのが名優ロビン・ウィリアムズ。
《続きを読む》この映画では、外見はオジサン、中身は小学生という役をロビンが上手く演じています (1996年公開)。面白おかしく懸命に生きる姿を描いた作品で、トム・ハンクス主演の名作「フォレスト・ガンプ」のような、生きる勇気を与えてくれる映画です。
限られた人生の中で精一杯に生きること、毎日を大切に生きていくこと、仲間たちと時間を共有することの素晴らしさなどを教えてくれます。

本作はブラッド・ピットの初主演作です。
《続きを読む》1988年、本作はユーゴスラビアで撮影されたのですが、編集作業が完成する前にユーゴスラビア紛争が勃発。フィルムがバラバラになってしまいます。その後数年間、フィルムの断片を回収・編集してようやく完成・公開されたという幻の映画です (1997年公開)。
あらすじは、太陽の光に当たると死んでしまう先天性造血性ポルフィリン症という奇病を患う青年リックを主人公にした物語です。
リックは父親と共に治療法を求めて旅をし、アドリア海に面した小さな島でようやく治療法を見つけるのですが、それは3日間しか持たないものでした。しかしリックは、一生病魔に苦しめられ太陽の気持ち良さを知らないで生きるよりも、たった3日間の自由な生き方を選ぶのです。
同性を好きになってしまう。自分が授かった性別ではなく、異性になりたいと願う性同一性障害という病気。世間には数多くの同性愛映画が存在していますが、本作はかなりの衝撃作です。
《続きを読む》この映画では、性同一性障害の女性 (男性になりたい) をヒラリー・スワンクが演じています (1999年公開)。実際にアメリカで起こった事件を元に描かれた作品で、ヒラリー・スワンク演じる性同一性障害の女性は実在した人物でもあります。
ここまで自尊心をぐちゃぐちゃにされてしまうなんて。。。この映画を見終わった後に、この映画のタイトルの意味も分かることでしょう。

10分前の記憶をなくしてしまうというキツイ記憶障害の病気に苦しめられる主人公。
《続きを読む》10分しか記憶がないのに、言葉や名前や過去のことは忘れていません。10分しか記憶がないので、主人公は自分の妻を殺した犯人の手がかりをタトゥーにして自分の体に刻み込み、犯人を突き止めていこうとします。
本作はサスペンス映画ですが、重い感じの雰囲気はなく楽しめる作品です (2000年公開)。
亜也(大西麻恵)は中学3年の時に “脊髄小脳変性症”という難病にかかります。
《続きを読む》県立東高校に入学し、母(かとうかずこ)や医師(鳥居かほり)らに励まされ通学しますが、症状は進行し、学校生活も次第に困難になっていきます (2004年公開)。かなり切ない作品となっています。

《続きを読む》4人に1人、3人に1人が高齢者で、それに伴い多くの人たちが認知症・アルツハイマー病に罹患しています。日本においてはもはや、誰もがなり得る国民病の一つと言えるでしょう。
2006年に公開された本作は、若くしてかかる可能性のある (若年性アルツハイマー病) ことを示した作品であり、渡辺謙演じる広告代理店のやり手営業マンとその家族の絆を描いた感動作です。
主人公はアドレナリンを出し続けていないと心臓が止まってしまう…という病気 (難病)です。
《続きを読む》病気というよりは猛毒なのですが、奇妙な設定で非常に印象的な作品です (2006年公開)。この映画はとにかくノンストップ。落ち着いたりしていると1時間後には死亡してしまうので、常にテンションマックスで物語りは進んでいきます。
もしも自分がこんなことになってしまったら。。。
あなたは頑張れますか?

《続きを読む》21歳の竹中まゆ(平山あや)は、幼い頃に母が卵巣がんを発症して以来、入退院を繰り返す母に代わって父(三浦友和)とともに家事をこなし、一家を支えてきました。そんなある日、彼女は胸の脇にしこりのようなものがあることに気づきます。そして、医師に「悪性の乳がんです」と告げられ闘病生活が始まるのです (2007年公開)。
夏樹(大沢たかお)と寛子(伊東美咲)はサーフィンを通じて知り合い、お互いに一目で恋に落ちます。
《続きを読む》意気投合した2人は付き合い始め、やがてハワイで挙式。そして、プロ・ウィンドサーファーの夫とともに世界中を回っていた寛子は妊娠をきっかけにサーフィンを引退。子宝にも恵まれ、幸せな日々を送っていた2人ですが、ある日、夏樹が肝細胞ガンだと診断され……(2007年公開)。

《続きを読む》病弱な16歳の華(谷村美月)の療養のため、新潟県の小さな町に5年前に引っ越してきた須藤一家。毎年、世界一の花火が打ち上げられる“片貝花火まつり”の日、急性白血病による半年間の入院生活を終えた華は、兄の太郎(高良健吾)が自室に引きこもっていることを知り、町の成人会に参加させようとします。。。(2010年公開)
カメラマンを目指して東京でアシスタントとして働く新平(溝端淳平)は、母が入院した知らせを受けて5年ぶりに帰郷。
《続きを読む》病院で高校時代の恋人・香織(木南晴夏)やその妹で難病を患っているさくら(大森絢音)と再会した新平は、さくらと一緒によさこい祭りで踊る約束を思い出し、旧友たちと共に踊ることを決意するのです (2010年公開)。

《続きを読む》エリート・ビジネスマンのジョン(ブレンダン・フレイザー)と妻アイリーン(ケリー・ラッセル)は、幼い子どもたちが難病 “ポンペ病” のために長く生きられないと告知されます。ポンペ病の権威、ストーンヒル博士(ハリソン・フォード)に会いに行ったジョンはそれまでのキャリアを捨て、治療薬を開発する製薬会社を起業することを決意するのです (2010年公開)。
SF作家の朔太郎(草なぎ剛)と銀行員の妻節子(竹内結子)は、高校1年の夏休みに付き合い始めてからずっと一緒でした。
《続きを読む》ところが、腹痛を訴えた節子が病院に入院し、大腸ガンに冒されていることが判明。医師(大杉漣)に余命1年と宣告された朔太郎は最愛の妻に、毎日原稿用紙3枚以上の短編小説を書くことにするのです (2010年公開)。

《続きを読む》1990年代以降、急激に増え始めたのが「うつ病」「パニック傷害」「統合失調症」「双極性障害」などの精神疾患を扱った映画です。それだけ社会の中で心の病を患う人が増えてきたということでしょう。
2011年に公開された本作では、ツレ=妻がうつ病に罹っていることをサラッと友人にでも告げるようなこの表題に、うつ病をはじめとした精神疾患が身近な病であるということを示しています。
酒もタバコもやらない陽気な青年アダム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は27歳でガンを患い「5年生存率50%」と宣告されます。
《続きを読む》職場の同僚や恋人、家族が病気を気遣い神経質になっていく中、悪友カイル(セス・ローゲン)だけはいつも通りに接してくれます。
何とかガンを笑い飛ばそうとするアダムでしたが、刻々と悪化していく病状に、ついに動揺を隠せなくなっていくのです (2011年公開)。

《続きを読む》ニューヨークに住み、管理職に就いている独身のブランドンは深刻な性依存症に陥っています。 コールガールとのセックスを頻繁に行い、出会ったばかりの女性とゆきずりの一晩を過ごし、時には職場のトイレで自慰行為に耽る日常を送っています。
そんなセックス中毒の患者を演じたのが話題のイケメン俳優マイケル・ファスベンダーです (2011年公開)。
幼少期に患った“ポリオ”が原因で首から下が麻痺し、呼吸障害を発症している38歳の男性が主人公の映画です。
《続きを読む》頭部以外を動かせず、ベッドに横たわったままの半生を過ごしてきた男性と、魅力的な女性ヘルパーとの“セックスセラピー”を描いています。ポジティブでユーモラスな語り口ながら、“病気と性”のあり方について考えさせられる作品となっています (2011年公開)。

《続きを読む》1985年、電気工でロデオカウボーイのロン・ウッドルーフ(マシュー・マコノヒー)はHIV陽性 (エイズ) と診断され、「余命30日」と言い渡されます。アメリカには認可治療薬が少ないことを知った彼は、代替薬を探すためメキシコへと向かい、密輸を試みます。
そんなとき、偶然に出会った性同一性障害でエイズを患うレイヨン(ジャレッド・レトー)と一緒に国内未承認の薬を販売する「ダラス・バイヤーズクラブ」を設立するのですが……(2013年公開)。
アルツハイマー病を扱った映画であり、主演のジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を獲得した作品です。
《続きを読む》原題のタイトルは「Still Alice」。まさに、このタイトル通りの内容となっています (2014年公開)。記憶をなくしてしまうアルツハイマー病が描かれているのですが、自分のことすらも思い出せないアリス。。。
韓国映画「私の頭の中の消しゴム」も同じくアルツハイマーを扱った名作映画なのですが、「アリスのままで」の方がより印象深い作品となっています。アルツハイマーは認知症の一種で現代の生活習慣病とも言われています。日々の生活を見直し、気をつけていきたいものですね。

《続きを読む》本作には甲状腺がん (末期)を患っている少女ヘイゼルと骨肉腫により片足を切断した青年ガスのカップルが登場します。冒頭のシーンからすると、癌が肺にも転移してしまっているヘイゼルの方が病状が悪くなっていくように予想されるのですが、物語は思わぬ方向に進んでいきます。
かなり泣ける映画です。若くして病気で亡くなってしまう人たちがいるんだぁとしみじみ考えさせられます。自分なら自暴自棄になってしまうかもと思いつつ、この映画では主人公の2人が精一杯に生きる姿を見せてくれています (2014年公開)。
難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を宣告された元アメリカン・フットボール選手が、これから生まれてくる息子のために撮影したビデオダイアリーをもとに製作されたドキュメンタリー映画です。
《続きを読む》NFLニューオーリンズ・セインツ現役時代に輝かしい功績を残したスティーブ・グリーソンは、選手生活を終えたある日、ALSを宣告されます。そして、そのすぐ後に妻との間に初めての子どもを授かったことが判明。我が子を抱きしめることができるのかわからない厳しい現実を前に、グリーソンは我が子に向けてビデオダイアリーを撮り始めます。
グリーソン自身や家族、友人が撮影した4年間、1500時間におよぶビデオダイアリーによって構成され、グリーソンを支援するパール・ジャムのエディ・ベダーが劇中の音楽を提供し、本編にも出演しています (2017年公開)。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
いかがでしたか?
このような映画は、時に病気の認知に貢献したり、生と死の問題を考えさせてくれたり、人の温かさを感じさせてくれたりします。
時代の変遷と共に扱う病名は変われど、そこには普遍的な何かが描かれており、私たちの心を揺さぶり続けるのです。