自閉症スペクトラム症 (ASD)の原因・特徴・困っていること

 

発達障害の一つで、対人関係を築くのが不得意な「自閉スペクトラム症」ASD)に関する研究が近年進んできています。ちなみにASDとは、一般的には「自閉症」「アスペルガー症候群」などと呼ばれる症状の総称のこと。

 

 

日本には100万人以上いる (100人に1人はいる) と考えられており、女性より男性に多い傾向があります。「コミュニケーションが苦手」「普段と違う行動を嫌がる」など非常にこだわりが強く、社会生活で苦労することが多い一方で、特定の分野で優れた才能を発揮する場合もあります。

このASDは「脳機能の障害」が主な原因と考えられており、15番染色体の遺伝情報に変異のある事例が知られています。そこで脳の働きをより詳しく調べた結果、脳幹にある「 縫線核 (ほうせんかく) 」の働きが低下し、ここで作られる神経伝達物質「セロトニン」の量が減っていることがわかったのです。

 

 

さらに、発症に関与しているであろう新たな変異も発見されました。脳内で、神経細胞のつなぎ目である「シナプス」がうまく形成されなくなって、脳神経の情報伝達に支障が出ているということらしいのです。つまり、脳の様々な部分で遺伝子変異 (機能障害) が起き、ASDにつながっているのです。

 

ASDの人は「表情」「口調」をあまり気にしない

そもそも発達障害には、「自閉症スペクトラム症」のほかにも読み書きや計算が苦手な「学習症(LD)」、衝動的に行動しがちな「注意欠如・多動症(ADHD)」などがあります。症状のタイプや程度は個別に異なり、複数のタイプを併発している場合も。そうした現実を踏まえて、ASDの人の特徴についてみていきましょう。

まずASDの人は、険しい表情と口調で「良かったね」と言われた場合に、その表情や口調はあまり気にせず、言葉に引きずられ、「この人は友好的だ」と考える傾向にあります。この原因は、「オキシトシン」というホルモンにあります。ASDの人は、どうやらこの「オキシトシン」が少ない、あるいはうまく機能していないようなのです。

 

 

他人への信頼感を高めるとされるホルモン「オキシトシン」ですが、これをASDの方に点鼻で投与した実験結果によれば、「内側前頭前野の活動が活発化」し、言葉よりも表情や口調から相手の心の内を読み取る行動が増えたそうです。

副作用の問題もありますので早急にはできないでしょうが、いずれこの「オキシトシン」がASD治療の一つになるといいですね。

 

 

ASDの原因は「わからない」部分が多い

それでもまだ、ASDの原因は謎が多く・・・

「様々な要因が複雑に絡み合っている」非常に難しい問題なのです。母親からの影響だったり、腸内細菌が関係していたり…

 

ともあれ、ASDを含む発達障害の人は、学校や職場で人間関係につまずき、孤立することも少なくありません。子どもの頃から行動・言動に異常があり、成人後も残ります。それが要因となって生活にも支障が出てくるのです。

早く原因が解明され、効果的な治療薬が開発されるといいですね!

 

 

ASDの人は「異常」ではない

「異常」と言えば「欠陥」のように聞こえがちですが、そうではありません。ここでは、ASDは「通常ではない」と解釈しておきましょう。例えば、人口の約10%にあたる「左利きの人」みたいなものです。少数派ではありますが、発達障害の人も「通常ではない」だけなのです。

とはいえ、問題がないわけではありません。

 

 

 

ASDの「困った特徴」3つ

 

① やるべきことをやらない

ASDの人たちは、「みんなはやっているけど自分はやらない」ということがよくあります。例えば、周りが教科書を開いて勉強しているのに自分は教科書を見ようともしない、といったようなことです。これには、「やりたくない」という場合もあれば、「やらなければいけない」ということに気づいていない場合もあるでしょう。

 


② 余計なことをやる

逆に、「やらなくてもいいこと」をやってしまいがち。例えば、みんな着席しているのに一人だけ走り回ってみる、といったことです。

 


③ 他者とは異なる思考

これは① ②と違って目に見えません。一見すると、みんなと同じように振る舞っているような場合でも、実は違うのです。例えば授業中、みんなと同じように授業に集中しているようであっても、実は「今日の晩ご飯は何かなぁ」などと、他のことばかり考えていたりするのです。

先生に言われたことをよく理解できていないのに、周りの子がするのを見て見よう見まねでまねている子もいます。先生から見ると、みんなと同じ行動が取れているので、「あの子、わかってるから大丈夫」と勘違いしてしまいます。

 

 

おわりに

親御さんたちは、よその子と比べて自分の子が何かをやらないという ① をよく気にします。一方で、幼稚園や学校の先生たちは、他の子がやらないのに何かをやらかしてしまうという ② の部分に目がいきます。そして、誰からも見落とされがちな ③。

世の中には、この ③ の部分が原因でつらさを感じ、やがて不登校になってしまう子が少なくないのです。不登校や引きこもりの子は、実は小さい頃「何の問題もない」と思われていた人が意外と多いようです。

 

学校給食の時間に、みんなでワイワイと食べるのが苦痛だったり、「ごっこ遊び」が嫌だったり、クレヨンのにおいが嫌だったり、誰かが一度触れた物には触りたくなかったり。。。

こうした我慢の連続で、いつしか「不登校」「引きこもり」になってしまうのです。近年、不登校の子どもたちの中に発達障害の子が多いと言われていますが、その背景には以上のような理由もあるのです。