ギャンブルのような不妊治療になぜ保険は適用されないの?
今回は、不妊治療のお金について。
6組に1組のカップルが不妊、そして超少子高齢社会といわれる今の時代、なぜ国は不妊治療を保険適用にしてくれないの?困っている夫婦を見捨てる気なの?
わたしの知人であるY子さん (現在38歳、大手メーカー勤務) は32歳の時に結婚、34歳からの2年間は不妊治療を行い、36歳でめでたく妊娠・出産!
夫との共働きで世帯収入は1000万円。「どうしても子供がほしいから」とベストの選択をし続けた結果、出費がかさみ、“出産ビンボー”となってしまったのです。
- 不妊治療 : 600万円
- 出生前診断 : 20万円
- 妊婦健診 : 20万円
計 : 640万円
これに、
- マタニティ・ウェア&シューズ : 10万円
- 分娩(入院費用、個室料): 120万円
- ベビー用品・服 : 30万円
計:160万円
なんと!合計 800万円もかかってしまいました!
結婚当初は夫とふたりの新婚生活を有意義に楽しんでいたY子さんですが、2年が経ち、なかなか妊娠しません。そんなある日、「卵子の老化」という言葉を聞いたことがきっかけで不妊治療を受けることを決意!
「今やるしかない!」
妊活サイトで評判のいい不妊治療専門医を見つけたY子さん夫婦は、「まだ30代だしすぐに赤ちゃんを授かるはず」と気軽に不妊治療をスタートしました。
まずは一番手軽なタイミング法から。タイミング法は、「もっとも妊娠しやすいタイミングを見計らってセックスする」というものです。
基礎体温や超音波検査、ホルモン検査などで集めたデータをもとに、医師が排卵日を予測。卵子は排卵後24時間しか受精できませんから、タイミングが命なんです。
医師が「この日ですよ!」と指定した日に、夫の出張が入ったり飲み会で遅くなったりすると、貴重な妊娠のチャンスが1ヵ月先送りになってしまいます。
そんなこんなで半年ほどタイミング法を試したものの、なかなかうまくいきません。そこで今度は人工授精に挑戦。人工授精では、排卵のタイミングを見計らって女性の子宮内にパートナーの精子を人工的に注入して受精させようと試みます。
5回チャレンジした人工授精も失敗でした。そこで、いよいよ体外受精に。
体外受精は、子宮内から取り出した卵子と、パートナーの精子を体外で受精させ、受精卵を培養してから子宮に戻すという方法です。
体外受精では母体への負担が大きくなります。1回あたりの費用も、人工受精は1〜3万円ですが体外受精は30万円前後と高額に跳ね上がります。
通院で体力的にもつらい中、仕事を辞めたら治療費を出せなくなるので働き続けるしかありません。
この体外受精では妊娠の兆候が見られたものの、なかなかうまく着床してくれずチャレンジを繰り返します。そして月日だけが過ぎていき、いよいよ最終チャレンジの顕微授精に突入します。
顕微授精では、医師が顕微鏡で見ながら卵子の中に直接精子を注入します。そしてうまく受精した卵子を培養してから子宮に戻します。
体外受精に似ていますが、「顕微鏡を使って精子を授ける」という言葉の通り、卵子と精子の出会いが医師の手で行われているところが違います。
「また、ダメだった…」
何度涙を流したことでしょう。こうしてチャレンジした4回目の顕微授精が見事功を奏し、待望の赤ちゃんを授かることができたのです!
しかし、終わった頃には夫婦のお金はあとわずかに…
・人工授精5回
・体外受精5回
・顕微授精4回
・サプリメント代
・食費上昇
・ヨガ・はり治療
・・・
Y子さん夫婦は、以下に述べている条件に該当しなかったため利用できませんでしたが、不妊治療には助成金というものがあります。
体外受精・顕微授精にかかった費用のうち、1回あたり15万円(初回に限り30万円に拡充されました)を助成するというものです。
助成金は最大6回受けられますが、初回年齢が40歳を超えると3回に減り、初回年齢が43歳を超えると1円ももらえません。不妊治療は年齢が上がるほど難しくなりますから早めの治療を心がけましょう。なお、男性不妊治療も対象になっています。
※ 助成金には夫婦の合算所得 (年収ではない) が730万円未満であることが条件になっています
不妊治療は出口の見えない迷路のようなもの。いくらお金をかけても、何回治療を受けても、必ず赤ちゃんを授かるというものではありません。
2016年4月、金融庁が不妊治療の費用をカバーする民間の医療保険を解禁したとして話題になりました。
しかし、その後実際に保険商品が発売されたかというと、どこの保険会社も二の足を踏み、具体的なサービスが打ち出されていない状況にあるのです。
ビジネスとして成り立たないから?
確かに、最初から不妊治療をする可能性が高いとわかっている人が加入するため、保険料は高額。どんな治療を何回受けるかは患者の意思で決まるため、治療費はどんどん増えてしまう。
こうなると、保険会社各社は「商品設計が難しく採算が立たない」と判断してしまうのも無理はありません。そもそも、最初から保険会社は乗り気でなかったのに、金融庁が見切り発車してしまったのです。
体外受精と顕微授精は「特定不妊治療」と呼ばれ、公的な健康保険の対象にはなりません。1回の治療で患者が負担しなければならない額は30万円超。
「ボーナスが全額治療費で消えてしまう」
「治療を始めてから貯金が底をついてしまった」
というカップルは大勢います。
「少子化を食い止めたい」と本気で思っているのであれば、国はフランスやスペインのように年齢制限を設けて、不妊治療を公的健康保険の対象にしたらいいのに。。。
病院側は、ベイビーの心拍が確認できた時点(流産や死産で無事に生まれなくても)で20~40万円の成功報酬を取るので、治療費のみを対象とする現在の公的助成金だけでは不十分なんです。
不妊治療には不透明なことが多すぎます!
治療費は病院によってバラバラだし、不要な薬を出してくる病院も少なくありません。保険会社に丸投げする前に、もっと国としての取り組みを真剣に進めてもらえないものでしょうか?
日本産科婦人科学会のデータによりますと、「特定不妊治療」によって誕生した子どもの数は日本国内で年間4万人超。
とはいえ、その陰には治療の自己負担額に耐えられず途中で諦めざるを得なかったカップルもたくさんいます。
公的・民間を問わず、本当に当事者の助けになるサービスが打ち出されることを心から願っています。