「介護される側の気持ち」と「認知症の発症を遅らせる方法」を考える

 

認知症 (Dementia) は認知障害の一種であり、後天的な要因で脳機能が低下する状態をいいます。ちなみに、認知症は犬や猫などでも発症します。

当時、私のおばあちゃんは介護認定3でした。地元の主治医に相談したら、「まだ自分で寝起きもできるし、指示書はちょっと難しい」と言われました。「訪問看護は一般的に寝たきりの人に必要なものだから」と……。

 

日本の介護が厳しいのは、例えば「訪問看護が受けられるのは寝たきりの人」…というように杓子(しゃくし)定規的な対応を取られることにあります。また、(介護は) 身体的な問題を中心に考えられていて、心の問題が置いていかれているのです。

そうではなくて、本当に大事で必要なことは、「お風呂に入らない」という認知症患者の行動の意味を考えて、それに対してどう仕掛けたらその気になってくれるのか、計画を立てて実行することなのです。

 

 

 

 

 

もっと考えたい!介護される側の気持ち

実は私は「介護」という言葉が嫌いです。「介入して護(まも)る」と書きますよね。介護する側が主体で、「上から目線」のように感じます。でも、多くの認知症患者や高齢者たちは「守ってもらいたい」とは思っていません。

(認知症患者に関して言えば) そもそも自分が認知症だと思っていないことも多いのです。それなのに、例えば、デイサービスではトイレにスタッフがついてくる。普通に考えればわかることですが、「この人、なんでトイレまでついてくるの? 気持ち悪い」ってなります。

 

そこで、介護する人には「介護される人が今どう思っているのか」というイマジネーションが求められると思うのです。「してあげるのが仕事」「かわいそうだから」と考える一方的な「上から目線」の態度は一番ダメなことなのです。

 

 

 

 

 

海外 (イギリス) に学ぼう!

例えばイギリスには、「パーソン・センタード・ケア(P.C.C.=認知症の本人を尊重するケア)」という認知症ケアの考え方があります。

パーソン・センタード・ケアとは、認知症の人を一人の“人”として尊重し、その人の視点や立場に立って理解し、個別のケアを行おうとする認知症ケアの考え方です。

 

パーソン・センタード・ケアの観点からすれば、主役はケアを受ける側です。常に認知症患者 (高齢者) の視点で世界を見ようとし、そこから何をどうすればいいのかを導き出すのです。

例えばこの中に「ケア・マッピング」というものがあるのですが、これは「この人にはこういうケアが必要ですよ」「こういうときにはこういうふうに対応するといいですよ」といったようなことを見つけ出す作業のことなんです。

 

 

一例を挙げて説明しましょう。

 

※ 写真はイメージです

 

元陸軍大将のAさんは大変気難しく、特に女性スタッフに対しては暴言を吐いてばかりいました。この時スタッフは、その男性がこれまで部下から「イエス・サー」と言われて過ごしてきたことを理解し、そして、彼を世話する人は若い男性だけにして、常に「イエス・サー」と部下役をするなどの配慮をしたのです。そうしたら、これまで酷かった暴言などの周辺症状が全く出なくなったというのです。

つまり、「認知症」という病気だけが同じであって、基本的には十人十色、千差万別の対応が必要なのです。これ、当たり前のことのようで忘れられがちな、すごく大切なことなんです。

 

 

 

 

 

認知症の人の看取りの難しさ

認知症のおばあちゃんの人生の「最終章」にどう向き合えばよいのか、どう看取ってあげたらよいのか、というようなことをよく考えるようになりました。

本人は認知症のおかげで死の恐怖がなくなるのかもしれませんが、介護をしている私たちは、最終的にはそれをどう引き受ければいいのか。ハッピーエンディングな死は可能なのか。

 

よく、介護をしてきた人たちから、「最後にうまく死なせてあげられなかった」という話を聞きますよね。

例えば私の友人は、医者に勧められるまま、認知症の父親に胃ろうを造設しました。不快感がずっと続いていたようで、見ていてかわいそうだったと言っていました。最期は大きな脳梗塞を起こして亡くなったのですが、家族間で「胃ろう」への考え方の違いもあり、後にしこりが残ったそうです。

 

 

認知症の人の看取りの難しさは、医療的決断の全てを家族が引き受けることにあると思います。医師の勧めで家族が良かれと思って決断しても、本人にとっては「良くなかった」という場合だってあるのです。

家族間の意思統一も難しい中で、看取りの後に「果たしてこれでよかったのだろうか?」と自責の念にさいなまれる方も多くいらっしゃるようです。

 

 

 

 

 

4人に1人は何らかの認知機能低下がある!

たび重なる物忘れに、「もしかしたら認知症の始まりなのでは…」と悩んでいる中高年も多いのではないでしょうか。そんな中、「認知症にならない方法」「病気を食い止める生活とは?」といった研究が行われています。

認知症「予備軍」といわれる軽度認知障害(MCI)の時期から進ませないためのケアも始まっています。海外の調査研究では、「皮肉屋」の人ほど認知症リスクが高いことが分かってきました。

 

厚生労働省の調査結果では、65歳以上の認知症の人は約15%にあたる462万人ほどなのだそうです。これに、MCIの診断を受けた400万人を加えると862万人。。。

なんと!4人に1人は何らかの認知機能低下があるという計算になるのです。

 
 

 

 

 

認知症の発症を遅らせる方法

MCIのまま放置すると、約5~7年でその半数ほどが認知症に進行するとも言われています。そこで、MCIの人はもちろん、今は健康な中高年の方の認知機能低下を防ぎ、将来の認知症発症を遅らせることがより大切になってくるのです。

 

「たとえ2年でも症状を遅らせることができれば、患者自身が豊かな生活を送る時間が増えるだけでなく、介護や医療費の負担を減らすことにもなるのです」

(ちなみに、患者のピークは85~89歳で、働き盛りから発症する若年性認知症は5%ほど)

 

では、認知機能はどうすれば維持することができるのでしょうか?

例えば、「編み物など手を使う作業が良い」「几帳面な人は認知症になりやすく、おおらかな人はなりにくい」などという通説はありますが、残念ながらこれらに科学的な裏付けはありません。

 

 

じゃあ本当にどうすればいいの?

 

 

最新のデータによれば、

認知症予防に効果があるのは「運動の習慣化」「脳トレ」「十分な栄養補給」「社会性を保つこと」「睡眠」のバランスが大事だとされています。

 

 

加えて、「歩きながら計算する」といったような「体を動かしながら頭を使うこと」が効果的なようです。

そして、「社会性を持つ」ことも非常に重要なことだと言えるでしょう。皮肉屋の人は、否定的になるあまり人とうまくいかなくなり、孤独感が高まっていくのです。

 

また、MCI患者は家族から「同じことばかり言う」「こんなこともできないのか」などと否定され、現状に不安を感じたり孤独になったりするのです。

こういった問題の解消法の一つとしては、デイケアなどで同じレベルの人と話をすること。そうすることで、脳をリラックスさせ、症状を改善させることができるのです。

 

ほとんどの認知症は加齢性の疾患です。若い頃からの生活習慣の積み重ねで起こるとも考えられています。

脳卒中や心筋梗塞を予防するために運動や食事で肥満改善や血圧管理を心掛けるように、認知症予防にも日頃の生活習慣が大切なのです。

 

 

 

 

おわりに

ある調査によれば、学歴が高い人ほど認知症になりにくいことが分かりました。この結果から、知的探求心が旺盛な人ほど認知症になりにくいとも言えるのではないでしょうか。

ぜひ、様々なことに興味を持ってくださいね!

 

 

「できない」→「困った」が脳を活性化します!

 

 

脳の活性化のためには、「できる」ことが大切なのではなく、できずに「困った」「どうすればいい?」と思うことが大事なのです。何事かに和気あいあいと楽しく挑戦してみてはいかがだろうか。

 

 

 


最終更新日:2017/12/03