歯周病とは、歯と歯ぐきの間に繁殖する細菌に感染して歯の周りに炎症が起きる病気 (炎症性疾患) のことです。炎症が歯ぐきに限定されているときを歯肉炎、それ以上に進行したときを歯周炎 (歯槽膿漏) といいます。ほぼ自覚症状がないまま進行し、「歯が抜け落ちたり」「全身に悪影響を及ばす」場合もあります。歯と歯肉の境目 (歯肉溝) の歯磨き (清掃) を怠っている、あるいは丁寧さが足りないと、そこに多くの細菌が溜まり (歯垢の蓄積)、歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり腫れたりします。
厄介なことにほとんどの場合痛みがないため、進行が進んでしまいます。その結果、「歯周ポケット」と呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなってしまい、歯を支える土台 (歯槽骨) が溶けてしまい、最後は抜歯をしなければならなくなるのです。
歯は、「歯冠」と呼ばれる外から見える部分と歯茎 (歯肉) の内部に隠れる「歯根部」で構成されています。
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「歯冠」の表面はエナメル質 (固い組織) に守られています。「歯根部」は象牙質やセメント質から成り、その内部には歯髄 (神経や血管が入っており象牙質に栄養を供給する役割を担う) があります。
歯の周りを取り囲む粘膜は歯茎です。歯茎の中には歯槽骨と呼ばれる骨があって歯を支えています。さらに歯と歯茎の境目には歯根膜があってクッションの役割を果たしています。健康な歯茎であれば、歯との間にほとんどすき間がなく、内部に細菌が入り込むのを防いでくれるのですが・・・
思いあたる症状をチェックしてみましょう!
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🔴 朝起きたときに口の中がネバネバする
🔵 口臭が気になる
🔴 歯磨き時に出血する
🔵 歯茎が赤く腫れている
🔴 固い物を噛みにくい
🔵 歯が長くなった気がする
🔴 歯と歯の間に隙間ができてきた
🔵 食べ物が挟まる
複数当てはまるようであれば要注意です。
歯周病の原因は様々です。
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お口の中には300~500種もの細菌が住んでいます。普段はあまり悪いことをしませんが、ブラッシングが不十分だったり糖を過剰に摂取したりすると細菌がネバネバ物質を作り出し、歯の表面にくっつきます。この正体は歯垢 (プラーク) なのですが、この粘着性は強く、うがいをしたくらいでは落ちません。このプラークの中に信じられないくらいの多細菌が住み憑いており、虫歯や歯周病を引き起こすのです。歯肉に炎症を引き起こし、やがては歯を支えている骨を溶かしていくのです。また、以下も歯周病を進行させる因子となり得ます。
- 歯ぎしり、くいしばり、噛みしめ
- 不適合な義歯
- 不規則な食習慣
- 喫煙
- ストレス
- 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモン異常)
- 薬の長期服用
歯周病は子供から大人まで多くの人が罹っています。特に中年期以降は「加齢」により歯茎が痩せてきますし免疫力が低下するため、より一層歯周病になりやすくなります。
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歯周病は口の中だけの病気…ではありません。初期のうちは痛みなどの自覚症状がないため気付きにくいのですが、そのまま何もしないで放置していると徐々に症状が重くなっていきます。硬い物を食べづらくなったり、歯の揺れが気になったり、歯茎がパンパンに腫れたりし始めます。ここまでくると、骨は確実に溶けています。「歯が長く伸びてきたな」と感じたら間違いありません。
その後も放置し続けてしまうと、ある日突然歯が抜け落ちてしまいます。こうなってしまった時には既に手遅れ。全ての歯で歯周病が進行していると考えて間違いないでしょう。骨が溶けてなくなってしまう前に、早めに歯科医院にかかってください。
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🔴 歯周病が影響を及ぼすといわれている主な疾患
疾患 | 歯周病との関連 |
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糖尿病 | 糖尿病を患っている人は健康な人よりも歯周病にかかるリスクが高く、また、糖尿病を悪化させる可能性があります。 |
冠動脈心疾患 | 歯周病による炎症が動脈硬化を進行させる可能性があります。また、歯周病菌が心臓に運ばれて細菌性心内膜炎の原因になる場合もあります。 |
誤嚥性肺炎 | 飲食物を飲み込むときに誤って食道ではなく気管から肺に入ってしまうことがあります。このとき歯周病菌が一緒に肺に入り込み感染することで肺炎を起こすことがあります。 |
早期低体重児出産 | 血液中に入った歯周病菌が胎盤を刺激して、胎児の成長に悪影響を与える場合もあります。 |
肺炎や早産などにもお気をつけください。
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🔴 歯周病には必ず罹るの?
必ず…ではありません。日頃の歯磨きで、プラークや歯石を除去することで予防することができます。予防できない歯周病もありますが、それは遺伝性の病気など非常に特殊なケースです。
🔴 他の病気が原因で歯周病になることは?
あります。遺伝性の病気、血液の病気(白血病など)、皮膚の病気、降圧剤を含めた特定の薬などによって歯周病になることがあります。また、ホルモン分泌の増減、糖尿病、喫煙などによって歯周病が治癒しにくくなるとも言われています。
🔴 歯周病に罹りやすさはあるの?
あります。「口の中の状態」と「全身状態」によります。前者は歯並びや歯周病菌の種類や粘膜の形が影響しますし、後者は生活習慣(喫煙など)やそれに関する病気(糖尿病など)、遺伝的影響など、色々な要素が関わって歯周病にかかりやすくなるのです。
また、「遺伝子」「免疫」「炎症反応の具合」などによっても歯周病の罹りやすさに違いがあるようです。さらに、女性の場合は「妊娠」や「閉経前後」のタイミングに気をつけましょう。
🔴 口呼吸は良くない?
はい。口呼吸で口内が乾きやすくなり、プラークが溜まりやすくなります。
歯周病の多くは、原因である「プラーク」「歯石」を日頃の歯磨きや定期的な歯科検診などで除去することで予防することができます。 中には予防できない遺伝性のものもありますが、通常は予防可能です。 そして、かつては「不治の病」だった歯周病も、今では進行を阻止し健康を取り戻すことが可能になってきました。とはいえ、基本は「歯垢を増やさないこと」です。そのためには・・・
- 正しい歯磨きをしましょう。
- 歯石を完全に取り除き、炎症を引き起こす細菌を徹底的に除去しましょう。
- 傷んだ歯肉・骨を治療して健康に近い歯肉にしましょう。
- 専門的なメインテナンスを定期的に受けましょう。
歯垢 (プラーク) は取り除かなければ硬くなってしまいます。やがては歯石と呼ばれる物質に変化して、歯の表面に強固に付着するのです。 これはブラッシングだけでは取り除くことができません。歯が十分に磨けていないとプラークという細菌の集まりが歯と歯ぐきの間の溝に溜まるのですが、歯石になってしまうと自分の力ではどうしようもありません。クリニックで適切に除去してもらいましょう。
最後に、ストレスや喫煙などの生活習慣や糖尿病などの病気によって免疫機能が落ちていると病気は進行しやすくなることをお忘れなく。