安倍首相夫人も体験した不妊治療と周囲からのプレッシャー

 
不妊治療は、夫婦で価値観を共有することが非常に重要になってきます。35歳で結婚し、子どものいないまま48歳となったキャリアウーマンのA子さんは、40歳の時、夫と子どもについてとことん話し合ったそうです。

 

「君は本当に子供が欲しいの?大好きな仕事、今まで通りはできなくなるかもしれないんだよ。それでもいいの?」

夫にそんなことを言われ、私は本当に子供が欲しいのかどうかよくわからなくなりました。夫は特別子供好きではないと言いますし、必要性は感じていないといいます。

 

「もしも君が、子供ができたことによって仕事に制約ができてしまうことへの不満を感じるようであれば、僕は子作りには協力しないよ」

こうも言われました。

 

それから数日間、考えに考えた結果、私は「仕事は失いたくない!」「たとえ子供はいなくとも、夫婦で二人の時間を思いっきり有意義に過ごせばいい!」

自然とそう思えてきて、本格的な子作りはしない道を選択したのです。

 

 

たとえ子どもがいなくても、ペットを愛したり、地域の子どもの世話をしたりと、別の形の生き甲斐が世の中にはたくさんあります。

子どもがいても、巣立ってしまえば最後は夫婦2人。「不妊治療を行うかどうか」の密なる話し合いをきっかけとして、夫婦の関係をより充実させることこそ、人生で最も貴重なことなのかもしれません。

 

不妊治療を乗り越えた夫婦の深い絆

 

 

 

 一方、不妊治療を望む夫婦たちの苦悩 

このように、アラフォーの頃に不妊治療に挑むかどうかに悩む夫婦は世の中にたくさんいらっしゃいます。冒頭のA子さんご夫婦のように、「不妊治療は行わない」「自然に任せる」と考える方々も多くいらっしゃいますが、検査により不妊体質がはっきりとわかっており、なおかつ「どうしても子供が欲しい」と考えているご夫婦の場合、様々なことを話し合い、真剣に向き合っていかなくてはなりません。

なぜなら、不妊治療には多くの費用がかかりますし、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴います。それに、治療をしたからといって絶対に子供を作れるわけではないのですから。

 

 

 

 踏ん切りつかない夫もいる 

また、不妊治療にはやめ時をどうするのかという問題もあります。「3年やってみてダメだったら諦めよう」と最初から決めていたらいいのですが、なかなかそういうわけにもいきません。

例えば (不妊治療に挑戦した結果)、「妻は子どもはもういい」って言うのですが、僕はまだ諦めがついていないんです、という男性もいらっしゃいます。

中には、「子供ができないなんて信じられない。本当にこのままこの人と一緒にやっていけるんだろうか?別れた方がいいのでは…」と考えてしまう人だっているのです。

 

両親が離婚を勧めるケースも…

 

 

 

 夫婦で乗り越える課題を克服できるかどうかが鍵 

子供ができない、不妊治療をどうするのか、といった局面にあって、さあどうするのかは夫婦が共通の価値観を共有できるかどうかにかかってきます。

言い換えるならば、自分の運命を受け入れる強さを持てるかどうか。この時、夫婦で乗り越える課題は多く、けっして楽ではないかもしれません。しかし、お互いの思いを確認し合うという作業は、その後の人生にとっても大事になってきます。

逆に考えると、この作業がうまくいけば、たとえ子供を授からなかったとしても二人の間にはとても深い絆が生まれることにもなるのです。

 

 

 

 あるご夫婦のケース 

Y美さん (32歳)と結婚したS男さん (35歳)は、結婚直後、Y美さんに子宮内膜症が見つかったことで「治療を受けながら早めに子どもをつくろう」と決意。

S男さんは、精子が熱に弱いと聞くと下半身だけ外に出して湯船に浸かったり、漢方薬を飲んだり、Y美さんの検査入院にも同伴したり、とにかく、できる努力は惜しげもなく実行していったのです。

 

「僕は産めないけど、気持ちだけはずっと寄り添っていたんです」

 

その結果、一度は妊娠したもののその後流産。様々な病院を転々とした末、治療をやめることにしたのです。ただ、二人は気持ちの切り替えができていました。「こんなに二人一緒に頑張ってきたんだから、これからの人生は2人で仲良く生きていける」という確信があったのです。

 

 

「不妊治療は何度でも再開できるし、やめることもできる。続けた後悔も、やめた後悔も納得も、人生に深みを与えてくれます」

 

 

 

 不妊の辛さを語る安倍昭恵さん 

 

不妊治療の辛さと周囲のプレッシャーを乗り越えた安倍昭恵さん

 

安倍晋三首相(61)の妻・昭恵さん(54)は、時に涙を流しながら、「政治家一家の嫁」としての葛藤と苦悩についてある雑誌のインタビューにこう答えておられます。

「不妊治療や周囲からのプレッシャーは本当に辛いものがありました」

 

昭恵さんが安倍首相と結婚したのは24歳の時。当初は「子どもは自然にできるだろう」とのんびり構えていたそうなのですが、そうはならなかったのです。

 

昭恵さんは

「嫁として失格だ!」

「わしが教えに行っちゃる!」

などと厳しい責めを受け続けていたのです。

 

 

首相とは養子という選択肢についても話し合ったそうなのですが、

「そこまでする必要があるのかなと。養子をもらって、その子1人にすべてを捧げるより、もしかしたら違うことをやるべきなのかもしれない、と思った」

といいます。

 

自身の子どもを持たなかった昭恵さんですが、ミャンマーでの寺子屋づくりを支援したり、バングラデシュの女子大設立に尽力したりと、世界の子供たちのために活動に尽力されています。

「困難な状況にいる子どもにとって生きていく希望になる」

ことが、自らの生き方だと考えているといいます。

 

 

 

 おわりに 

 

S男さんご夫婦や昭恵さんのように、「子供ができない」「子供を作らない」ことに対する決心がついたのち、自分なりの生き甲斐を見出せた人たちはとても幸せな人生を歩んでおられると思います。

 

ただ、最後に一つ付け加えておきたいことがあります。それは、心ない医師がいるから気をつけてほしいということ。

 

先述したY美さんが不妊治療を断念した本当のきっかけは、事務的かつ高圧的な医師の態度に耐えられなくなったからだそうです。医師の冷たい言葉に、気持ちがぷつりと切れたともいいます。

 

「医師に傷つけられる人は多い。患者の気持ちを理解する医師が増えてほしい」

とY美さん。

 

今後、不妊治療の精度が上がり、心を持った医師が増えてくることを願ってやみません。