「奇怪な事件=発達障害のせい」…ではありません
強姦致傷容疑で逮捕された高畑裕太容疑者(22)の事件を受け記者会見を開いた母の高畑淳子さん(61)は、年内は予定通り女優業を続けるものの、その後は休業する考えもあるようです。
「(息子の) 危なっかしさは感じていました」と語る母の沈痛な面持ちは、世間の皆さんに改めて子育ての難しさを投げかけたのではないでしょうか。
「ここ数年は息子もお姉ちゃん(こと美)も俳優になったので、3人で舞台を観に行き、その帰りにお店に行って飲んで芝居の話をするのが楽しい。3人一緒に同じシーンを見ても、反応はそれぞれ違うんです。私は無言でジーッと見ているのに、お姉ちゃんは泣いていて、息子はゲラゲラ笑っていたりする。この違いが面白いですよね」
大変な反抗期を経て、成人した子供たちと一緒に舞台鑑賞やお酒を楽しむ仲睦まじき親子。
それが一転、まさかの息子の不祥事…
残念でなりません。
高畑さんは母親の介護を抱えていました。大好きなお酒を飲んで気晴らしもできないくらい、しんどい日々を送っていたのです。
「母は今、老人ホームに入っているんですけど、なんだかんだとお呼びがかかる。車で駆けつけないといけない時も多いため飲めないんです。今、京都でドラマ(「女たちの特捜最前線」)を撮っていて、これまでなら新幹線の車窓を眺めながら飲んでいたんですけど、今はそれもできない」
そんな大変は時に起こってしまった息子の不祥事…
災難は一度に降りかかると言いますが、今の高畑さんはまさにその状況にあるのです。
社会に強い衝撃を与えた「高畑裕太 強姦致傷事件」ですが、巷には、このあまりに理解しがたい事件をなんとか理解しようと、「発達障害」というキーワードが飛び交っているようです。
しかし、強姦致傷は重大な事件であり、安易に憶測だけで語られるべきものではありません。まして、「発達障害」は多くの方がその症状に悩み苦しみながらも、何とか折り合いをつけながら、自分らしい社会生活を送っているのですから。
「発達障害」と一口にいっても、その症状は様々なんです。誤解や偏見を呼ぶような報道や発信はどうか控えて頂きたい。
この事件、お母様が有名女優であり、テレビなどでよく息子さんのことを、「子供の頃から変わっていた」と話していたことから、このような心無い発信を生んでしまったのでしょう。
だからといって、「発達障害」がこの事件の原因となるかどうかはまだ何も分かっていないのです。
2016年7月に相模原の知的障害者施設「やまゆり園」で発生した殺傷事件では、「大麻」や「措置入院」という言葉が何度もキーワードとして取り上げられました。
このような不可解な事件では、原因は一つに絞られるものではありません。様々な要因が折り重なっていると考えるのが妥当だと思うのです。
どうやら人間は、自分の思考の中で理解不能な出来事に出合うと、すぐに落としどころを見つけようとし、理解できる原因を探し出そうとする生き物のようです。
今回の高畑容疑者の場合、事件前は「空気が読めない」行動をテレビ局が面白がり、それを「大物」とあおっていました。
「少々変わっている親子」「個性的」とも受け止め、様々な番組で面白おかしく報道してきていたのです。
ところが一転、事件が起こると今度は手のひらを返したように、「変だと思っていた」「発達障害なのでは?」と攻撃の手を緩めることはないのです。
今まで好意的に取り上げていたものを (事件の) 原因と結びつけるお粗末なマスコミの報道。ネット上に渦巻く偏見の増長。
こういった発想こそが、社会から偏見と差別がなくならない原因だと思うのです。
一方で…
安易な原因探しの後は、「なんでも病気のせいにするな!」という批判が始まります。こうして、いつものように日本の再犯防止策は改善されることなく停滞し続けるだけなのです。
なぜ誰も、「原因は一つではなく様々な要因があり、もしかしたらその要因の一つに『発達障害』があるかもしれない」と展開していかないのでしょうか?
「発達障害」の可能性があるのであれば、必要な診断を受け、適切な支援に繋げていくことこそが、本人のためでもあり一番の再犯防止策でもあるというのに…
犯罪を犯した者に対して支援を与えていくことは、けっして罪を逃れさせるためのものでも「言い訳」でもありません。むしろ、罪を償った上で必要な支援に繋げていくことこそが、真の再犯防止策となり得るはずなのです。
「罪を償うこと」と「必要な支援を与えること」はけっして相反するものではなく、同じ方向を向いているものなのです。
みなさん
どうか「奇怪な事件 = 発達障害のせいだ」と安易に結論付けて済ませるのではなく、事件には様々な要因が絡んでいるということを正しく認識し、
差別や偏見をなくしていきますよう、ご理解、ご協力の程よろしくお願いします。