誰にでも起こり得る便失禁の原因と治療法

 
便失禁とは、排便をうまくコントロールできず、無意識に、あるいは意思に反して便を排泄してしまうことを言います。下痢状や固まった便など、漏れる便の状態や量、漏れ方は様々です。

そして

 

便失禁は高齢者だけに起こるものではありません

 

「便失禁」の悩みを抱えている人は、500万人ほどいると考えられており、65歳以上の約7%はそうだと言われていますが、、、

30〜60代の女性の場合であっても、「便失禁」の症状が現れることはけっして珍しいことではないのです。いや、むしろ、普通であるとも言えます。

 

便漏れを起こしてしまうと「恥ずかしい」という気持ちが先に立ってしまい、誰にも打ち明けられず、ひとり物悲しく悩んでしまいがちになるものです。

しかし、便失禁はきちんと治療することで症状を軽減させることができます。まずは消化器内科や肛門科、泌尿器科、婦人科などを受診してみてください。

 

さて、

便漏れは、症状や原因によっていくつかに分類することができます。何の病気でもそうですが、治療を施すためには「症状」を把握し「原因」を突き止めることが大切です。

 

 

 

 

 便失禁の症状による分類 

症状で見てみると、以下の3つに分類することができます。

 
 

① 漏出性便失禁

便意を感じず、知らないうちに便が漏れる状態です。肛門周辺の括約筋(かつやくきん)や骨盤内臓神経の損傷・機能低下、骨盤底筋群の筋力低下、直腸肛門の感覚の低下などによって起こります。

括約筋は排便に関わる筋肉ですが、もともと自分の意思で動かすことはできません。便失禁の約半数はこの漏出性便失禁だと言われています。

 
 

② 切迫性便失禁

便意は感じるものの、我慢できずに漏れてしまう状態です。括約筋や陰部神経の損傷・低下、直腸に便を溜めておく機能の低下などが原因です。便失禁の約15%が切迫性便失禁と言われています。

 
 

③ 混合性便失禁

①と②の両方が起こる状態を指します。便失禁患者の35%ほどが混合性便失禁であると言われています。

 

便失禁の原因と症状、治療法

 

 

 

 

 便失禁の原因による分類 

原因は以下の通りです。

 
 

① 外傷性便失禁

出産による括約筋の損傷や、肛門・直腸を手術した際の括約筋の損傷、会陰や肛門の外傷などが原因で便失禁を発症します。損傷によっては、直腸に便を溜める機能が低下している場合もあります。

 
 

② 神経性便失禁

脊髄損傷、糖尿病や多発性硬化症などの末梢神経疾患、パーキンソン病や脳血管障害などの中枢神経疾患などが原因で起こる便失禁です。

 
 

③ 突発性便失禁

出産や加齢、括約筋の変性によるもの、または原因がはっきりしない便失禁です。

 
 

④ その他

①〜③以外にも、過敏性腸症候群で便意を過敏に感じたり、直腸脱による肛門括約筋の衰えや肛門括約筋が伸びてしまうことで、うまく機能を果たせなくなってしまっていることがあります。
 
 

便失禁の原因と症状、治療法

 

 

 

 

 便失禁の治療 

便失禁は、複数の原因が重なって生じるケースが多く、人によって原因や症状が異なります。そのため、正しく見極めて適切な治療をすることが大事です。

まずは、便失禁の回数や量、形状、便失禁が起こるタイミングなどの具体的な症状や、病歴・出産の有無などを確認しましょう。

 

その上で、便失禁を治療する方法の一つとして薬物療法があります。

(下痢や軟便を改善する薬剤や、肛門括約筋に働きかける薬剤、便秘症が原因による便失禁のための薬剤などがあります)

 

 

 

 

 便失禁の改善法 

 

治療の一環とも言えるのですが、改善させていく方法として

 

・便の状態を整える食習慣にしていく

・決まった時間の排便習慣を持つ

・衰えている筋力を鍛える運動習慣を身につける

 

といったことが便失禁の改善にとっても有効です。

 

 

 

 

 おわりに 

治療法としては、薬物以外にも例えば「仙骨神経刺激療法」というものがあります。これは、小型の装置をおしりのふくらみに埋め込んで、排便に深く関係している仙骨神経に電気刺激を与える方法です。これにより、肛門括約筋の収縮を促します。

 

他にも、

「バイオフィードバック療法」といったものがあり、肛門の正しい締め方や力の入れ方を訓練したりします。

肛門に栓をして便漏れを防ぐ方法や、大腸に溜まっている便を洗い出す方法も。

 

 

原因や症状は人それぞれで、治療法も一概に皆同じとは言えないのですが、上述したように、まずは消化器内科、肛門科、泌尿器科、婦人科のいずれかを受診し、症状に適した内服を処方してもらってください。

その後、場合によっては (必要に応じて) 肛門機能検査などの専門的な検査ができる病院へと紹介されていくことがあるかもしれません。

 

いずれにしても、糖尿病など他の疾患の合併症である可能性もありますし、心理的・環境的要因によるものかもしれません。

安心した暮らしを取り戻すためにも、恥ずかしがらずきちんと病院へ行くようにしてくださいね。

 

 


最終更新日:2017/11/29