亡くなる前の「お迎え現象」とせん妄は違うのか?

 

国民的人気ピアニストとして活躍し、機知に富んだ文筆活動でも知られた中村紘子さんが2016年夏、大腸がんのため亡くなりました (享年72歳)。

 

天才少女として評判となり、1959年、「音楽コンクール」(現・日本音楽コンクール)では史上最年少で第1位特賞。アメリカ留学の後、1965年にはショパン国際ピアノコンクールで日本人初の第4位に入賞し、名声を確立していったのです。

そんな中村さんは晩年、がんとの闘病生活が続いていたのですが、最後まで演奏活動への復帰に執念を見せていたそうです。

 

夫で作家の庄司薫さん(79)は

「何より本人があまりにも早い死にびっくりしているでしょう。紘子は最期まで美しく賢いピアニストでした」

と、妻の遺骨を前に悲しみをこらえながら語ってくれています。

 

亡くなる数日前、自身の誕生日ということもあり2人は「病院はつまらない…」と愛犬のミニチュアダックスフントが待つ自宅で最期までの時を過ごしました。

夫からイヤリングを贈られ笑顔の中村さん。「モーツァルトからラフマニノフまで、音色に新しい輝きを与える奏法を試したい」と語っていたそうなのですが、翌日、夫らに看取られて旅立っていきました。

 

ピアニスト中村紘子さん死去
 
 

 

 

 亡くなる前の「お迎え現象」 

 

  家族や知り合いが亡くなる前、誰もいないのに誰かと会話をしている様子を見たことはないでしょうか?これは「お迎え現象」と呼ばれるもので、送られる人にも送る人にも意義のあることなのです。

 
例えば、東京にお住まいのA子さん(60)は、87歳の母親を看取った時、ある不思議な現象を目撃したといいます。

「母は歌が大好きでよく歌っていたんですが、少しずつ体力が落ち、次第にあまりしゃべらなくなっていきました。ところが、亡くなる3週間ほど前から、誰もいないはずの部屋で手ぶりを交えて言葉にならない声を発するようになったのです。」

 
A子さんらが部屋に入ると、動きはピタリと止まります。「母さん、誰とお話ししていたの?」と尋ねても答えてはくれません。

「ただ、後から考えてみると、母は父の遺影を見て会話をしていたようでした。お迎えが来ていたのかもしれません」

 
A子さんは数年前、その父親が亡くなった時にも「お迎え現象」を経験していました。亡くなる3週間ほど前、父親は、「1歳で亡くなった長男が自宅に来ている」とはっきりした口調でつぶやいていたのです。

その時は「亡くなった人が来るわけないじゃない」と信じてはいなかったのですが…

 
 

 
 

 「お迎え現象」はどのくらいの人に起きているのか? 

A子さんは、知り合いの住職から「お迎えが来ていたんだね」と教わり、「父も母も家族とともにあの世に逝ったと考えると気持ちが楽になります」ととても柔らかい表情で答えてくれました。

 

ところで、その「お迎え現象」はいったいどのくらいの人に起きていると思いますか?

 

ご自宅で家族を看取った遺族を対象に実施したある調査では、 約4割の人が「お迎え現象があった」と答えています。

おそらく、病院や老人施設で亡くなる方々にも同様の「お迎え現象」は起きているはずなのですが、『話すと変だと思われる』意識が働くのか、入院患者さんからそういう話を聞くことはあまりないようです。

 

亡くなる前の「お迎え現象」とせん妄は違うのか?

 
 

 
 

 「お迎え現象」とせん妄は違うのか? 

末期がんや認知症などを患って全身の状態が悪くなると、しばしば「せん妄」と呼ばれる意識障害を引き起こすケースがあります。

 

「お迎え現象」とせん妄は違うのでしょうか?

 

非科学的な現象なので、完全に断言することはできませんが、2つは明らかに違うものだと考えられています。せん妄の場合は、恐怖におびえて苦痛を伴い、話す内容も混乱しています。
 
一方、お迎えの場合は、患者さんの意識ははっきりしていてストーリーもきちんとしています。

 

B男さんは昨年父親を亡くしました。その際、父親にお迎えが来たようだったといいます。どうやら高校時代のサッカー部の仲間たち数人。。。そこでBさんは、父親に真っ赤なユニホームを着せて送り出してあげたそうです。

 

 

 
 

 お迎え現象が果たす役割について 

多くの人は「死」に対して不安や恐怖を抱いています。しかしもしも、自分の大切な人やペットなどがお迎えに来てくれるとしたらどうでしょう?

少しは「死」への恐怖心が和らぐのではないでしょうか。また、送る人にとっても、「あちらの世界でも楽しくやってくれているに違いない」と思え、気持ちが救われる部分があるのではないでしょうか。

 

死ぬ前に故人と会うことができ、恐怖心を和げることのできる「お迎え現象」は、本人にとっても看取る人にとっても気持ちが楽になる」素敵なものなんです。

最後まで復帰を夢抱いていた中村紘子さん。きっと最期は「お迎え現象」を感じ、不安なく旅立っていくことができたのではないでしょうか。

 

心より御冥福をお祈り申し上げます。

 

 

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