万引きを繰り返してしまう病気「クレプトマニア」について

 

万引犯のニュースを見て「なぜあの人が?」と思ったことはないでしょうか? 社会的地位が高かったり、経済的に余裕があったり、万引と本人が結びつきにくい……。そんな場合は、ある病気が関係した万引かもしれません。

皆さんは「窃盗症」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?「窃盗症」とは、別名「クレプトマニア」のことであり、窃盗自体の衝動により反復的に万引きなどを犯してしまう症状のこと。精神障害の一種でもあります。

 
この「クレプトマニア」は依存症の一種で、病的窃盗とも言われています。

依存症と聞いて真っ先に思いつくのは「アルコール依存症」や「薬物依存症」「ギャンブル依存症」などではないでしょうか。これらの依存症は、物質に依存する「物質依存」なのですが、クレプトマニアは行為に依存する「行為・プロセス依存」なのです。

 

 

 

「窃盗症」主婦に酌量減刑判決

スーパーで万引きを繰り返したとして、常習犯窃盗罪に問われた40代の主婦に対して弁護側は「主婦は衝動的に万引きを繰り返す精神疾患『クレプトマニア』の診断を受けており、専門的治療が必要」と主張。

これを受けた地裁の裁判官は「罪の重さをしっかり受け止めさせた上、早期に治療を受けさせるのが相当」と酌量減刑の判決を下しました。

 

 

近年、こうした万引き常習犯はクレプトマニアという病気であり、「罰則では再犯防止ができない。きちんとした医療的対応が必要だ」とする考え方が定着し始めてきました。

一方で、専門医は「万引き犯を晒し者にすることは大変危険だ」と警告しています。

 

窃盗症患者の中には情緒不安定な方が多い。実際、万引きが見つかった後に会社や家族に知られることを恐れ、自殺や自傷行為に至る人も多いのです。

 

 

 

「欲しいから」ではなく「窃盗のための窃盗」

「自分の意志の力では窃盗行為をコントロールできない。衝動的に繰り返し、貪欲に、そして強迫的に盗んでしまう」

 

彼らは、「お金がないから」「どうしても欲しいから」盗むわけではないのです。クレプトマニアの人が求めるのは (人によって異なりますが)、優越感や達成感で気分が変えられるなどなんらかの「メリット」があるからだとされています。

彼らは、社会的損失があっても反復して盗むのです。盗むものは安価なものばかり。過去に実刑を受け『もう絶対にやらない』と言っていたはずなのに繰り返してしまう。

 

もし家族がそうであれば、クレプトマニアという病気を疑ってみましょう。

 

 

 

認知症の可能性も!

クレプトマニアと並んで、高齢期になって窃盗を繰り返すようであれば「前頭側頭型認知症」も疑われます。

本人に罪悪感は一切なく、なぜ盗んでしまったかを理解できていません。これは、認知症の症状ゆえの窃盗なのです。

 

 

前頭側頭型認知症の人すべてが反社会的行動を取るわけではありませんが、世間に「認知症 = 反社会的行動」との認識が広まっていないので、「あんなことをしたのに悪びれた様子が見られない」と批判され、実刑判決を受けることもあるのです。

前頭側頭型認知症であれば責任能力がないとみなされ、執行猶予判決になる可能性が高まります。また、当初はクレプトマニアだと思われていた人が、1審で争っているうちに話が噛み合わないことや感情のコントロールができなくなることが多々見られ、脳画像検査の結果、前頭側頭型認知症が判明した、といったケースもあります。

 

 

 

まとめ

クレプトマニアにしても前頭側頭型認知症にしても、生活の中で注意深く接していないと分かりづらいものです。同居している家族ですら、なかなか気づきにくいものなのです。

 

窃盗を繰り返している人たち…

彼らの中には、クレプトマニアや前頭側頭型認知症の人たちがかなりの数、含まれているのではないでしょうか。

 

クレプトマニアの場合は、環境が変わると病的な窃盗行動がいったん収まるかもしれません。しかしまた再発(リラプス)する可能性は高く、再び短いスパンで繰り返すのです。そこで、専門医療機関によるクレプトマニアの治療が不可欠になると覚えておきましょう!

前頭側頭型認知症は脳の変性が原因で、自然に治るものではありません。こちらもやはり、生活支援を中心とした治療が必要となります。

 

参考までに!!

 

未成年の頃から窃盗を繰り返す場合は、自閉症スペクトラム障害や摂食障害など別の原因も考えられます。

「万引は犯罪だ」でも「病気だから許される」という話ではなく、病気が隠れていることを見逃さず、きちんとした治療を受けさせることが大切なのです。

 

 


最終更新日:2017/12/02