「あまちゃん俳優」塩見三省さん、脳出血後のリハビリは長嶋さんに支えられ復活

 

「じぇじぇじぇ」の流行語とともに大ヒットしたNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」には、多くの個性的な登場人物が存在していました。

その中の一人、掘削職人「琥珀の勉さん」を演じ人気を集めた俳優の塩見三省さんは、「あまちゃん」終了後、翌年の2014年3月に脳出血で倒れたのです。

 

何とか一命は取り留めるものの、左手足などに後遺症が残理、体重も激減。それでも懸命のリハビリを行い、2016年春、テレビドラマで復帰したのです。

「病気をする前のことは、もう夢の中のことのよう。倒れた日を境に、何もかもが変わったんです。」

 

 

劇団出身で、多くのテレビドラマや映画で名脇役として活躍してきた塩見さんの生活は、「あまちゃん」後も充実していました。東京と京都を往復する忙しい日々。

新幹線の席は富士山を眺めるためにいつも窓側です。車窓に映る自分の顔を見ては「年を重ねてきたが、まだまだ自分は旅の途中なんだな〜」と幸せを実感していました。

 

しかし、ある日、

休みを自宅で過ごしていた塩見さんは、何となく朝から具合が悪かったのです。夕方になっても回復しない。「お風呂に入ったらすっきりするかな」と入浴するも治らず。

そして、浴槽から出ると急に体に力が入らなくなり、「あれっ?」と思うと同時に崩れ落ちたのです。

 

「あまちゃん俳優」塩見三省さん、脳出血後のリハビリは長嶋さんに支えられ復活

 

(頭はしっかりしている)

 

(話もできる)

 

でも、体が動かない。

 

 

帰宅した妻が倒れているのを発見し、救急車で病院へと搬送されます。救急隊員の質問にはすらすらと答えられます。「痛くないし、少し休めば治るかな」と思っていました。

もともと健康には自信がありました。酒は飲まないし、ジムで汗を流したり散歩したりと、役者に必要な基礎体力作りにはそれなりに気を使っていたのです。

健康診断だって毎年受けていたし、具合が悪くなればすぐに病院へ行っています。血圧など、特に何の問題もなかったはずなのに…

 

・・・

 

病院に到着すると、MRI検査で脳出血と判明。原因は「一過性の高血圧」・・・

手術はせず、降圧剤を服用し、搬送の翌日には容態が落ち着きます。医師から「血管がちょっと弱かっただけですね」と言われるも、体は元に戻らず。ショックでした。

 

「あまちゃん俳優」塩見三省さん、脳出血後のリハビリは長嶋さんに支えられ復活

 

いよいよ病院でのリハビリ生活が始まります。大病を患ったという実感はありません。「リハビリすればすぐに治るさ」と思っていたのですが、5か月を過ぎても杖で歩ける程度にしか回復しません。

「このまま体が動かないんじゃないだろうか」「俳優業はもう無理なのかな」と不安になり、リハビリを頑張る気持ちになれない時もありました。

 

それでも、「あれこれ悩みながらも、命があって本当に良かったという気持ちを大事にしながらリハビリをするのが自分らしい」と思い、日々励んでいったのです。

辛く苦しいリハビリを継続することができたのは、色々な人に出会い助けられたおかげです。病院で偶然出会った長嶋茂雄さん (巨人軍終身名誉監督) もその一人。

 

走ることが目標の長嶋茂雄さん
走ることが目標の長嶋茂雄さん

 

待合室で「1、2、3、4」と元気な声がする。歩行練習をしている長嶋さんでした。院内で出会う度に「グッドチャレンジだね!」などと気軽に声をかけてもらえるのが嬉しくて、やる気のもとにもなりました。

しかし、どんなに頑張ってリハビリをやっても、なかなか回復しません。まるで霧の中にいるようです。ゴールが全く見えてこないのです。それでも諦めず頑張っていると、ちょっとだけ明かりが見えてきます。そんなかすかな明かりを追い続けて、2年以上が過ぎました。

 

脳出血で倒れて以来一番つらかったのは、病気前後の落差を思い返す時。普通の生活ができた昔に比べ、今は生活することそれ自体が戦いなのです。

そんな毎日の中で心の支えとなったものは「俳優への復帰」という目標でした。友人や家族の励ましで気持ちを繋ぎます。『可能性』について話すことが、自分を再生させる力になっていたのです。

 

脳梗塞・脳出血で復帰した芸能人

 

リハビリを続けていくうちに、「動かない体」がいとおしく感じられます。そんな中、NHKの震災後5年のドラマで、病に倒れリハビリに励む元漁師という役を演じることになります。

「ここまで回復できたのは奇跡」と感じ、支えてくれた人たちには感謝の気持ちしかありません。そんな塩見さんは、パラリンピックを観て思うことがあります。

 

「障害を乗り越えて、その上、何かになろうとする姿は美しく素敵なもんだなぁ。僕も演技で同じ境遇にある人たちを力づけたい。」

 

 

たとえ厳しい現実に直面したとしても、逃げずにしっかりと向き合うことで新たなスタートラインに立てることもあります。いや、人生にはこのような辛い日々があってこそ、いろんなことが見えてくるものなのです。

塩見さんにとっても、この2年間は必要不可欠なものだったに違いありません。もう一度ひたむきに生きていくために…

 

 

 

塩見三省さんのプロフィール

本名:塩見三省 (しおみ さんせい)

生年月日:1948年1月12日

出身地:京都府

出身大学:同志社大

身長:177cm

お世話になった人:岸田今日子さん

 

 


最終更新日:2017/11/30