40代ひきこもり家族の苦悩と希望

 

ひきこもりの子どもが「発達障害」であったり「精神疾患」を発症していたりすることはけっして珍しいことではありません。長期化・高齢化しているケースでは特にそう。そんな時には「障害年金」の請求が可能ですが、様々なハードルもあります。家族だけで請求にこぎつけるのは難しく、途中で諦めてしまうケースも少なくありません。

親は (いつまでたっても)子どもの将来が不安ですし、ひきこもりともなると特に「お金」(生活) のことが心配でなりません。その見通しを、親子でしっかり共有しておきたいものですね。

 

途方に暮れる母

「主人は仕事が忙しく誰にも相談することができません。私一人で何とかしなければと思い悩んでいました。」

そう語るAさん (60代女性) は、長女 (40代) が10年以上もひきこもっており、気苦労が絶えません。(後でわかったことですが) 娘は生まれつき発達障害で、現在はうつ病を発症しています。中学時代にはイジメに遭い不登校になっていました。そういったこともあって、娘は「人を信じることができない」「人の目が怖い」「自分には何の価値もない」と強く思うようになっています。

Aさんは長女の回復を祈りずっと見守り続けてきました。しかしながら (現在まで) 回復することはなく、一日中自室に籠っています。なんとか病院に連れて行き、服薬&カウンセリングといった治療を受けているのですが、いまだ働くことは難しい状態です。

「私たちがいなくなった将来、彼女はどうやって生きていけばいいの?」

 

 

残せるお金は数百万円

ひきこもりのお子さんを持つ家族が皆揃って口にするのは「お金」の不安です。今は親のお金で何とか生活できていますが、親が死んでしまったらどうなるのでしょうか?可能な限り「お金」を残してあげたい気持ちはありますが、せいぜい数百万円くらいしか残せそうにありません。親亡き後、子どもが65歳から一人暮らし生活を始めるとして、収入と支出の大まかな見通しは以下の通りです。

 

■ 収入・・・公的年金 (月6万円)

■ 支出・・・月12万円

 

 

「障害年金」

「障害年金」とは、病気やけがによって生活や仕事などが制限される場合に受給できる公的年金のことです。長期・高齢化しているひきこもりの方の中には「うつ病」「統合失調症」「双極性障害」「発達障害」などを発症しているケースもありますので、受給できる可能性があります。

仮にひきこもりのお子さんが障害基礎年金の2級を受給できたとすると、年金額は年78万円ほど (月額:65000円、2019年度) になります。収入に不安を抱えている本人や家族にとっては大きな救いとなる制度といえるでしょう。ただし、受給にはたくさんのハードルがあります。

 

「障害年金」の請求

障害年金の申請は、初めて病院に行った日の証明書 (受診状況等証明書) を病院で書いてもらう必要がありますが、随分前のことでカルテが残っていない場合もあるでしょう。そんな時は、古い順に問い合わせていくことになります。また、生まれつきの「発達障害」に関して、その障害によってどれくらい日常生活に制限を受けてきたのかを記す必要もあります。他にも必要な書類はありますが、まずはこれから手をつけましょう。

自分たちだけでの解決は難しいことも多々あります。幸い、Aさんは専門家に相談することができたので少しホッとすることができました。「障害年金」が受けられれば、ちょっとだけ娘の将来にも希望の光が射してくれます。

 

 

おわりに

たとえ障害年金を受けられたとしても、(持ち家ではなく) 毎月家賃を支払う必要があるのであれば「赤字」です。トントンというわけにはいきません。80歳までは生きるであろうことを考えると、最低でも1,000万円くらいの預貯金はあるに越したことはないのです。なぜなら、毎月6万円の赤字が10年以上も続くと1,000万円は不足するのですから。

さて、大まかな不足額がわかったところで「将来」のことを一緒に考えてみましょう。「今後収入を増やせないか」「支出を減らせないか」・・・

 

やはり、現実的な解決方法は「本人が働くこと」にありそうです。どんな仕事でもいいので、少しでも稼げるようになるべきなのです。仮に今から働き出して毎月3万円を貯蓄に回したとすれば、20年間で720万円になります。親御さんが残せそうなお金と合わせれば、取りあえずの見通しは立ちそうです。自信がついてもう少し稼げるようになれば、見通しはさらに改善します。

現在ひきこもっている方が「月20万円は稼げるようにならないとダメなんじゃないか」と考えるとプレッシャーでしかありませんが、「月3万円でいい」と思うことができれば随分と気が楽になるのではないでしょうか。仕事を始めることに自信がない場合、社会には様々な就労支援の機関や団体があります。最初は小さな一歩でいいので、できることから始めてみてくださいね。何より、将来を悲観するのではなくできるだけ前向きになるよう家族で話し合っていくことが大事なのではないでしょうか。