秋 (9月下旬〜10月頃) になると甘く強い香りを漂わせる金木犀 (きんもくせい)はジンチョウゲ・クチナシと並ぶ三大香木 (さんだいこうぼく) の一つで、とても生育旺盛な植物です。放っておくと縦にも横にも大きく広がってしまいます。そこで、株をコンパクトに維持し、病害虫の発生を抑えるために剪定 (せんてい) が必要になってきます。
花が咲き終わったあと、一度剪定するといいでしょう。 剪定で切り落とす枝の部位やコツを覚えて、年に1度すっきりさせましょう。ここでは、剪定の時期や適切な方法などを紹介したいと思います。
キンモクセイは初心者にも育てやすい庭木のひとつですが、栽培を始める前にまずは基本情報を確認しておきましょう。
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【キンモクセイの基本データ】
科名:モクセイ科
属名:モクセイ属
原産地:中国(詳細は不明)
英名:fragrant orange-colored olive
開花期:9〜10月
花色:オレンジ
植え付け時期:3〜4月
耐寒気温:−10℃
キンモクセイは樹高5〜8mになる常緑小高木です。その香りは低温・多湿になると特に強く香ります。日本では芳香剤としてよく知られる香りですが、中国では桂花陳酒や桂花茶などで香りが楽しまれています。
キンモクセイは枝葉が対になって出てくる常緑樹で、枝葉が茂りやすく (1年で15cm以上)、放っておくと全体が広がりすぎてしまいます。
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そこで基本的には毎年剪定が必要になってきます。広い庭でも樹高が高くなると日当たりが悪くなりますので、毎年外側から剪定し、コンパクトに切り戻しましょう。 剪定を行うことで、枝葉がすっきりするだけでなく、樹形も好きなように整えることができます。
キンモクセイの性質として、日陰の多い場所でも耐える「耐陰性」があります。ただし、日陰だと花の付きがあまりよくなく、枝葉もきれいに整いません。花が終わった後のキンモクセイは枝先に葉が5~6枚ついている状態です。 このように葉っぱがちゃんとついていれば、枝分かれした付け根の部分から花を咲かせることができます。剪定の際はこの枝分かれした部分を5~10cm残すようにして切り落とします。
剪定とは、木の枝を切り樹形を整えることをいいますが、これには以下のようなメリットがあります。
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① 枝の広がりを抑え、コンパクトにする
② 枯れた枝や病害虫を取り除く
③ 樹形を美しく整える
④ 花や実のつきを良くする
⑤ 古い枝を新しい枝に更新する
このように、樹木を健康に保つためにも剪定は欠かせないお手入れのひとつなのです。
一般的に花を楽しむ庭木は、花芽をつけてからは剪定できません。それを踏まえて、金木犀の剪定に適している時期は花が咲き終わった11月か成長がゆっくりになる2~4月がおすすめです。
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(冬の間も軽い剪定や刈り込みであれば可能です)。毎年剪定し、きれいな花を咲かせて香りを楽しみましょう。春から秋にかけて葉がよく茂るので、この時期に剪定したくなるかもしれませんが、この時期に剪定してしまうと花を楽しめなくなってしまいます。 あと、剪定をする際は、葉を適度残しましょう。葉がなくなってしまうような切り方をすると「枝枯れ」を起こし、株全体を弱らせてしまうことになります。 大木になっていても、数年単位で少しずつコンパクトにしていくといいでしょう。なお、花つきを気にしなければ一年中剪定は可能です。
放っておくと栄えすぎてしまうので、年に1回、秋の花が終わった直後から翌年の4月上旬までに一回り小さく刈り込みます。
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このとき、あまり強く切りつめないようにしてください。強剪定 (枝を深く切る) は枝枯れを起こし、元の状態に戻るのに数年かかってしまいます。それでも数年に1度、木を活性化させるためであれば強剪定してもいいでしょう。ただし、その翌年の花は期待できないので花を楽しみたいのであればやめておきましょう。混み合っている枝や枯れている枝を根元から取り除く「間引き剪定」も大事です。
剪定で大切なのは、切るべき枝を知ることです。
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「栄養不良の枝は、根元を残しひょろひょろ部分を切る 」「混み合っている部分や不要な枝を切る」「花が咲き終わった後か新芽が出てくる前に、開花枝の葉が2~3枚残るよう刈り込みをする」 ・・・以上のポイントを押さえておくと、元気な枝を切るといった失敗は少なくなると思います。
《 切り落としていい枝 》
🔵 枯れた枝
枯れている枝は、他の元気な枝と比べて艶や色合いが悪いのですぐに見分けがつきます。見つけたらこまめに切り落としましょう。先端のみ葉がついた細く弱い枝も剪定します。
🔵 邪魔な枝
「高く伸び」「横に広がり」「混み合っている」枝は日当たりや風通しを悪くします。枝の付け根から切り取りましょう。
🔵 不要な枝
たとえば、「他の枝と交差している」(交差枝)、「内向きに伸びる」(懐枝)、「真っ直ぐ立ち上がって伸びる」(立ち枝・徒長枝)、「隣接して同じ方向に伸びる」(平行枝)、「下向きに伸びる」(下り枝)、「一ヶ所から放射状にたくさん出る」(車枝) などは不要です。付け根から間引くように切り取りましょう。
🔵 古くなった主枝
木の骨格を作る枝を主枝といいます。5年以上経って古くなった主枝は、もとの部分から切り取って新しい主枝に更新しましょう。その際、(切り取った部分に将来的に) 主枝になりうる程度の太さの枝が残るようにします。
「まずは外側から」といきたいところですが、慣れていない方は内側や幹周辺から生えている不要な枝から落としていきましょう(内側は3〜4年に1回)。
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内側は、枝を鋤いて通気性や日当たりを良くするように意識して剪定していきます (外側と内側では剪定方法が異なります)。剪定時期や剪定方法は木の種類によって異なりますが、剪定すべき枝はほとんど同じです。まずは基本的な手順です。内側の不要な枝をざっと切り落としたら、次に側面から上面の順番で粗めに刈り込むようにし、最後に上面から側面に向けて微調整をかけるように刈り込みます。
不要な枝は、上の絵を (上から)反時計周りに見ながら再度確認しておきましょう。
① 懐 (ふところ) 枝
幹付近から伸びた枝です。日が当たりにくく空気がこもりやすいため、害虫の温床になります。
② 徒長枝
枝から真上に伸びすぎてしまった枝です。雨風で折れやすく、害虫の温床になります。
③ かんぬき枝
主幹をかんぬきのように横に貫いて左右対称に生えている枝のこと。全体の樹形のバランスを見ながら、左右どちらかを剪定します。
④ 交差枝
他の枝と交差してしまっています。
⑤ 絡み枝
その名の通り、枝が絡み合っているもの。
⑥ 下がり枝
横に伸びた枝から下に向かって伸びている枝。
⑦ 胴吹き枝
幹の根元付近から上に伸びた枝。樹木の上部分に栄養がいかなくなってしまうため、早めの剪定が必要です。
⑧ ヤゴ・ひこばえ
樹木の根元から生えてくる枝。見栄えが悪くなるとともに、胴ふき枝同様、樹木の上部分に栄養がいかなくなってしまう。
⑨ 立ち枝
通常横に広がるはずの枝がまっすぐ伸びてしまったもの。樹形に悪影響があります。
⑩ 車枝
枝の一部分から多数の枝が出ているもので、車輪状に枝が伸びているもの。
⑪ 平行枝
複数の枝が平行に伸びてしまっている枝。
⑫ 腹切枝
幹と交差する太い枝のことを言います。
⑬ 逆さ枝
幹に向いて内側に生えている。
以上の不要枝を落とすだけでもすっきりします。
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🔴 透かし剪定
不要な枝を落とした後、まだ込み入っている枝がある場合は全体が均一になるように透かし選定をしていきます。
透かし剪定とは、伸びすぎたり混みすぎたりしている枝を適度に透かす剪定の方法です。枝の密度を適度にすることで、日当たりや風通しを改善できます。大きくなり過ぎた樹木を小さくすることを目的とした「強剪定」と、枝先の不要な枝を落とす「弱剪定」があります。
① 高さを抑える
幹が高く伸びていたら、(樹形を維持するために) 枝先から50cmほど切り戻します。枝の付け根 (枝分かれした部分) まで切ります。
② 枝先を2〜3節残して切り詰める
株をコンパクトに維持するために、枝を2〜3節残した位置まで切り詰めます。4月以降に新梢が伸び、これに花芽がつくられます。
金木犀は本来、今年伸びた枝の剪定をします。枝は三つ又になることが多いので、真ん中の枝は根元から切り、両サイドの枝は別れたところから1 or 2節のところで剪定します。
(赤いラインのところで剪定します)
前年に刈り込んだ部分を目安に剪定します。そして、ある程度刈り込んだら少し離れて見て、形が悪い部分を整えていきます。
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花が咲かないのは「上方向に伸びた枝」が原因です。これを株元から切り落とし枝が横に伸びるように仕立てましょう。そうすることで小枝が増え、花つきがよくなります。また、 最初の植え場所が日陰だったり車の通りが多い場所だったりすると良くないようです。間違った剪定もよくありません。くれぐれも、「葉がほとんどなくなるような剪定」「生長途中に必要な枝を刈り込む」といったミスはしないでくださいね。枝先に葉が5~6枚ついた状態をキープしましょう。
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① 上枝は深めに、下枝は軽めに!
キンモクセイは上部ほどよく伸びます。なので、上枝は深めに下枝は軽めに刈り込むようにするとバランスのよい樹形を保てます。また、日光の当たる外側の部分は成長が早いので、枝の数を減らして短くするとよいでしょう。
② 強剪定は枝枯れを起こす
キンモクセイは強く刈り込むと、枝枯れを起こしてしまいます。元の状態に戻るのに数年かかることがあるので、強剪定は避けましょう。一度に強く刈り込まず、毎年少しずつ樹形を整えるようにしましょう。
③ 枝は切っても葉は残す
キンモクセイは一つの枝に葉を残さずに切り戻すとその枝は枯れてしまいます。葉がきちんとついていれば、枝分かれした付け根から花を咲かせることができます。
④ 剪定する位置は対生する葉の上
キンモクセイは枝から葉が対生 (左右対称に葉や枝がつく) してつきます。このため、対生している部分のすぐ上 (枝先側) で切ると切り口が目立たず枝先が枯れることもありません。
⑤ 虫もチェックする
キンモクセイには、メイガの幼虫やイラガ (コブのような貝のようなもの) が発生することがあります。剪定ついでに取り除きましょう。
キンモクセイの剪定では切り落とす枝の種類がたくさんあって一見難しいようにも思えますが、何度か行ううちにコツが掴めてくるものです。適切な時期に行い、樹形を保ち、きれいな花を咲かせましょう。長く楽しめますよ。