老人ホームをトラブル退所した父をどう面倒見ていくべきか
家族ある限り、親の介護問題と無縁という方はそうはいないでしょう。老いた両親が田舎で暮らしている。あなたは都会で自分の家庭を持っている。よくある話です。
さて、今回は、そんな典型的な日本人の親子関係において、ある日突然両親の一人が亡くなり、高齢の親が一人暮らしすることになった場合に起こった実例をもとに、介護問題を考えてみたいと思います。
突然母が他界し、遺された75歳の父は「これ以上子供たちに迷惑をかけるわけにはいかない」と有料老人ホームへ入居することになりました。
ところが父は、他の入居者と度々トラブルを起こしてしまうのです。そこで、施設・父・子供たちの三者で話し合った結果、父は老人ホームを退去することになりました。
ところが、父は既に自分の家を手放しており、帰るところがありません。父の貯蓄のほとんどは「入居一時金」として老人ホームに支払っており、退去時はほんの一部しか戻ってこなかったのです。
子供たち3人で話し合うこと1日、長男宅で生活していくことに決まりました。そして、ほかの2人は毎月2万円ずつ援助をすることになったのです。
じゃあ長男が面倒を見ているのか、というと仕事をしているためそういうわけにもいきません。長男の嫁も仕事をしているのですが、結局は介護負担は長男の嫁にかかってくるのです。
「今のところ介護の必要はないから大丈夫!」
長男の嫁はそう思っていました。ところが、連れ合いを亡くしたショックからか、父の体力は日に日に衰えていきます。介護を要する部分も生じ始めてきました。
こうなると仕事を持ちながら義父の世話をするのは大変です。結局妻は仕事を辞めざるをえなくなってしまいました。これは家計に大打撃!
妻の毎月10万円の収入がなくなった上、支出も想定より増えました。例えば食事は父の口にあったものと食べ盛りでお肉が大好きな息子たちのものとで別々に作らなければなりません。
さらに、意外にかかると判明したのが水道光熱費。冷暖房は24時間使いっ放しだし、「安全で体を優しく温めてくれる」オイルヒーターを入れるとコストはとんでもなく跳ね上がります。
介護入浴でお湯もよく使いますし、紙おむつや介護ベッドなど、介護に直接かかる費用も増え、医療費もかさみます。
「収入が減って支出が増えるなんて…」
「想定外の事態だ」
どんなに節約してみても、毎月7万円を超える赤字。
困った…
増えた食費や介護費用の面で、父親に「我慢してください」とはとても言えません。食事については、時々子供たちにも薄味の和食に付き合ってもらうとか、外食を控えるといった程度の対策しかできません。
水道光熱費についても、父以外の家族が普段の使い方を見直して、少しでも節約するしかありません。
「困った…」
そこで長男家族は、通信費 (スマートフォン費やインターネット、固定電話など) を抑えるだけ抑え、小遣いも削り、家計簿と何度もにらめっこしてみます。
しかし、焼け石に水とはこのことです。これだけ切り詰めても、さすがに限界なのです。
最後の手段として、長男夫婦は腹を割って弟たちと話をすることにしました。事情を洗いざらい説明し、領収証などを提示しながら丁寧に説明していったのです。
すると弟たちは、快く援助金の引き上げに応じてくれました。月4万円ずつ、計8万円を提供してくれるというのです。その約束は書面にもしてくれました。
同様に、父にも「お金を少し出してほしい」とお願いすることに。すると父はわずかに残る貯蓄とごく少額の年金から月3万円を出してくれることになったのです。
「助かった〜。これで何とか生活していける!」
いかがでしたか?
今回のケースでは、資金を援助してくれる兄弟が2人もいたことで何とかなりましたが…
世の中には、貯蓄・年金のない老親を支えていかねばならない人たちもたくさんいるのです。
子供たちに多くの負担をかけないよう、せめて自分の老後の準備はしっかりとしておきたいものですね。