シリア難民問題で日本人にできることは?
2015年9月、海岸に打ち上げられ横たわるシリア難民の男の子の写真が世界に広がりました。その姿に、心を痛めた日本人も多かったことでしょう。
しかし、今はどうでしょう?
平和な日本に住み、日々の暮らしを過ごしていると、そんなことは自分には関係のないこと。まるで何事もなかったかのように、少年は忘れ去られていくのです。
そんな中、あまりニュースで取り上げられることはありませんが、ヨーロッパにおいて、難民支援活動に取り組んでいる日本人も参加している民間ボランティア団体があるのです。
いったい、日本人に何ができるのでしょうか?
現地では、ありとあらゆる人手が不足しています。代表的な職種としては、医師と看護師です。英語またはフランス語、アラビア語が話せれば尚良しです。
ボート到着後の医療審査補助や病人の応対、体調チェック、緊急かつ深刻な医療事態への対応などなど、やるべきことは山ほどあるのです。
他にも、例えばイタリアなどに既に数ヶ月間滞在し、現地の生活に慣れていこうとしている人の中にも医療ケアを必要としている人がいます。
慢性的に医療スタッフが足りていないのです。
この団体は、イタリアを活動地としてボランティアに取り組んでいます。
具体的な活動は大きく分けて二つ。
1. 初期対応
赤十字と協力し、港に到着したばかりの人々のサポートにあたります。飲み水を配り、ケガ人や病人がいないかを確認し誘導。その後、個人情報の収集やヨーロッパに滞在するために必要な申請を行う手伝いをしたり、医療行為を施したりカウンセリングをしたりするのです。
2. 二次対応
難民が申請した書類が通るまでの間(約6か月)、現地のチャリティー団体と共にいろんな側面から教育的活動を実施します。語学はもちろん、ヨーロッパの文化、習慣、法律を教え、彼らがヨーロッパで生活していく術を身に付けられるようにサポートします。また、ヨーロッパで受け入れてくれる家族を探すお手伝いをする場合もあります。
上述した医療スタッフや、生活全般を支援するスタッフの他にも、心のケアをしてくれる人材が不足しています。難民たちの多くは、故郷を追われ逃げてくる過程において、大切な家族を亡くしてしまったりしています。重大な精神的サポートを必要としているのです。
ここでもやはり、英語、フランス語、アラビア語が話せる心理学者やセラピストの方々が必要とされているのです。
・家族を亡くした人たちへのサポート
・これから見知らぬ土地で新しい環境に順応しなければならなくなった人たちへのサポート
こういったことが出来る人材が求められているのです。
心に深い傷を負った子供たちもたくさんいます。誰一人としてストレスを抱えていない者はいないのです。
特別重宝がられるスキルは上述した通りですが、それ以外にも、「特別なスキルを必要としないサポート」も膨大にあります。具体的には、日々彼らに付き添って事務処理や買い物などのサポートできる人。
なぜなら彼らは、政府から許可が下りるまで単独で行動ができないようになっているからです。
そのため、この時間を利用して、彼らが活力を取り戻し社会活動に復帰できるよう、アクティビティーを計画したり実施したりして、現地生活適応に向けてのサポートを行っていく必要があるのです。
このような、片言の英語さえできれば何とか参加できるようなボランティア活動がある、ということを皆さんには知っておいてもらいたいのです。
現在でも、世界の多くの国々からボランティアが集まってきているそうです。
イギリス、アメリカ、アルジェリア、オーストラリア、ベルギー、デンマーク、ガーナ、ジャマイカ、オランダ、パキスタン、フィリピン、ロシア、南アフリカ共和国、チュニジアなど…
日本政府は、2017年から5年間で最大150人のシリア難民の若者を留学生として受け入れると発表しました。確かに、ドイツやフランスなどヨーロッパ各地でテロ事件などが発生したこともあり、日本の「難民受け入れ」については賛否が分かれるところでもあるでしょう。
ただ、日本だけが「部外者」として遠巻きに見ているだけではいけないと思うのです。今まさに、この瞬間にも命を落としたり、心を病んだり、つらい境遇に見舞われている人たちがいるわけなのですから。
かといって、現地までボランティアとして出かけ、手を差し伸べられる環境にある人ばかりではないでしょう。お金も時間も労力もかかります。「そこまで深くは関わりたくない」という人もいるでしょうし、「募金くらいなら…」と考えてくれる人もいるかもしれません。
しかし今、普通に暮らす全ての日本人が最初にやるべきことがあるのです!
それは、「難民問題を真剣に考えてみること」「この問題に対して家族や友人たちと議論してみること」
2017年から日本にやってくるシリア難民150人は、「留学生」という形で受け入れられます。もしかしたら、あなたと同じ学校に入学するかもしれません。近所のコンビニで、片言ながらもアルバイトをしているかもしれません。
世界の問題を自分のこととして考えられる思考力こそが、これからの日本には求められているのではないでしょうか?