独り言がうるさい人の原因と対処法
皆さんは、何か “ひとりごと” を繰り返しつぶやいている人が周りにいたら、どう思いますか?
以前の私は、独り言や奇声を発している人を見たら、何とも言えない恐怖心が湧いてきて、なるべくその人に近づかないようにしていました。「何をされるかわからない」…そんな風に思っていたのかもしれません。
でも、実は私の母親も独り言や奇声を発する人だったんです。原因は発達障害。信じられませんでした。そんな母を父親がうまく制御してくれていたのですが、父亡きあと、母にかかっていたストッパーは外れ、独り言& 奇声が容赦なく出てくるようになったのです。
「ウソでしょ?」「ここまで酷かったの?」と理解に苦しみました。絶望感も味わいました。介護者である私は、イライラとうつ病感が増し、ノイローゼに近い状態となり、自然と生活の中から笑顔が消えました。そして、現実を受け入れるまでにそれなりの時間を要したのです。
しかし、そんな負の感情を払拭し、メンタルダウンを克服し、前向きに生活できるようになってからの私はまるで別人です。例えば、街やバス・電車の中で同様の症状を持つ人を見かけると、自然と温かい眼差しを送れるようになりました。
何事かブツブツとつぶやいている少年の声を聞いた時の私は、「あー、バスのアナウンスが好きなんだなぁ。楽しそうに言ってるなぁ。」と思えるのです。そして、なんだか親しみすら感じられるのです。
「怖い」と思うのは知らないから。なんだか分からないことに、人はきっと恐怖を感じるんだなと思うんです。
学校や会社、街中に独り言がうるさい人、ずーっと独り言を言っている人っていたりしますよね。あんまりにも独り言が多いと『この人病気?』と思ったり『うるさいな!』って感じたり…。
そこで今回は、「独り言を言う心理」「独り言が出る病気」、そして何より大事な「対処法」についてまとめてみました。
誰だって、”声を出す” という刺激で心が落ち着くこともありますし、ブツブツしゃべる独り言でストレスが解消され、不安や緊張が解きほぐされます。これは間違いありません。
つまり、独り言には、「精神の安定を図りたい」「ストレスを解消したい」という深層心理が無意識のうちに働いているのです。
そう考えると、独り言はけっして負の要素ばかりではありません。心の不健康さを治療する薬のような効果もあると言えるでしょう。
ただ、ネガティブ系の独り言の場合は「ストレス」との関わりが強いので注意が必要です。
これからやる家事のことであったり「大変だー」といったような独り言は、自己主張をし、ヘルプを求めているサインです。「私の存在を認めてほしい」「もっと私を手助けしてほしい」といった形です。
独り言には必ず何か意味があるんです!
ただ「うるさい!」と思うのではなく、「なぜこの人はこのタイミングで独り言を言っているんだろう?」と冷静に思慮深く考察してみてください。きっと、そのサインの意味がわかるはずです。
上述した心理から考えると、独り言を言う人は『ストレス解消の方法をあまり知らない/うまくストレスを解消できていない』人です。また、自己主張系の独り言を言う人の場合は『コミュニケーション下手』という特徴も挙げられます。
どちらにしても外交的で柔軟なタイプとは言えません。
独り言で結構乱暴なことを言っている人は、実は小心者…というケースもよくあります。
独り言を言ってしまう病気、というのももちろんあります。
ストレスからくる独り言、発達障害や知的障害の症状としての独り言以外にも、以下に挙げる病気の特徴が「独り言」として出てくる場合もあるのです。
◯ 統合失調症
幻覚や妄想といった症状が特徴的な統合失調症には、独り言という症状もあります。幻聴を聞いて話したりするので、声の大きさは人としゃべるときのそれに近く、場所を問いません。
不安・緊張などとともに、監視妄想や被害妄想の傾向もあれば、統合失調症を疑った方がよいでしょう。
◯ トゥレット障害
トゥレット障害とは、チックのうち音声・行動の症状が慢性化しているもののことを言います。音声チックには、汚い言葉やどこかで聞いた言葉を無意識に繰り返してしまう症状があります。
これが独り言のように聞こえ、おまけに汚い言葉 (『汚言症』) の場合は周囲が不快になります。
トゥレット障害やチックは、脳の一部の活動異常から起きていると考えられています。大人の場合は精神科や脳神経科へ、子供の場合は児童精神科やかかりつけの小児科へ行くのがよいでしょう。
◯ アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の患者さんは語彙が減る傾向にあります。そんな中で乱暴な言葉の独り言が目立ついった特徴もあります。
(65歳以上の老人に多いのですが、40〜50歳代でも注意が必要です)
◯ うつ病
悲観的な内容の独り言が多い、生気がなく行動が遅い、常にボーっとしている、などの特徴がある場合は、うつ病の可能性が考えられます。
うつ病の独り言は感情を処理しきれなくなったときの発散手段の1つです。ボソボソ〜っと言うケースもありますが、ある時急に感情が爆発し叫ぶケースもあります。
病気の症状としての独り言に対しては、その根本原因の治療が一番の対処法となるわけですが、そうでない場合 、以下の方法のいずれかが有効となり得ます。
1.直接言う
「ちょっと独り言がうるさいので静かにしてもらえませんか?」と告げ、理解してもらい、効果があればこれが一番ベストではあります。ただ、実際のところこれで素直にやめてくれる人はあまりいないでしょう。
2.どういう意味か聞いてみる
「困った困った、どうしよう…」といったヘルプ系の独り言の場合は、直接本人に「何をそんなに困っているの?」と聞いてみるのもありです。『何か助けを求めているのか、それとも独り言なのか』を確認することで、独り言の頻度や声のトーンは低下していくのではないでしょうか。
3.いちいち反応してみる
独り言を言う度に『え?』とか『何話してるんですか?』と過剰に反応してみましょう。本人が無自覚に独り言を言っている場合、あなたが反応することで独り言の多さや内容を自覚します。それによって改善が見られる可能性もあります。
4.喋れない状況を作る
ついつい独り言が出てしまう…という方に対しては、まず喋れない状況を作りましょう。例えば、ガムを噛んだり飴をなめたりと独り言を言いたくても物理的に言えない状態にします。
5. ストレスを解消させる
ストレスを解消させることは、実は一番難しいことでもあります。上手にストレスを解消できないからこそ独り言が出てきたわけで、今までの習慣を変えるのは楽ではありません。
ただ、何もしないわけにもいきません。日記を書く、人と話すなど、様々な不安解消法を模索してみましょう。どこかに、言葉の受け皿を作ってあげましょう。また、現在の環境自体がストレスなら思い切って環境を変えるのも有効です。
ここまでは、「独り言をやめてもらう」ことを前提とした対処法でしたが、ここからは、1〜5でもうまくいかなかった場合の対処法となります。
6.耳栓
私の場合、発達障害 + 知的障害を併せ持つ母に対してはこの方法も有効です。「独り言はやめてほしい」と言っても理解できていない状態ですから、時に、仕事や読書、考え事などに支障がある場合には「耳栓」を使用します。
これで独り言を言う人も聞かされる人もストレスなく共存できます。残念ですが、これしか対策がない場合もあるんです。この辺りのことは割り切って考えるしかありません。
7.完全に無視
独り言をシャットダウンする場合、できれば、必要時の耳栓だけでうまく対処してほしいのですが、しょっちゅう独り言を聞かされる場合は「無視」することも時に有効となり得ます。「それじゃあネグレクトだよ」と非難してはいけません。「無視」も、ケースバイケースで完全に否定はできないのです。
自己主張やヘルプ系の独り言を言う人の場合は特に、『注目されたい・構われたい』という欲求が強いもの。彼らは無意識のうちに『独り言は人を怒らせ関心を得られる方法』だと考えてしまっているのです。
こういった人たちの思い込みを崩し、不快な独り言を聞かされないためにも、冷たい顔で無視をするのが有効な場合だってあるのです。
今回は独り言を言う心理や病気、そして対処法などをまとめてみました。参考になりましたでしょうか?
少し前のことですが、広い公園に障害者施設の方が10人ほどピクニックに来られていた時のことを思い出しました。その中の一人が、とても大きな声を出し私の方に走って来たのです。
少し前の自分だったら、恐怖を感じ、逃げ出していたかもしれません。でも、その時の私は、「ああ、この方はきっととても楽しんでおられるんだなー」と自然に思えたのです。本当に、全身から楽しい気持ちが伝わってくるような走り方で、生き生きとした表情をされていました。とっても嬉しそうな様子だったんです。
おかげで、なんだかこちらまでハッピーな気持ちになれました。
そんなことをぼんやりと思い出しながら、つい先日も同じ電車に乗っていた一人の少年の背中を見送りました。
「一人で電車に乗ってどこかに出かけるんだな。」と、少年の純粋な笑顔と堂々と一人で行動している姿に元気をもらったのです。
みなさんの身近にいる「ちょっと変わった子だな」なんていうお子さんの行動には、その子なりの真実があります。けっして恐れたり遠ざけたりする必要はありません。
理解が深まれば、恐怖や不安は親しみに変わるものです。
分からないから、異質だから、と排除せず、相手の真実に気づき知ろうとすることが大事なのです。それぞれの存在を認め合いましょう。
その方が、世界はずっと面白く、輝きに満ちている気がしませんか?