人一倍敏感な子 〜 HSC (ハイリー・センシティブ・チャイルド) の原因・特徴・対処法
感受性が豊かで他人の気持ちによく気がつくことはとても良いことです。しかしながら一方で、周囲の刺激にあまりにも敏感すぎて傷つきやすかったりもします。そんな「人一倍敏感」な子供たちのことをHSC (highly sensitive child) と言います。
世の中には「感受性が高く」「繊細な」子供たちが多く存在しています。小さい時には「なかなか泣き止まない」「離乳食を受けつけない」「タートルネックを着ることができない」「すぐに帰りたいと言う」といった親の立場からすると厄介にも思える行動が頻繁に目につきます。
HSCとは
HSCはアメリカの心理学者エレイン・アーロンさんが提唱した概念で、その特徴は ① 深く考える ② 過剰に刺激を受けやすい ③ 感情の反応が強く共感力が高い ④ ささいな刺激を察知する といった点にあるようです。
もちろん個人差はありますが、たとえば靴に入った砂が異常に気になったり、怒られている人がいると自分も不安になったりする…などがあります。このHSCは病気や障害といった類のものではありません。生まれ持った単なる「気質」です。日本でも、数年前から「子育てに悩む人」たちを中心に知られるようになってきました。
アーロンさんによれば、「5人に1人は存在する」と言われており、海外ではこの研究がどんどん進められています。とはいえ、医学的概念ではないため治療の対象とはなっていません。「知覚過敏」などの特徴が発達障害と共通しているのですが、「人の気持ちに気づきにくい発達障害とHSCは別物」なのです。
原因
他人の気持ちに敏感、騒がしいところが苦手、学校がつらい……。HSCは「国籍・性別を問わず5人に1人の割合でいる」と考えられています。なのに、社会はそのことを全く理解してくれません。なぜなら、病気でも障害でもなく単なる「気質」だからです。そのため、原因も治療法も謎のままなのです。
一説では、こうした敏感さは種の存続のために必要で、動物にも見られる傾向にあるといいます。生まれ持った「気質」なので、治す必要は全くないものなのです。
特徴
HSCの特徴は、一言でいえば「敏感さ」にあります。その敏感さゆえ、人一倍傷ついたり疲れたりして「わがまま」と誤解されてしまうことも少なくありません。ちなみにこのHSCは不登校の原因の一つとも考えられています。なぜなら、学校の環境が大の苦手だからです。「教室のざわめきが苦手」「教師や同級生の大声が苦手」「通学の人混みが苦手」…本人からすれば、「学校で自分のことをわかってもらえないのが辛い」「好きでもないことに時間を使うのは嫌」となるわけです。
人の感情や気分、音や光、場の雰囲気など、どこに敏感さが強く反応するかには個人差があります。一般的には引っ込み思案の子が多いHSCですが、好奇心旺盛な子も30%ほどいるなど、個性にも幅があります。いずれにしても親が不安になる必要は全くない単なる「気質」なのだと理解することから始めましょう。
HSCの多くは、優しく思いやりのある思慮深い子たちです。感受性が強く敏感なことは、本来何も悪いことではありません。幼いうちはよく泣いたり、疲れてかんしゃくを起こしたりするかもしれません。でもそれは、子どもが自分の気持ちを家庭で安心して出せている証拠なのです。
チェックリスト
1. びっくりしやすい (驚かされるのが苦手)
2. 洋服のタグや布地がチクチクする
3. (靴の縫い目など) 細かいことが気になる
4. 年齢の割に難しい言葉を使う
5. 大人の心を読もうとする方だ (他人の気持ちに気づきやすい)
6. いつもと違う匂いや痛み・空腹・音・光などに敏感
7. よく質問する方だ (物事の本質を突く)
8. 服が汚れるとすぐに着替えたい
9. 完璧主義
10. 静かに遊ぶことを好む
11. 楽しい場面でもすぐ疲れる
以上の半分以上に該当すればおそらくHSCの可能性が高いと言えるでしょう。
対処法
では、そんなHSCの子供たちとどう向き合っていったらいいのでしょうか?答えは簡単。「嫌がることを無理にやらせようとしない」「安心できる環境を作ってあげる」ことです。パニックにしないためにも、伸び伸びと成長させてあげるためにも是非、このことを心がけてみてください。長所を認めて自己肯定感を育むことが大切なのです。
ただし、「甘やかしすぎ」には要注意です。そこは加減というものも必要になってきます。