8割の人が損をする「株式投資」と「心理学」の関係
「この株、絶対に上がると思っていたのに!」
株価の動きに一喜一憂する投資家の心理(恐れ、欲望、願望)や人が無意識のうちに陥ってしまっている思い込みを知れば、あなたは2割の勝者になれるかもしれないのです。
投資をしていると、「あの時どうしてあんなことをしてしまったんだろう?」と悔いてしまうことがあります。後で振り返ってみて、「どうしていつまでも上がらない株を持ち続けていたんだろう?」と思うこともしばしばなのです。
このような投資失敗の背景には、必ず人間の心理が絡んでいます。
1 プロスペクト理論
「プロスペクト理論」は、行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授らによって提唱された理論で、不確実性下の意思決定において人間の心理がどのように働くのかを論じたものです。
この理論を投資に当てはめてみると、儲けたときの満足感と損したときの不快感を比較した場合、不快感のほうが大きく感じられるということになります。
例えば、利益を得たい心理が働く一方で損失リスクを避ける心理が働き、それがかえって大きなリスクを背負うことに繋がる現象が起こるとしましょう。
具体的には、株価が下落したときに、何の根拠もないのに損失が確定してしまうことへの抵抗感からその株を塩漬けにしたり、ほんの少し株価が上がっただけで (下落による利益の目減りを恐れて) すぐに利益確定売りしてしまう、といったようなケースがこれに該当します。
この理論をもう少し簡単に説明してみましょう。
(二択の質問が2つあります。それぞれ1つ選んでみてください。)
C. 無条件で100万円分の借金が無くなる
D. コインを投げて表が出たら200万円借金が無くなる、裏ならなくならない
2 アンカリング効果
まず、「アンカー」とは船の漂流を防止する「いかり」を意味します。つまり、アンカリング効果とは、過去の値段から現在の値段がどのような状態なのかを判断し、投資の材料にしてしまうこと、判断の際に自分が知っている物事や数字にこだわってしまう傾向のことなのです。
ちなみに、投資手法の一種であるテクニカル分析では、このアンカリング効果がよく使われます。多くの投資家がこうなると思った通り行動し相場が動くことを前提にテクニカル指標は作成されているのです。
しかし、多くの投資家が想定し同じような行動をする場面で、その想定を大きく超える売り需要、買い需要が実際に発生しているようなときは、アンカリング効果が全く効かず、相場は一人歩きをしていきます。
3 認知バイアス・追認バイアス
バイアスとは「判断の偏り」のこと。
まず、「認知バイアス」とは現実を直視できなくなる心の動きのことです。その中でも、常に正常な判断が求められる投資に悪影響を及ぼすのが「正常性バイアス」と「自信過剰バイアス」と呼ばれる2つの心の動き!
「正常性バイアス」とは、現実を過小評価し、自分の認めたくない情報を無視することによって「まだまだ大丈夫」とか「自分だけは大丈夫」などと考えることです。投資の世界でこれが働くと、損切りのタイミングを失うことに繋がり兼ねません。
「自信過剰バイアス」とは、根拠もないのに自分の能力や判断に自信を持ってしまうこと。投資の場面では、成功体験ばかりが記憶に残り、「自分には特別な才能がある」などと思い込んでいるような状態がこれに該当します。
そして、明確な投資方針を持っていない投資家によく見られるのが追認バイアスです。
ちなみに、この追認バイアスは誰にでもあります。投資においては、どれだけバイアスを排除できるかが勝負になるのです。
4 所有効果
名前の通り、持っているだけでその株式に愛着が湧いてしまう現象です。そこから、何のプラス材料もないのに「上がるだろう」と勝手に期待の感情が膨らんでしまうのです。
ところがこの「所有効果」には、損失が大きくなっても平気になってしまうという厄介な性質があります。そのため、損失をずるずる引きずったり、安くなればお買い得と言わんばかりに再び買ってしまうのです。
5 フォン・レストルフ効果
人の記憶には、好みとは関係なく「印象深いもの」や「目立つもの」が残りやすいものです。これを、最初の発見者である心理学者で小児科医のヘドウィク・フォン・レストルフにちなんで「フォン・レストルフ効果」と呼んでいます。
株式投資では、新規のIPO銘柄や最近大きな値動きを見せている銘柄など、大きな話題となった銘柄が記憶に残りやすいものです。そうした記憶が、銘柄の正しい選択判断を誤らせてしまっていないかどうか、十分な注意を払っておく必要があるのです。
6 ギャンブラーの誤謬(ごびゅう)
誤謬とは、簡単にいうと間違い、勘違いという意味です。コインを適当に投げたとして、表が5回連続で続いた場合、次に出るは裏だと考えてしまう。このような傾向をギャンブラーの誤謬といいます。
株に置き換えると、「株は上げ下げを繰り返しながら動くもの」という考え方がある投資家の多くは、上昇が連発している銘柄に対しては「そろそろ下げだ」と判断してしまうことが多いのです。
しかし、その思い込みは株式投資の世界では危険なこと。そのような思い込みは投資家個人の経験や勘によるものがほとんどなのです。
統計的に「下げが有利」などということはなく、上昇が3日続いたとしても、次に日に上がるか下がるかの確率は2分の1なのです。
相場を動かしているのは人間の心理です!
そのため、相場は理論通りにはいかず、人間の心理状態が優先され、本来あるべき株価からかけ離れているのが普通です。いずれ本来あるべき株価に近づいていくとしても、人間心理を考慮に入れず投資を行ってしまうと思わぬところで痛い目をみてしまいます。
今回紹介した6つの「投資心理学」以外にも、人の心には様々な「心理的な罠」が潜んでいるものです。
人間の心の動きにはクセがある!
それらを把握しておくことで、投資の際に冷静な判断ができるよう自身をコントロールすることができるのではないでしょうか。「投資家が持ちやすい心理」と「投資行動」をあなたの投資に是非活用してみてくださいね。