うつ病を改善させる「効果的物質」発見!

 

うつ病を治療しないで放っておくとどうなるのでしょうか?それは、他の病気と同じように「うつの症状が悪化」していきます。

食欲がなくなり、味がよくわからなくなる。原因不明の背中痛みが出てくる。仕事にやる気が湧かない。性欲が落ちる。妻に求められても応じられない。毎日の頭痛にも苦しむ。死にたい気持ちが忍び寄る。

 

そんなうつ病は、誰にとっても身近なものです。自分では原因がわからなくても、苦しい状態が長期にわたって続いてしまうのです。うつ病は気持ちの問題ではないため、気力で解決できるものではありません。治療が必要な病気なのです。

そんな体調不良に悩んでいたAさん (30代女性)は、ある朝、毎日自分で作っていた弁当が作れなくなります。夫に勧められ、心療内科のクリニックを訪れると、医師から「典型的なうつ病です」と診断されます。

 

ただ、ここで一つの疑問が。。。

医師は「うつ病はココロの風邪で、服薬すれば半年から1年半ほどで元に戻ります」と説明されたのですが、うつ病は本当にココロの風邪なのでしょうか?

 

 

 

 

うつ病は本当に「ココロの風邪」なの?

 

「うつ病はココロの風邪」とは、1999年以降に新しい種類の抗うつ薬が登場しタノを機に言われ出した謳い文句です。それは、「風邪と同様誰もがかかる病気」「精神科へ行って薬をもらえば良くなる」…という、製薬会社と精神科医が手を組んで実施した “うつ病啓発” だったのです。

ただ、この謳い文句には「功」と「罪」があります。

 

「うつ病は重病ではなく風邪のようなものなんだ」と言われたことで、精神科に行きやすくなったこと、治療につながったことは「功」でしょう。

一方で、「うつ病は風邪のようにありふれた軽い病で、薬を飲めばすぐに治る」と考えられてしまったことは「罪」の部分でしょう。

 

1990年代、43万人前後で横ばいだった国内のうつ病患者数は、2000年代になって増え続け、2008年にはついに100万人を超えました。この数字だけを見ると単純にうつ病患者がそれだけ増えたんだと思うかもしれませんが、実はそうではありません。

先ほどの「功」の部分で、精神科を訪れる人が単に増えただけなのです。1990年代も、潜在的には43万人以上のうつ病患者がいたはずなのです。そして、2008年には100万人を超えたとされていますが、現在においても診察に訪れることのない隠れうつ病患者はもっともっとたくさんいるのです。

 

本当に「ココロの風邪」で、薬を飲んで簡単に治るのであれば、もっと多くの悩める人々が病院を訪れ、本気で治療しようと取り組むであろうに。。。

 

 

 

 

「服薬」と「休息」の原則

さてここで、うつ病を「身体性うつ」と「心理性うつ」に分けて考えてみましょう。

 

 

 

 

①  身体性うつ

この考えをベースに治療を考えた場合、「服薬と休息」が治療の大原則となります。

 

一方、

②  心理性うつ

落ち込みを生む何らかの確かな原因があり、それにうまく対処することができれば(あるいは原因がなくなれば)治る可能性が高いと考えられています。

 

 

②の場合、大事な治療は「服薬」や「休息」ではなく、環境の調整にあります。

ちなみに、2000年代のうつの急増の陰には、薬が第一の治療ではない心理性うつの患者にうつ病の病名をつけ、薬の治療を優先させた…という問題があったのです

 

当時の精神科医は、②に対して、話をよく聞く (原因を探る) ことなく、代わりに、従来の「服薬と休息」の原則を当てはめてしまったのです。

多くのうつ病患者は、「服薬と休息」で症状が少し良くなったかと思えばまたひどくなる、を繰り返しています。自分を責め、頭まで布団にくるまり、自殺未遂を犯してしまうのです。

 

ただ、①の場合であれば、「眠れない日々」「昼も夜も眠ってばかりの状態」を経て、徐々に回復していきます。「頑張らなくていいんだよ」「焦らなくていいんだよ」と言う言葉も間違いではないでしょう。

要は、①と②のどちらのタイプのうつなのかを見定め、適切な治療を行なっていくことが大事なのです。

 

 

 

 

うつ病を改善させる「効果的物質」発見!

 

鳥取大医学部付属病院の研究グループは、体内でできるβヒドロキシ酪酸(BHB)という物質に「うつ病を改善させる効果があることを確認した」と発表しました。今後、新たな治療薬の開発につながることが期待されています。

研究グループによれば、BHBは飢餓時などに肝臓で生成される脳の緊急エネルギー源で、ブドウ糖を補う役割があるそうです。ここだけを読むと、「うつ病を改善させるには、適度な空腹時間が必要」ということになるのかもしれません。

 

そもそもうつ病は、ストレスなどで脳内の炎症性物質が増え、意欲低下などの症状が起こる病気です。2年ほど前に、アメリカの研究グループが「BHBには炎症抑制作用がある」ことを報告していましたが、今回、日本の研究グループは実際にうつ症状の改善につながるかどうかを動物実験で確かめたのです。

その結果、「効果あり」ということがわかったのです。これを機に、早く効果的な治療薬が開発され発売されるといいですね。

 

現在の抗うつ薬は「脳機能障害によって欠乏する物質を補充するものが主流」なのですが、この研究成果を踏まえて、これからは「うつ病を抑制する新しい治療の可能性が出てきた」と言えるのではないでしょうか。

 

 


最終更新日:2017/12/08