軽度意識障害「せん妄」と認知症はどう違う?
仮性認知症、うつ病、妄想、幻覚、そして「せん妄」はその症状の類似性から、「認知症」とよく間違えられます。専門家の医師でさえ、診断を間違えてしまうほど非常に見分けの難しい病気なのです。
ちなみに「せん妄」とは、一言で言えば「意識障害が起こり、頭が混乱した状態になっている」ことをいいます。
一方で、認知症の高齢者は突然、普段と様子が変わり、会話のつじつまが合わなくなることがあります。
つまり、「せん妄」と「認知症」の判別はとても紛らわしく、認知症だと思われる患者の多くは、実は認知症が悪化したのではなく、「せん妄」と呼ばれる状態だったりするのです。
せん妄は、医学的には意識障害の一種とされています。脳の働きの乱れと位置づけられているのです。高齢者に多く見られ、15〜50%は入院中にせん妄を経験するそうです。
そして、若い人であっても、頭部外傷を負ったり手術をした後などに起こることもあるようです。
そして、
認知症の高齢者にせん妄が起こると、判別が非常に難しいのです。
ここで重要なのは、せん妄は心の問題ではなく、脱水や感染症、薬物の影響など、背景に身体的原因があること。原因を突き止めて治療すれば改善が期待できる反面、放置すれば身体症状が悪化し、認知症も進む恐れがあるのです。
せん妄には、興奮して言動が激しくなる過活動型と、意識が低下したりうつらうつらしたりする低活動型があり、見逃しやすいのは後者の方です。
《せん妄の症状》
・話のつじつまが合わない
・見えないものが見える (幻視)
・あり得ないことを言う (妄想)
など。
「せん妄」になってしまうと、食事や会話に集中できず、食べ物をこぼしたり、会話の内容を覚えられなかったりします。睡眠のリズムは乱れ、昼夜逆転し、夜間に症状が激しくなることもあるのです。
特に、夕方からは落ちつかず、家の中をうろうろすることもあります。徐々に進む認知症とは異なり、「今朝から」など、発症時期がはっきりしているのも「せん妄」の特徴といえるでしょう。
「せん妄」は認知症とは違い、症状が急に発生し、数時間から数日にかけて進行するのが特徴です。
認知症の方で「せん妄」を発症することもありますが、その場合でも、せん妄の症状は一時的なもので、治療が可能です。
なので、できるだけ早く医療機関に連れて行くべきなのですが、その際、原因をよく思い出してもらいたいのです。
例えば、
・風邪を引いた
・新しい薬を飲んだ
・外で転んで帰ってきた
など。
くどいようですが、認知症とせん妄を判別するのは専門家でも難しく、病院では複数の医師たちの連携が欠かせません。
「もしかして…」と思ったら、迷わずすぐに医療機関に相談しましょう。そして、「この医師はあんまり信用できないな」と思ったら、他の病院でも診断してもらいましょう。
セカンドオピニオンはとっても大事です!
◯ 夜間せん妄・・・昼間は症状がなく、夕方から夜間にかけてせん妄が出現する
◯ 術後せん妄・・・手術後しばらくして発生する
◯ 薬剤性せん妄・・・処方薬などにより引き起こされる
◯ アルコールせん妄・・・アルコール依存症の人などが起こすせん妄
原因は様々です。
例えば、
① 環境の変化や手術などによるストレス
他にも、メガネや補聴器を使用できずにストレスを受けるなど、健常者には何でもないように思えることでもせん妄を招いてしまうことがあります。
② 体調悪化
脱水、尿路感染症、インフルエンザ、ビタミンB12欠乏症、低栄養、便秘などが引き金となることがあります。
③ 薬の服用
処方薬や薬の飲み合わせによってせん妄が起こることもあります。今まで飲んでいた薬をやめたことで起こるせん妄もあります。
④ 生活リズムの乱れ
睡眠不足や昼夜逆転の生活がせん妄に繋がる可能性もあります。
せん妄を予防するには、普段から体調管理と環境を変え過ぎないようにすることが大切です。日中にちゃんと起きていることも必要です。
そして、ストレスを極力取り除くこと!
◯ まずは穏やかに話しかけて対話を!
◯ 暴力が出るときは、少し離れて様子を見ましょう!
◯ 落ち着ける環境作りを!
せん妄が強い時には対応が難しいので、医師やヘルパーなどに相談し、適切なサポートを受けるようにしましょう。