「原因不明の関節痛」の原因は「乾癬」かもしれません

 

「腰痛」「首痛」「足痛」など骨・関節系の痛みで悩まされている方の中には、医師から「原因はわかりませんねー」と診断され適切な処置が施されていない方もいらっしゃいます。

そんな方はもしかしたら「乾癬」(かんせん) かもしれません。

 

乾癬とは
道端アンジェリカさん (左) やはるな愛さん (右) も「乾癬」に悩まされているそうです

 

乾癬は皮膚の炎症症状を伴う病気です。「かんせん」という名前から「人にうつる」と誤解されやすいのですが、感染することはありません。皮膚症状の見た目や現れる場所は人によって様々ですが、頭皮・肘・膝など比較的外からの刺激を受けやすいところに出やすい傾向があります。

典型的な症状は、皮膚から少し盛り上がった赤い発疹 (紅斑) の上に鱗屑 (りんせつ:銀白色のフケのようなもの) ができ、ポロポロとはがれ落ちる…というもの。

 

日本国内にいる乾癬患者さんはおよそ45万人 (300人に1人) と言われています。乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症し、男女比は2対1と男性が多い傾向にあります。

 

 

乾癬の原因 & 症状

乾癬の原因についてはいろんな研究が進んでいますが、現時点ではまだ完全に解明されていません。「なりやすい体質」に感染症・ストレス・薬剤などの要因が加わって発症すると考えられています。

「免疫暴走の病気」とも言われており、糖尿病や脂質異常症 (高脂血症)、肥満などが影響するとも言われています。

 

① 尋常性乾癬 (じんじょうせいかんせん)

「尋常」とは普通という意味で、患者さんの約9割がこの尋常性乾癬と言われています。上述したような典型的な症状が主に頭皮・髪の生え際・肘・膝・お尻・太もも・すねなどに現れます。最初は数mm程度の小さな発疹から始まり、次第に乾癬特有の赤く盛り上がった発疹へと発展します。

症状が出ていない皮膚を引っ掻くなどの刺激を与えることでも新たな発疹が現れることがあります (ケブネル現象) ので十分注意してください (衣服は柔らかい素材やゆったりしたサイズのものを選びましょう)。また、患者さんの中には痒みを感じたり爪に症状が現れたりする場合もあります。

 


② 乾癬性関節炎

患者さんの中には、手足の関節・首・背骨・アキレス腱・足の裏などに痛みや腫れ・こわばりを訴える方もいらっしゃいます。このように、乾癬によって関節に炎症が起こった状態を乾癬性関節炎 (乾癬患者さんの約15%に合併する) と言います。症状は関節リウマチに似ていますが異なる病気です。多くの場合は関節に症状が出る前、あるいは出ると同時に皮膚症状が現れます。

腫れ・変形・痛みなどの症状が手足指先の関節に現れることが多いのですが、背中や首がこわばったり、骨盤が痛んで歩きにくくなったり、かかとの後ろのアキレス腱や足の裏に痛みが出たりすることもあります。乾癬性関節炎は、患者さん自身が「皮膚と関節の症状が関係している」ことに気づきにくいため、見過ごされることがあります。日常生活に支障を生じ、重症化しやすいため、早期発見・早期治療が大切です。

 


③ 滴状 (てきじょう) 乾癬

直径0.5〜2cm程度の小さな水滴大の発疹が全身に現れるのが特徴です。小児や若年者に多く、乾癬患者さんの約4%に発症します。風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎 (へんとうせんえん) が誘因となることが多いと言われています。きっかけとなった感染症を治療することで症状は治まりますが、まれに何度も再発を繰り返し尋常性乾癬に移行することがあります。

 


④ 乾癬性紅皮症 (こうひしょう)

尋常性乾癬が全身に広がって、全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び細かい鱗屑がはがれ落ちる状態を乾癬性紅皮症と言います (発熱・悪寒・倦怠感などを伴います)。紅皮症の誘因は皮膚炎、感染症、薬剤などいくつかあります。発症率は乾癬患者さん全体の約1%で、治療が不十分だった場合、治療を行わなかった場合などに発症します。

 


⑤ 嚢胞性 (のうほうせい) 乾癬

乾癬のうち、発熱や皮膚の発赤とともに膿疱 (のうほう:膿が入った球状の袋) が多数現れる疾患を膿疱性乾癬と言います。発疹が手のひらや足の裏、指先など一部だけにみられる限局型と、急な発熱とともに全身に発赤と膿疱が現れる汎発性膿疱性乾癬 (はんぱつせいのうほうせいかんせん) があります。

発症頻度はまれですが、重症になると入院治療が必要になってきます。汎発性膿疱性乾癬は「指定難病」に指定されており、認定基準を満たせば医療費助成が受けられます。

 

 

上手く付き合っていくことが大事!

乾癬は、触れたり温泉やプールに一緒に入っても感染ることは絶対にありません (その点はご安心を)。現状、乾癬そのものを完治させるのは難しいのですが、様々な治療方法が開発されており、症状をほとんど感じない状態にすることも可能になっています。

また通院治療だけでなく、「食生活を見直す」「ダイエットしてみる」「禁煙する」などの生活習慣改善も効果ありと言われています。兎にも角にも、まずは皮膚科を受診しましょう!

 

 

おわりに

乾癬には免疫機能の異常が関わっており、そのような体質の方に環境ストレスなどの刺激が加わることで発症すると考えられています。

本来、免疫機能は身体を守るシステムであり、細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入するのを防いでいます。しかし、何らかの原因で免疫機能に異常をきたすと「自分自身を攻撃し炎症を引き起こす」ようになります。これを「自己免疫反応」といいます。

 

 

つまり乾癬は、免疫に異常をきたしやすい体質の人に、外的な因子(ケガ・感染症・ストレス・乾燥・食生活など)や内的な因子(糖尿病・高脂血症・肥満など) が加わることで発症するのではないかと考えられています。

 

 

治療法は「外用療法 (塗り薬)」「光線 (紫外線) 療法」「内服療法 (飲み薬)」などいろいろあります。「ステロイド薬の服用で良くなった」という話もよく耳にします。個々人によって症状 & 対処法は異なりますので医師とよく相談し改善を目指していただければと思います。