宗教には、仏教・キリスト教・イスラム教・ヒンドゥー教など、本当にたくさんの種類があります。加えて宗教は、「教義」によって宗派が分かれているのでとても複雑なんです。
日本の仏教は13宗56派に分かれています (人によっては18宗と唱える人も)。ここでは、煩雑さを避けるため56派の違いは省略し、13宗の違いについてのみ説明していきたいと思います。
まずはじめに、各宗派はそれぞれに異なる開祖を持ち、異なる教義を持つ…ということを覚えておきましょう。
13宗は法相宗、律宗、華厳宗、真言宗、天台宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、 時宗、曹洞宗、臨済宗、黄檗宗です。
このうち、法相宗、律宗、華厳宗は奈良仏教に属します。奈良仏教とは、552年の仏教伝来以来「国家」が取り入れてきた学問仏教です。有名寺院は多いものの、檀家はいません。
その後、平安時代になると個人救済が意識されはじめ、国家仏教から救済宗教へと転換していきます。最澄は天台宗、空海は真言宗を立て、その意義を明らかにしていきます。
さらにその後、困難と苦渋に満ちた鎌倉期には多くの宗教的天才たち (良忍、法然、親鸞、栄西、道元、日蓮、一遍など) が現れ、本格的な救済仏教がどんどん広まっていきます。
大まかにはこのような流れで、(江戸期に請来された黄檗宗を除き) 今日に続く仏教宗派は平安・鎌倉仏教の系統に属するわけです。
ほとけさまの教えを書き記したものを経典といいます。とはいっても、仏教を起こしたお釈迦さまが書いたものではなく、お釈迦さまが亡くなったあと数百年をかけて、のちの弟子たちによって経典化されたのです。
経典にはいろいろな種類があり、その内容も少しずつ異なっています。そして、よりどころにする経典や解釈の違いによって様々な宗派が生み出されてきたのです。
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奈良仏教系
玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)の弟子・慈恩大師(じおんだいし)が開祖とされており、唐に留学した道昭らが日本に広めました。大本山は興福寺、薬師寺です。
「唯識 (ゆいしき) 三年 倶舎 (くしゃ) 八年」という難解な思想を持っています。ちなみに唯識とは大乗仏教の根幹をなす思想の一つで、世の中をモノの世界と心の世界に分け、モノは心によって認識されると考えます。
一方、倶舎は容れ物の意味で、例えば阿毘達磨倶舎論は「阿毘達磨の教えと理論がすべて含まれている論書」ということになります。内容は、現実世界のことから宇宙の構造、輪廻、煩悩、悟りに至る段階などについて説明されています。
無常のこの世で、迷える自分自身の心を深く究明してゆくことを目的としています。この法相宗の考えは、密教のような即身成仏ではなく、長い時間をかけて修行を重ねていくことで成仏すると考えます。
「ひたすら念仏や題目を唱える」「坐禅をする」といった、ひとつの行に専念するのではなく、様々な行を勧めています。
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奈良仏教系
お経には次の3つがあります。
- 経・・・お釈迦様の教えをまとめたもの
- 律・・・戒律 (規則)
- 論・・・経と律に関する解説
経、律、論を三蔵と呼びます。
この三蔵に精通している僧侶を三蔵法師といいます。敬称のひとつです。孫悟空の西遊記に登場する三蔵法師は玄奘 (げんじょう) 三蔵法師といいます。
余談はさておき、
本来、中心となるのは「経」の部分なのですが、律宗では律の部分を大事にしています。唐の高僧・鑑真(がんじん)によって伝えられた仏教の戒律を学ぶ宗派なのです。
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奈良仏教系
736年に道璿(どうせん)が唐より伝えたもの。「華厳経」を経典とし、毘盧遮那(びるしゃな)仏を物事の根源ととらえています。大本山は東大寺で、奈良の大仏はこの教義を具現化したものです。
「一がそのまま多であり、多がそのまま一である」という相反するものを一つに統括しようとする考え方を持ちます。哲学的かつ宇宙的でもあります。本尊は毘盧舎那仏(びるしゃなぶつ)という太陽のように光明を放つ仏で、この光明によって迷える人々を浄土の華厳世界に導くと考えています。
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密教系
真言宗は大日如来を本尊とする宗派で、大日経と金剛頂経を主な経典として扱っています。開祖は804年に唐に渡って密教を学び、多くの法典、法具、技術書を持って帰国した空海で、日本で唯一の純粋な密教です。
密教は教えを修めた限られた人たちの間でのみ信仰が許されるとしているもので、真言宗では他の宗派は全て真言密教の一部であるとし、密教に至るための過程という位置づけをしています。
真言宗では、十住心思想といって、人の心のあり方、価値観、宗教などを10段階に分け、最終段階は大日如来と同じレベルに達すると説きます。大日如来がすべての根本であり、万物は大日如来と深い関わり合いを持っていると考えています。
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密教系
天台宗は特に定められた本尊がない宗派で、法華経を主な経典として扱っています。どの宗派とも違いが少ないのが天台宗の特徴の一つです。この天台を学んだ人が宗祖になる傾向があるようです。開祖は804年に唐に渡り天台教学を学んだ最澄で、円・密・禅・戒の全てを大切にしています(四宗融合)。
修行も、四種三昧といって四通りの方法があります。教典は法華経が中心ですが、朝に法華経、夕方に阿弥陀経を学びます。総本山は比叡山延暦寺。
真言宗と天台宗では密教の取り扱い方が異なり、真言宗の密教は東密(とうみつ)、天台宗の密教は台密(たいみつ)と呼ばれています。天台宗では顕密一致といって密教と顕教を同格に扱っています。
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日蓮系
日蓮宗は釈迦を本尊とする宗派で、法華経を主な経典として扱っています。開祖は鎌倉時代、比叡山に仏教を学んだ日蓮で、自身の名前がそのまま宗派の名前になっています。日蓮宗の場合、主な経典が法華経というよりも、法華経以外の経典はまず利用されません。完全な法華経中心の教義です。
江戸時代までは法華宗または日蓮法華宗といいました。現在でも法華宗を名乗る一派もあります。法華経中心を徹底し、法華経と人の生き方を一体化させようとします。南無妙法蓮華経の7文字に法華経の功徳がすべて込められています。
日蓮が学んだ天台宗も法華経を中心にすえていますが、天台宗は多面性を持ち、法華経とは哲学的な関わり方をしています。日蓮は、法華経を “身体で読んだ” とも言われています。
日蓮宗の葬儀では、死者を霊山浄土に導くことを目的としています。そのため、南無妙法蓮華経を中心に、様々な仏や菩薩などの名前が書かれた十界曼荼羅(じっかいまんだら)を本尊に掲げます。
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浄土系
浄土宗は阿弥陀如来を本尊とする宗派で、浄土三部経のひとつである観無量寿経(じゅきょう)を主な経典として扱っています。開祖は天台宗に仏教を学んだ法然で、念仏を唱えることで極楽浄土に至れるとして1175年に開きました。
法然は修行による成仏を否定し、修行の価値を認めていません。人はただ「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることで極楽往生するとし、成仏と往生は区別して考えています。そして、極楽往生の後、極楽浄土で修行し成仏すると考えられています。
浄土宗の葬儀では、僧侶と参列者が一緒に念仏を唱えるという「念仏一会」が特徴的です。焼香は押しいただいて1~3回行います。(押しいただく:抹香を額の高さまで掲げること)
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浄土系
浄土真宗は阿弥陀如来を本尊とする宗派で、浄土三部経のひとつである無量寿経(むりょうじゅきょう)を主な経典として扱っています。開祖は法然の弟子であった親鸞(しんらん)で、浄土宗と同じく修行による成仏は否定しています。
浄土宗と基本的な部分は同じですが、浄土宗では念仏を唱えるのに対して、浄土真宗では心に思いさえすれば成仏できるとしています。 法然の専修念仏を承け継ぎ、さらに深めました。人が求めなくても仏が救って下さるという考え(他力回向の理論)です。
いずれ仏になることが約束されており、改めて修行する必要はなく、「阿弥陀様が救って下さる」と信じることで往生できると考えるのです。救い主は阿弥陀様のみ。
阿弥陀様が人の苦悩をじっと見てはいられないことを表わすため、坐像ではなく立像となっています。戒律はそれほど厳しくなく、最初に肉食妻帯を許可したのも浄土真宗です。
室町時代には蓮如が出て教勢は飛躍的に発展。1602年、徳川家康によって東西本願寺の分派が企てられ、今日では10派に分かれています。本願寺派の本山は西本願寺、大谷派の本山は東本願寺。
「他力本願」「往生即身仏」という考え方であるため、葬儀では授戒と引導を行いません。焼香は押しいただかず、1回だけ行います。
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浄土系
1117年、天台宗の僧侶であった良忍が開きます。念仏を口に出して唱えることに重きを置きました。総本山は大念佛寺。
「一人の祈りがすべての人のためになり、すべての人の祈りが自分のためになっている」と考えます。毎日百遍の念仏を唱えること(日課念仏)が修行の根幹です。阿弥陀様の存在の仕方が他の浄土系とは異なり、密教系の大日如来的な存在となっています。教典は華厳経と法華経が中心。
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浄土系
時宗は阿弥陀如来を本尊とする宗派で、浄土三部経のひとつである阿弥陀経(あみだきょう)を主な経典として扱っています。開祖は法然の流れをくむ一遍(いっぺん)で、阿弥陀仏への信心に関わらず念仏を唱えれば往生できるとしています。
念仏を唱える時は、唱える心構えやその結果がどうなるか、といったことを心配する必要はありません。ただ心のままに、何も期待せずに念仏を唱えることを説きます。
日々の生活の中で一瞬一瞬を臨終と考え、念仏を唱えて往生するのではなく、念仏すなわち往生という考えに基づいています。時宗の大きな特徴として、踊念仏(おどりねんぶつ)があります。これは太鼓や鉦などを打ち鳴らし、踊りながら念仏を唱えるというものです。
現在では実演されている地域が少なく、重要無形民俗文化財に指定されています。時宗の葬儀は、浄土宗に倣います。焼香の作法は特に定められていません。
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禅系
臨済宗は特に定められた本尊のない宗派で、特定の経典もありません。開祖は栄西 (密教を学んだ後、宋に渡って禅を深める) で、座禅を悟りに至る手段であるとしています。
教典や教えに依存せず、相手の心に直接働きかけ、その本質を悟らせようとします。あらゆる生命と共存していることに感謝するため、いろんな仏様・神様を祀ります。すべてのものに仏性を見て礼拝します。
1700余りの祖師の言葉を体得することが悟りの基本です。そして、日常の中に真理を具体的なモノとしていくことが求められます。坐禅の座り方は対面形式で行います。
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禅系
曹洞宗は釈迦を本尊とする宗派で、特定の経典はありません。開祖は栄西開基の建仁寺で禅を学んだ道元で、臨済宗と同じく座禅を中心とした禅宗のひとつです。
坐禅を修行の基本として、修行の威儀作法を重視します。悟りを求めない修行によって悟りが得られると考え、悟りを目的とする修行は打算的であり打算的な悟りを生むと考えています。
般若心経」などを経典とし、只管打坐(しかんたざ/ただひたすら坐ること)を深めました。
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禅系
黄檗 (おうばく) 宗の修行形態は臨済宗と同様です。教典は特に定めがありません。江戸時代初期、中国臨済宗の高僧・隠元(いんげん)が日本に招聘(しょうへい)されて開いた禅宗で、坐禅行のほか、念仏禅を特徴としています。
念仏を唱えますが、浄土系とはかなり捕らえ方が異なります。南無阿弥陀仏を「ナムオミトフ」と読み、般若心経は唐音で読むのが特徴です。最近では、他宗と同様に漢音で読むこともあります。
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🔴 神道
神道は日本古来の宗教で、八百万の神という世界的にも珍しい信仰を行っています。本尊に値するものは、それぞれの神社に祀られている神やご神体です。神道では仏教における経典に値する神典というものがありますが、特定の教義を示すものがあるわけではなく、古事記や日本書紀といった書物をもとに祭祀を行います。
神道の葬儀においては、祝詞が奏上されます。焼香は行われませんが、代わりに玉串奉奠(たまぐしほうてん)という儀式があります。
🔵 キリスト教
キリスト教は、世界中で最も信仰されている宗教です。キリスト教は偶像崇拝が禁止されているため、信仰対象である神そのものの偶像はありません。代わりに、救世主であるイエスやその母マリア、あるいはキリスト教で認められた聖人の偶像に祈りを捧げることがあります。
仏教の経典に当たるものとしては旧約聖書と新約聖書があり、葬儀においては聖書の朗読や神父による説教、賛美歌の斉唱などが行われます。神道と同じく焼香は行われず、代わりに献花が行われます。
インドで生まれた仏教は日本に500年中頃に伝わり、聖徳太子が天皇を補佐する摂政になってから広まったと言われています。聖徳太子は法隆寺を建立し、仏教を日本に定着させました。
奈良時代には仏教文化が開花し、聖武天皇が国を守るために「諸国に国分寺・国分尼寺を建立せよ」との詔を出したことで全国にお寺が建立されました。今でも、全国に「国分寺」の地名がその名残をとどめています。都では、東大寺の大仏が建立されています。
平安時代になると、最澄と空海(のちの弘法大師)という2人の偉大な仏教者があらわれ、最澄が開いた天台宗、空海が開いた真言宗が生まれています。
鎌倉時代には親鸞聖人や日蓮聖人など多くの宗祖があらわれ、いくつもの宗派が生まれました。現在、日本に様々な宗派があるのはこのためで、十三宗五十六派あるといわれています。
いかがでしたか?
もっともっと深く知りたい方は、興味のある宗派を深掘りしてみてくださいね。
それでは、最後までお読みくださりありがとうございました。