親の認知症・介護問題で絶望しないための心構え

 

つい20〜30年前までは、認知症や介護についての知識が社会全体に乏しく、認知症患者を非人間的に扱っていたケースもありました。しかし現在では、たとえ認知症になっても「適切な支援を受けながら社会生活を継続して送る権利」が保障されています。

「あれができなくなった」「これがわからなくなった」と認知症の症状ばかりに目をやるのではなく、その方の変わらぬ本質をしっかりと見つめて、必要な手助けをしっかりと行っていきたいものです。

 

医療・介護・福祉・地域・家庭・・・すべての場で、連携して行うことが何よりも大切です。くれぐれも、認知症の方を子供扱いしたりせず、「自分が認知症になった時にしてほしいケア」をしてあげてほしいと思います。

病気になる前までは、「社会の一員として活躍し、家庭を支え、子供を養育されてきた方々」だということを忘れないでくださいね。

 

できることは本人に

介護する側の人たちは、ついつい (本人に代わって) やれることを全てやってしまいがちです。しかし、ここで一つ考えてみてください。「もし、自分が介護される側だったら…」と。

何もかも人に助けてもらって、自分が人のために役立つことのない生活、、、

 

これではあまりにも虚しすぎるのではないでしょうか。実際のところ、認知症であっても自分でできることはたくさんあります。昔覚えたこと、体で覚えたことはなかなか忘れないものです。苦手なことを手助けしてあげるのはとっても良いことなのですが、一方で、得意なことはどんどん積極的にやらせてあげてください。

それによって本人の自尊心が保たれますし、活き活きとした生活を継続していくことにつながります。

 

 

知恵を出して根本的な解決を図っていこう

認知症の方は、ときに徘徊・妄想・暴言などとても困った症状を示されます。周りにいる方々 (介護者たち) はこうした症状に気をとられ、

  • 徘徊する → 家から出さないよう鍵をかける
  • 妄想がある → 適当にあしらう

といったその場しのぎの対応をとりがちです。

 

 

もちろん、こうした対応がすべて悪いわけではありません。半分は適切…とも言えるでしょう。ただし、ここでもう一度考えてほしいのは「これらの症状には必ずそれなりの理由がある」ということ。

この根本原因が解消されない限り、「いたちごっこ」の介護 (ケア) に陥ってしまうおそれがあるのです。

 

 

迷惑行為の原因・理由

 

《 迷惑行為の原因・理由 》

 


◉  心理的な要素

不安、寂しい、怒りなど


◉  体調不良

病気、痛み、痒み、空腹、便秘、運動不足など


◉  周囲の対応が悪い

いきなり手を掴んだ、大声で呼びかけた、やりたいことを邪魔したなど

 

 

◉  環境が悪い

騒がしい、眩しい、臭いがする、馴染めないなど


◉  習慣が残っている

毎朝会社に行っていた、毎日農作業をしていたなど


◉  薬の副作用が出ている

 

 

地域包括センターにずっとお世話になるわけにはいかない

地域包括支援センターは高齢者やその家族、地域の方々の相談を受ける場であって、介護サービスや医療サービスを受ける場所ではありません。例えば介護の場合、介護サービスを受けるために介護計画 (ケアプラン) を立てる必要があります。

この場合、地域包括支援センターにいるケアマネージャーではなく、居宅介護支援事業所などにいるケアマネージャーのお世話になることになります。

 

 

地域包括支援センターは、緊急時 (すぐに介護サービスを受けなくてはいけない状況など) を除いては居宅介護支援事業所を指名してくれません。彼らは公正中立な立ち位置なので、自宅に近い場所で営業しているいくつかの居宅介護支援事業所の紹介にとどまります。

ともあれ、地域包括支援センターは (介護における) 最初の相談場所であって、ずっとお世話になりっぱなしでOKな場所ではないのです。

 

 

ケアマネージャーには得意・不得意がある

ケアマネジャーになるためには、

医師・歯科医師・介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・歯科衛生士・言語聴覚士・栄養士・義肢装具士・あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師などの

受験資格が必要です。

 

つまり、ケアマネジャーといっても個々に得意分野は違うのです。例えば、介護系のケアマネさんは介護分野が得意ですし、リハビリ系のケアマネさんは訓練の相談が得意です。薬剤師であれば、薬の知識がずば抜けていることでしょう。

このような背景がありますので、ご家族の方は「◯◯に強いケアマネジャーさんがいいなー」などと、日頃から考えておくといいかもしれません。

 

 

福祉従事者が身に付けている特技

福祉従事者の多くは、「傾聴」「受容」「共感」といった技術を身に付けているものです。傾聴とは、相談者の言いたいことや伝えたいことをしっかりと聴くこと。受容とは、相談者の話すことを全面的にしっかりと受け入れること。そして、共感は読んで字のごとく共に感じ合うということです。プロの福祉従事者たちは、自分の価値観を挟まず、たとえ悪いことであってもそこに意見を挟むことはありません。

なので、「こんなことを言ったら笑われる」「恥ずかしい」とは思わずに、感じたことを素直に伝え相談してみてください。誰だって、介護は初めてのことなのですから。きっと親身になって相談にのってくれ、適切なアドバイスを受けられるはずです。

 

 

家族が自分で何とかしようと思えば思うほど手遅れに…

今まで普通に過ごしてきた家族が、ある日突然事故などで寝たきりになったり、認知症などで介護が必要となった場合、その状態を受け入れられず、相談に行かない方が少なくありません。

これは、「今まで通りであってほしい」という願望が家族の心に芽生えているからです。この願望が叶わないことを知ると、次第に怒りへとつながっていきます。

 

「お母さん、ちゃんとしてよっ!」という高齢の母と子の会話をどこかで耳にしたことありませんか?特に、他に相談できる兄弟や家族がいない場合、このような心理に陥りやすいと言われています。

とはいえ、年を取れば取るほど人は衰えて然り…なのです。どんなに時間をかけても、このことはしっかりと受けとめなければなりません。いろんな意味で手遅れにしないためにも、まず最初に行うべきことは、目の前の事実を受け入れることなのです。

 

 

介護に絶望しないために

介護にはなかなか「終わり」が見えません。過剰なストレスから、高齢の親を殺害する…といった事件も後を絶ちません。「ゴールのないマラソン」「生き地獄」とも表現される過酷な介護生活。

このような状況に陥りやすいからこそ、「けっして独りで抱え込まず、周囲や行政に相談を」すべきなのです。

 

誰だって、「終わりのない介護が続く」と思ったら絶望感を感じずにはいられません。そうならないためにも、老老介護を始める前や介護離職を考える前に、まずは誰か (専門家や介護経験者など) に相談することが大切です。

相談しないで隠し続けて、どうしようもなくなってしまってからではもう何の手も打てません。「身近に相談できる人がいない」というのであれば、近くの地域包括支援センターや市役所などに足を運んでみてください。かかりつけ医でもけっこうです。そこから全てが始まります。