日中の強い眠気「過眠症」 (ナルコレプシー) の原因・症状・治療法

 

過眠症とは、過眠の症状がみられる睡眠障害の総称です。睡眠は十分に取っているはずなのに、昼間に社会生活に支障をきたすほどの猛烈な眠気に襲われてしまう。こうした過眠の症状がみられる病気 (疾患) には「ナルコレプシー」「睡眠時無呼吸症候群」「特発性過眠症」「反復性過眠症」などがあります。

中でも「ナルコレプシー」や「睡眠時無呼吸症候群」の患者は多く、本人も気づいていない潜在的な患者も含めると相当数いると考えられています。症状が出ると、大切な会議でも眠ってしまい、周囲から「怠け者」と誤解されてしまいます。「もしかして私も・・・」と思う方は、できるだけ早期に専門の医療機関を受診されてみてください。

 

ナルコレプシーの基本情報

ナルコレプシーは、夜間にしっかり眠っているにも関わらず、日中「耐えられないほどの強い眠気」が現れる睡眠障害です。通常では考えられない状態、例えば「食事中」や「商談中」などでも眠ってしまいます。居眠りは10〜20分と短く、すっきりと目覚めることができますが、数時間後にはまた強い眠気に襲われます。

「ナルコレプシー」と「特発性過眠症」の患者は、夜間に十分な睡眠を取っていても日中に強い眠気を感じ、突然寝てしまったりします。主に10代半ばで発症し、症状は生涯にわたって続くと考えられています。「睡眠不足症候群」と異なり、年間を通じて眠気を感じない日が1日もない厄介な病気です。

 

睡眠時は通常、脳が休息する「ノンレム睡眠」と体を休める「レム睡眠」を交互に繰り返すもので、健康な人であれば睡眠直後にノンレム睡眠状態になるのですが、ナルコレプシーの患者さんは早期にレム睡眠状態に移行し、入眠時に幻覚を見たり金縛り状態になったりします。

有病率は500~1000人に1人で、日本は世界でも高い方だと言われています。現在のところ根本的な治療法はなく、眠気を軽くする薬を常用するしかありません。

 

 

「ナルコレプシー」その他の症状

「睡眠発作」以外の特徴的な症状としては「情動脱力発作」があります。これは、大笑いしたりびっくりしたりと、急激な感情の高まりが誘因となって「ひざ・腰・首・全身の筋肉が突然緩んで力が入らなくなる」発作です。

また、寝入りばなや目が覚めたときに体を動かそうとしても動かすことができない「金縛り」の状態になる「睡眠麻痺」もあります。他にも、入眠時に現実と錯覚してしまうほどの鮮明な夢を見る「入眠時幻覚」などがあります。

 

 

「ナルコレプシー」の原因

これらの症状の出方の強さや程度には個人差があり、すべての症状が現れるわけではありません。思春期から青年期にかけて発症することが多く、何年間にもわたって慢性的に継続しますが、年月を経るに従ってやや改善する傾向があります。原因はまだはっきりと解明されてはいませんが、「脳の視床下部から分泌されるオレキシンという神経伝達物質が極端に欠乏している」場合が多いことはわかっています。

ナルコレプシーが疑わしい場合には、できるだけ早く「精神神経科」「神経内科」などの専門医を受診しましょう。

 

 

大きないびきをかく人は「睡眠時無呼吸症候群」の可能性も

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が一時的に停止する状態や呼吸する力が低下する低呼吸の状態を何度も繰り返すことをいいます。熟睡できず眠りが浅くなるため、日中に強い眠気を催したり、起床時に頭痛がしたりします。「集中力の低下」「頻尿」の原因にもなりかねませんし、「高血圧症」「循環器障害」「心筋梗塞」などを引き起こしてしまうことも!

「肥満」の方だけでなく、「あごが小さい」「首が短い」「気道が狭い」「アレルギー性鼻炎がある」「年配」の方なども陥りやすいようです。

 

 

「過眠」の症状が見られるその他の病気

🔵 特発性過眠症

ほぼ毎日、日中の眠気と居眠りが現れる病気です。昼間の居眠りが1時間以上続くことが多く、目覚めたときに頭がぼんやりした状態が持続するのが特徴です。頭痛や立ちくらみなどの自律神経症状を伴うことが多くあります。25歳以下で発症することが多い病気です。

 


🔴 反復性過眠症

強い眠気を示す状態が昼夜を問わず数日から数週間持続し、自然に回復するも、また同じような状態を不定期に繰り返す病気です。非常にまれな病気で、青年期に発症することが多く、男性に発症する割合が高いといわれています。

 


🔵 むずむず脚症候群

安静にしているときなどに、主にふくらはぎなどの下肢部分に「むずむず感」「かゆみ」を感じる病気です。「虫が這っている」ような不快感が現れ、じっとしているのがつらいのが特徴です。夜間に現れやすいため、慢性的に睡眠不足になりがちです。

 


🔴 周期性四肢運動障害

夜間、睡眠中に手足が自分の意思とは無関係に繰り返しピクピク動く病気です。何度も目が覚めてしまい、熟睡できないため不眠となり、日中の眠気が起こりやすくなります。加齢とともに発症頻度が高まります。

 


🔵 概日リズム睡眠障害

約25時間の体内時計の周期をうまく24時間周期に合わせることができずに生じる睡眠障害の総称です。「交代勤務睡眠障害」「睡眠相前進症候群」「睡眠相後退症候群」「非24時間睡眠覚醒症候群」などがあります。

 


🔴 うつ病

うつ病の症状が原因で起こる睡眠不足によって日中の過度な眠気を引き起こす場合があります。また、季節性うつ病 (冬季うつ病) は特に日中に強い眠気が生じやすいといわれています。

 

 

まとめ

過眠症と診断され、「気持ちが楽になった」という方がいます。「ショックだったけど、自分の意志が弱くて居眠りしていたわけじゃないんだ」とわかってホッとしたのでしょう。以来その方は、薬を服用しながら仕事を続けています。

日中に耐え難い眠気のある「過眠症」はまだ世間から認知されておらず、周囲から「意欲が足りない」「気が緩んでいる」「緊張感が足りない」などと誤解されてしまいます。当の本人も、病気のことを知らないために「悩み」「苦しみ」つらい思いをしてしまうのです。