高齢者だけじゃないっ!貧困と生活保護受給問題
「高齢者で生活保護を受けている人」の割合はここ20年で倍増しました。厚生労働省によれば、65歳以上のうち生活保護受給者が占める割合は2.89% (2015年調査時)。
この高齢生活保護受給者の半数は公的年金を受け取っていますが、その平均受給額は月47,600円。
確かに暮らしていける金額ではありませんね…
実は、生活保護を受けるお年寄り世帯の割合は、高齢化を上回る勢いで増え続けているのです。2016年には、初めて受給世帯全体の5割を超えました。
そもそも、老後の備えとなるのは公的年金制度なのですが、老後全ての支出を賄えるようには設計されていません。
つまり、
誰もが「生活困窮」に陥る可能性があるのです!
そこで今回は、2つの事例を参考にしながら日本の「貧困」について考えてみましょう。
四十数年間真面目に働いてきたAさん (67歳男性) は、毎月ギリギリの綱渡り生活を強いられています。寒くなっても長袖の下着を買えません。
Aさんは普通の会社員として働き、妻と子供の家族3人、人並みに暮らしてきました。しかし、50歳を前に社内の人間関係がこじれ、辞めてしまったのです。
それからは、非正規の仕事を転々と渡り歩き、妻とは離婚。月収が10万円を切ることもありました。
「毎日が必死で、貯金も出来なかった…」
3年前、体調を崩し働けなくなったAさん。心臓の手術で入院し、高血圧・糖尿病の持病も悪化しました。
その後、生活保護の医療扶助が認められ、病院代の心配はなくなりましたが、年金は月88,000円。
ボロボロ古民家の家賃を支払うと残りはわずかばかりなり…
一日一本、第三のビールを飲むことだけが何よりの楽しみなのです。
Bさん (男性) は高齢者ではなく40歳。ですが、精神的な不調を訴え、これまで勤めてきた会社を退職してしまいました。
再就職したい思いもありますが、メンタル面でなかなか思うようにはいきません。
貯金は少なく、借金あり。今の暮らしがかなりいっぱい一杯になってきています。Bさんは、このタイミングで生活保護を受給できるのでしょうか?
生活保護の受給は、「生活の困窮する者がその利用しうる資産、能力、その他あらゆる物を…活用すること」を要件としています。
働く意思があっても病気で働けない、就職活動しても就職先が見つからない、、、のであれば、「利用しうる能力を活用していない」とはいえないので要件を満たします。
この要件を満たし、世帯収入が最低生活費を下回っていれば、借金があっても受給の妨げにはなりません。
要は
①援助してくれる身内・親類がいない
②まったく資産を持っていない
③(病気、ケガなどでやむなく)働けない
④ 上記①~③を満たしている状態で、月の収入が最低生活費を下回っている
基本、この4つの条件を満たせば受給できます。
でも、
生活保護は最後のセーフティネットです!
こんな正直者がバカを見るような社会は変えていかなければなりませんね!
Bさんの人生はまだまだこれからです。可能であれば働き、自立した生活に復帰することが望まれます。が、不調の程度が重いようであれば生活保護の受給自体はできるはずです (要件を満たしていればの話です)。
詳しくは、福祉事務所への申請時によく相談されてみてください。
病気や事故で多額の医療費が必要になったり、熟年離婚で年金分割後暮らしが立ち行かなくなったり…
様々なアクシデントが人並みの暮らしを「困窮」に変えてしまいます。
派遣労働など不安定な働き方が広がり、若い世代は年老いた親を援助したくても自分の生活で精一杯なのです。
ではいったい、どうやって貧困への転落を防いだら良いのでしょう?
「生活、厳しいな」と思ったら、、、
まずは2015年4月に始まった「生活困窮者自立支援制度」の家計相談を受けてみましょう。ただし、この制度は就労による自立支援が前提のため、現金給付はほとんどありません。
「今あるお金をどう使うか」を深く吟味し、生活苦の悪循環を断つ!ということがこの制度の趣旨なのです。該当しそうな方は是非ご相談ください。
事故、病気、離婚、失職…
人はいつどんな形でこれまでの「当たり前の生活」を失ってしまうかわかりません。また、年金生活になっても現役時代の感覚のまま暮らす人も少なくありません。そうなれば「貧困」生活も…
私たちは、貧困の裏にある「無駄」を洗い出し、リスク・マネジメントをきちんと行なう必要があります。
時代は流れ、今の若い世代が高齢者になったとき、状況は一段と厳しくなっているでしょう。お金の貸し付けや給付だけでは到底生活を立て直せません。
家計を把握し、先の見通しを考える!若い世代こそ必要なことではないでしょうか。