発達障害は「生まれつきの脳機能の障害による」もので、症状・困りごとは十人十色です。「広汎性発達障害」「学習障害 (LD)」「ADHD (注意欠陥・多動性障害)」など種類は様々で、これまでの研究で「遺伝的要因」が存在していることは明らかなのですが、一方で「それだけが原因ではない」「環境要因もある」とする研究結果もあります。
《続きを読む》発達障害は、健常な発達段階の重要な要素が遅れてアンバランスに発達していく「認知の障害」と考えられています。日本で使われている「発達障害」はかつて、てんかん・脳性麻痺・知的障害など器質的な神経疾患について使われていました。その後、国際的な「発達障害」という用語が拡張され、「軽度発達障害」という言い方で現在使われている「発達障害」に変わりました。
要は、「先天的な脳機能の凸凹」と「環境のミスマッチ」によって社会生活に困難が生じる「障害」のことなのです。
《続きを読む》① 元来持っている素質
生まれながらに持っている遺伝子・出生前環境による素質
② 発育環境
両親との関わりなど、生後の発育環境
③ 社会との関係
学校・地域など、集団生活での社会との関係
④ 偶然の出来事など
様々な出会いや体験など
《続きを読む》「発達障害は遺伝によるもの」ということは理解できますが、一方で、兄弟姉妹の中に差があるのはなぜという疑問も生じてきます。事実、(同じ遺伝情報を持つ) 一卵性双生児であっても発達障害の発症は必ずしも一致しないのです。結局のところ、「遺伝的要因が強いの?」「環境的要因が強いの?」といった疑問が湧いてきませんか?
ただし、残念ながらまだ「環境要因」については多くの部分が未解明のままなのです。ただ一つはっきり言えることは、発達障害の要因は大きく分けて2つ「遺伝」「環境」にあるということだけなのです。
《続きを読む》いま現在も、「環境的要因」については世界中で様々な研究が活発に行われています。例えば、「早産」「低体重」「飲酒」「喫煙」「大気汚染」「食事」「病気」「親の年齢」「感染症」「薬物」といった多岐にわたる事柄も関係しているのか…などなど。こうした多くの研究がなされている段階ではありますが、残念ながらいずれも発達障害の原因を突き止めるには至っていません。また、与える影響の程度も定かではありません。
「親の年齢」を例に考えてみましょう。例えば、年齢の高いお父さんやお母さんから生まれた赤ちゃんがASDになるリスクは、それぞれ1.55倍、1.41倍だと報告されています。つまり、遺伝的に100人中赤3人の赤ちゃんがASDとなったと仮定して、お父さんの年齢が高い場合にはおよそ4.65人ほどの割合で発達障害の赤ちゃんが生まれてくるということになります。
また、影響の程度が大きいものの一例として「妊娠中・授乳中におけるバルプロ酸のリスクがあります (17.3倍)。とはいえ、どの環境的要因がどの程度の影響をもたらしているのかは正直定かではないのです。
《続きを読む》近頃、「遺伝的要因」と「環境的要因」だけでは説明できない現象が発見されました。それは「遺伝子と環境因子の相互作用」と呼ばれています。つまり、「遺伝」と「環境」はそれぞれ独立している要因ではなくて足し算あるいは掛け算のようなものだというのです。遺伝という土壌があって、そこに様々な環境要因が影響し合い、障害的な域に達するというのです。
こうして考えてみると「環境要因は悪いもの」のように感じるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。葉酸やビタミンDなどのように適切に取り入れることでリスクを下げる可能性もある「環境的要因」もあるのです。
結局のところ、遺伝と環境要因が複雑に絡み合う中で、どうなったら発達障害になるのかについてはまだはっきりとはわかっていません。広義の意味で発達障害を解釈すると (経度発達障害まで加えると)、おそらく人口の3割くらいは発達障害者ということになり、リスクが全くないという方が稀少とも言えるでしょう。
現代はLGBTの人たちも大勢いる多様性の時代です。やはり、ありきたりの言葉で申し訳ないのですが発達障害は個性の一つと考え、笑顔で前向きに歩んでいっていただきたいものです。