【死後離婚】亡夫の家族と縁を完全に断ち切る方法
夫が亡くなった後、「同じ墓には入りたくない」と死後離婚を申し出る女性が年々増えてきているようです。しかしこの、あまり聞きなれない「死後離婚」とは一体何なのでしょうか?
「死後離婚」とは・・・簡潔に言えば、配偶者の死後に『姻族関係終了届』を提出することです。これにより、配偶者の血族(姻族)との関係を終わりにすることができます。
文字通りの意味合いで、「死後に離婚する」ことはできませんが、実質的に離婚と同じ効果が得られるものとなっています。なので、「死後離婚」と言われているのです。
「やっぱり、高卒の頭じゃ長男の嫁は務まらないのね…」
口癖のようにそう言われ続けていました。
「早く死んでほしい…。そう思っていました。ひどいことを願ったバツなのかもしれません。3ヶ月前、夫が先に亡くなりました…」
慌ただしい葬儀を終え、A子さんは悲しみの底でふとこう思ったんです。
「夫は死んだ。同居する姑はどうしよう?もうあたしはこの人とはなんの関係もない。それでもまだこの人と一緒に暮らさなければならないの?」
息子は大学を出て一人立ちしましたが、夫婦で買った戸建てのローンはあと10年残っています。年金から一銭の金も入れず、3食当たり前に食らう姑をこれ以上養う余裕はありません。
「なんとか姑を追い出すことはできないだろうか?」
ネットで調べているうちに、A子さんはようやく1つの答えにたどり着きます。「やった〜!これでやっと、姑との関係を終わらせることができる…」
それは「姻族関係終了届」と呼ばれているものです。
日本では、結婚することによって配偶者の父母、兄弟姉妹らと姻族(親戚)関係が発生します。離婚すれば関係は終わりますが、配偶者に先立たれた場合はどうなのでしょう?
ズバリ!「姻族関係終了届」を出すことによって、配偶者の父母らと姻族関係を断ち切ることができるのです。届はA4用紙1枚。自分の氏名、住所、本籍、死亡した配偶者の名前を記載し、役所に提出するだけでいいのです。
「姻族関係終了届」を出せば・・・
- 姻族関係が終わり
- 民法上の親族ではなくなり
- 他人になり
- 扶養義務がなくなります
- 配偶者が亡くなった後であればいつでも出せるのです
なんと、「本人確認」と「配偶者の死亡証明」のみ…
配偶者の親族の意思は全く関係ないのです。仮に姑が拒否しても、姑が知らなくても、提出できるし受理されるものなのです。
『夫がいないのに姑の面倒なんてみたくない。同じ墓に入るなんて考えられない』と考えている女性たちは今増え続けているのです。いや、厳密に言うと、増えたわけではなく、過去の時代であれば我慢し続けていたものを、自分に正直に意思表明するようになってきた、ということです。
もし、天国へ旅立った夫がこの事態を知れば、複雑な心境になることは間違いないでしょう。そんなことまで考えると、この「死後離婚」には誰にどんなメリットがあるものなのでしょうか?
やはり、一番のメリットは、多大なストレスの元であった (愛する人ではない) その親族 (姑など) と縁を切ることができることに尽きるでしょう。
『姻族関係終了届』を提出することで、姻族との関係を民法上「他人」に戻すことができます。提出したその日から効力が発生し、扶養義務はなくなり、姻族の墓に入る必要性も墓の管理義務なども負わなくて済むのです。
ただし、届を出しても姻族との関係がなくなるだけで、夫との関係は何も変わりません。つまり、遺産はもちろん、遺族年金も死後離婚前と変わらず受け取れるのです。
自分の死後、妻は必ず墓や老いた両親を守ってくれるはずだ──そんな期待は、すでに過去のものとなりつつあるのかもしれませんね。
神奈川県に住むB美さん (58歳)は、1年前に肺がんで35年間連れ添った夫を亡くしました。葬儀では夫の親や兄弟たちと共に悲しんだ彼女ですが、そんな彼らと縁を切る決断を下したのです。
「もともと夫の家族とは折り合いが悪く、盆と正月にも顔を合わせないぐらいに疎遠になっていました。大きなトラブルがあったわけではありませんが、やっぱり好きにはなれないのです。夫がいなくなった今、もう彼らと親族である必要はない…」
そう思ったB美さんは、「死後離婚」を選びました。
「死後離婚」とは、妻たちにとって「夫の親や兄弟との親戚関係(姻族関係)を解消すること」を意味します。
「死後離婚」しなければ、妻は夫を亡くしても、仮にその親族が生活に困窮すれば、民法の規定で彼らを助ける義務が生じます。お金に困っていれば、ある程度は生活を支えてあげなければなりません。それは逆も然り。親族という繋がりがあるからこそ、万が一の時、生活の支え合いが可能となるのです。
しかし、B美さんにとって亡き夫の家族たちとの関係性は良好ではなく、どうしても断ち切りたかったものなのです。
亡夫の心情としては、「親族で互いに助け合って生きていってもらいたい」と願い、あの世へ旅立っていったはずなのですが、しかし、現実はそううまくもいかず…「姻族関係終了届」というたった一枚の紙が憎しみの関係性を解消し、寸断するのです。
現在、「死後離婚」に関する相談は、60~70代の女性が圧倒的に多いそうです。人生の晩年を迎えて、亡夫の家族からの解放を求める女性たちは意外なほどに多いのです。
死後離婚が増えている理由としては、
- 生前から夫との関係はうまくいっていなかったが、遺産と遺族年金を受け取るために夫が死ぬのを待っていた
- 夫と仲は悪くはないが、夫の実家と折り合いが悪かった
- 夫の死後、お墓の管理や親族の介護などをしたくない
- 姻族との繋がりから自由になりたい
あなたはこの現実を「薄情」だと思いますか?それとも「自由」を求める真っ当な権利だと思いますか?