子宮内膜症の疑問 Q & A
子宮内膜症は、生殖年齢 (20〜40代) 女性のおよそ10%に発生し、月経痛をはじめとする疼痛や不妊などを主症状とする疾患のこと。本来は子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜が、子宮以外の場所 (骨盤内や卵巣など) に存在し増殖する病気なんです。
1. 子宮内膜症を発症すると「不妊」のリスクも出てきますが、早期発見 & 適切な治療を行うことで病状は改善します。
2. 原因ははっきり解明されていませんが、治療は手術と薬物投与で行われます。再発のリスクはありますが、悪化する前に早期に治療すれば、妊娠できる可能性はあると考えられています。
3. 「月経痛がひどくなる」「経血量が増える」「腹痛」「便秘」など子宮内膜症の症状に当てはまったら早めに病院を受診することが大事です。
以上のことを踏まえた上で、いくつか疑問に答えていきたいと思います ↓
なぜ子宮内膜症は増えているの?
はっきりとした原因は解明されていませんが、子宮内膜症にかかる人が増えている最大の原因は、ライフスタイルの変化による月経回数の増加…と考えられています。
「初経年齢が早くなった」「晩婚・晩産化」「子どもを産まない選択をする人が増えた」ことなどで、一生のうちに経験する月経回数が昔に比べ約10倍にも増えているのです。
どうやら、月経回数が増えたことで子宮内膜症のリスクが高まっているようです。
早期発見のポイントは?
自覚症状で最も多いのは月経痛!中には、「鎮痛剤が効かない」「毎度寝込んでしまう」という方も。。。病気の進行に伴い、腰痛・下腹痛・性交痛・排便痛などの訴えも多くみられます。
というわけで、以前よりも月経がつらくなったと感じたり、お母さんや姉妹が子宮内膜症を患ったことがあれば、なるべく早めに婦人科を受診したほうがよいでしょう。
子宮内膜症が発生しやすい部位は?
子宮内膜症ができやすい場所は、腹膜・卵巣・卵管・子宮と直腸の間のくぼみ(ダグラス窩)などです。
ちなみに卵巣にできたものは「卵巣チョコレート嚢胞 (のうほう)」と呼ばれています。
チョコレート嚢胞ってどんな病気?
子宮内膜症の一種として、卵巣内にチョコレート色の古い血液が溜まる場合があります ((初経から閉経までの女性に発症の可能性あり)。
原因はまだ明らかにされていませんが、この「卵巣チョコレート嚢胞 (のうほう)」があると「痛み」や「不妊」、まれにがん化することがありますので、必ず定期検査を受けるようにしましょう。
(ガンの発生率は0.7%程度ですが、40才以上の方や若くてもチョコレート嚢胞が10cm以上の場合は特に注意しましょう)
子宮内膜症は不妊になるの?
不妊は子宮内膜症の症状の一つですし、患者の30~50%が不妊を合併しているとも言われていますが、必ず不妊になるわけではありません。子宮内膜症であっても、自然に妊娠・出産する方は多くいらっしゃいます。
治療方法は?
治療は、鼻から吸入する薬・注射・飲み薬・手術などありますが、薬や注射による治療は4~6ヶ月続ける必要があります。治療法の選択は、症状や年齢をはじめ、自身のライフプランによって異なってきます。
妊娠・出産を希望するか、希望する場合はいつ頃か…といったことが大きなポイントになります。
子宮内膜症が不妊症の原因となる場合は、卵巣や卵管などの病状が原因である場合が多いので、薬や手術でそれらの病状を軽減させて妊娠しやすい環境を作ります。
手術は、内視鏡を使ってお腹を切らずにできるようになっていますし、治療法は個々の状況に応じて選択されますので、まずは産婦人科の医師に相談してみることを強くオススメします。
子宮内膜症の治療目的は以下の3つ!どれを優先するかによって治療法が決定されます。
① 痛みの緩和
鎮痛剤などの対症療法を試み、それでもコントロールできない場合はホルモン療法を行います。
② 妊娠率を向上させる
対症療法で痛みを抑えながら妊娠を目指します。
③ 卵巣チョコレート嚢胞のガン化を防ぐ
嚢胞が4cm以下の場合は対症療法あるいはホルモン療法で症状をコントロールし経過をみていきます。10cm以上の場合は基本的に手術療法を選択します (5~9cmの場合は嚢胞の状態や年齢によって異なります)。
いずれにしても医師とよく相談して治療法を決めていくことになります。
治療服薬中に出血した時は?
黄体ホルモン製剤やEP配合薬、低用量ピルなどの内分泌療法では、通常の月経周期に比べて子宮内膜が厚くならないため、薄くはがれやすい内膜になり、予期しない出血(不正出血)が起こることがあります。
このような場合には、出血の程度や日数をメモするなどして医師に相談しましょう。
子宮内膜症は再発しやすい?
子宮内膜症は再発を繰り返しやすく、根治手術(卵巣や子宮ごと病巣をとり除く)を受ける以外は閉経まで長くつきあっていかざるを得ない病気です。ですが、たとえ再発したとしても、病気の進行を抑えながら治療していくことは可能です (中には自然に症状が改善する人もいます)。
おわりに
子宮内膜症の症状は様々で、程度も人それぞれです。中には、何の自覚症状もないのに他の手術のときにたまたま見つかったという人もいます。そんなわけで、定期的に婦人科検診を受けることは大事です。
最後に、子宮内膜症は良性の病気ですからそれ自体で命に関わることはありません。症状のコントロールをしながら、閉経までの間、気長に付き合っていきましょう。