「自分の認知症」は自分でわかるもの?

 

人は、「自分が認知症である」ということを自ら知り得るものなのでしょうか?答えはYesでありNoでもあります。Aさん (80代の現役医師・女性) の場合は前者の方であり、自覚されていたようです。

勤務先とは別の病院に来院し、自らMRIの検査を希望、結果を主治医と一緒に見ています。

 
 

Aさん 「先生、いかがなものでしょう?」

主治医 「側頭葉の内側が少し痩せているようですねー」

Aさん 「やはり、そうですか…」

 

どうやら、以前に比べ、単なる物忘れではないほどに、記憶するのが苦手になっているようです。

 

主治医 「Aさん、あなたの場合、遅延再生に障害があります。つまり記憶しづらい、ということですね」

Aさん 「なるほどね。そうだと思っていました」

主治医「はっきり申し上げますと、アルツハイマー型認知症です」

Aさん 「まあ、ね。まさか自分がそうなるとは思っていかなったわ」

 

主治医「でも、メモをきちんと取ることで、かなりの部分は乗り越えられると思いますよ」

Aさんの付き添いの方 「いえ、もうすでに家じゅうメモだらけですよ」

主治医「あっ、そうですか」

 

 

このように、

認知症の初期〜中期段階において、多くの人は「何か変だ」「自分はもしかしたら認知症なのかもしれない」と不安を感じるものなのです。

ただ、強く自覚して医療機関を訪れる人は少なく、「まさか自分がね…」とほったらかしにしてしまっているのです。

 
 
 

認知症の薬の効果は人それぞれ

認知症の薬の効果は人それぞれです。効果覿面な方もいらっしゃれば、全く効果なしの方もいらっしゃいます。中には逆効果な方だっているのです。そうなると、お薬の力が信じられなくて「だったら飲まない方がいい」と思っている方もいることでしょう。

現状はそんな感じですが、近い将来、お薬の精度は高まっていきます。より効果的な新薬が次から次へと発売されてくることでしょう。

 
 

主治医「認知症の症状は薬を飲んでも進みます。ただし、飲まない場合と比べてそのスピードを遅らせることはできます」

主治医「効果の程度をADAS(アルツハイマー病評価スケール)という検査で半年ごとに測りましょう。その都度、薬の量の加減を相談しながら決めていきましょう。」

主治医「出現する可能性の高い副作用や、副作用が出た場合の対処法についてはのちほど説明します。薬を飲むか飲まないかはご自身で決めてください」

 
 
 

受診に結びつけるには「自覚」が大事

認知症には様々なタイプが存在し、典型的タイプには「アルツハイマー型認知症」があります。これは、遅延再生障害(記憶しづらさ)が前景にある状態の認知症です。Aさんの場合もそうでした。

 

 

ところで、人は「ない記憶」を振り返ることができません。遅延再生障害そのものを本人が直接認識することはできないのです。遅延再生障害とは認知症のメインの症状です。ただし、Aさんの今の状況であれば、いったん記憶できるように戻れば、あとは問題ありません。通常通りそれを引き出すことができるそうです。

(お薬によって、若干の回復も見込める、ということなのでしょう)

 

それでは、今回のテーマ「自分に遅延再生障害がある (私は認知症だ) 」とどのように認識することができるのでしょうか?「自分の認知症」を自覚することができれば、早期発見・早期治療につながり、進行を遅らせることができるのです!

逆に、自覚できないと、認知症を自分の問題として捉えることができず、「認知症とともに生きる」と自分から言えなくなってしまうのです。そもそも、自らが一人で医療機関に受診することすらできないのです。

 

Aさんの場合は、自らの認知症について明らかに自覚していました。だから受診に結びついたのです。

 
 
 

終わりに

さて、その自覚の仕方ですが、「遅延再生障害」は直接自覚できるものではありません。ですから、「もしかしたら…」と思ったらすぐに医療機関を受診することが大事なのです。

そもそも、周りから「えっ、さっき言ったでしょ」とか「また忘れたの」としょっちゅう言われ続けるのは本人にとって苦痛以外のなにものでもありません。

ただ、現代の日本において、独居老人の数が圧倒的に増えてきています。つまり、「えっ、また!?」と指摘する相手がいません。自分で自覚しないといけないのです。

家族や周囲の人にとって、本人が「認知症であることをわかっていない」ことは辛いものです。しかし一方で、「認知症であることをまったくわかっていない」と決めつけられた本人にも辛い気持ちが残ります。

 

憤り…

悲哀…

 

「俺はぼけてなんかいないっ!」

「こんなとこ、来たくて来たわけじゃないっ!」

「帰る!」

 

周りの人たちは、「この人、自分が認知症であることを全くわかっていないんです」と嘆くかもしれませんね。それに対して本人は「私はぼけてなんかいない!」と強い主張があります。

 

「認知症とは何もできなくなる絶望の病気…」

「認知症は周囲に迷惑をかけてしまうお世話の対象…」

 

そう考えているからこそ、「自分が認知症である」という事実を本人は受け入れたくないのです。非常に不本意なことなんです。

でも、自分のことです。本当は皆、うすうす気づいているものなんです。

 

であれば、見栄や世間体はかなぐり捨て、本人のためにも周囲のためにも「認知症みたいだ」と自覚し、早めに受診しましょう!

ある方はこんなことを語ってくれました。

 

「私の我慢が足らず妻に手をあげるなんて。。。自分がとても嫌になります」。これは認知症妻を介護している高齢男性の話です。

この男性の深い思いを聞いてしまい、私も胸が痛くなりました。

 
 

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