親の介護で自己嫌悪に悩まされる子供世代の現実

 

年末年始や夏休み…久しぶりに実家に帰省して、親の老いを感じる人も多いのではないでしょうか。故郷に暮らす老いた親が、いよいよ動けなくなったとき、あなたはどうしますか?

都会を離れ、田舎で一緒に同居して世話をするというのも一案ではありますが、離れて支える “遠距離介護” を選ぶ人も少なくありません。 “同居介護” と  “遠距離介護”。あなたはどちらを選びますか?

 

 

 

両親との葛藤と介護の現実

東京都在住のAさん(50代女性)は、数年前から父の膀胱ガンが悪化したのを機に月2回、実家 (東北) へ通うようになりました。しかし、父の病状が進行するに従い、Aさんは東京に戻れなくなっていったのです。

「当初は母と一緒に父を介護するつもりだったのに、母は介護も家事も放棄し、全てを私に丸投げしたんです」

 

Aさんの2人の子供たちはすでに独立し、夫は単身赴任中。フリーランスで編集などを請け負っていたAさんは、故郷で「親の介護をしながら仕事を続けよう」と懸命に頑張ったもののうまくこなせず、結局廃業することになったのです。

「正直、自分のやり甲斐 (生き甲斐) を一つ失った喪失感は大きかったです」

 

父親の要介護認定を受けようとも試みましたが、母は「娘がいるのにみっともない!」とこれを拒否。”娘 (Aさん)への依存と支配” を日に日に強めていった母は、ついに、Aさんに家事以外の外出をほとんど許さなくなったのです。

そんな「奴隷のように扱われる」生活が2年ほど続いたある日のこと、張りつめていた心の糸がプツリと切れたのです。

 

    「私を東京に帰して!このままではお母さんを恨んでしまう!働いて仕送りするから、家政婦を雇って!」

     

    Aさんをここまで追い詰めた理由の一つは、両親を故郷に置いて上京したことへの “罪悪感” でした。長年、両親は娘と同居する知人をしきりにうらやみ、帰省のたびに親戚から「早く帰ってきてあげて」と言われ、責められているように感じていたのです。

     

     

    結局、Aさんはそのまま故郷に残ります。終末期が近づき、父の深夜のトイレ介助は一晩で20回以上。排泄のたびに痛がり苦しむ父の背中をさすり続けるAさんは、まとまった睡眠を取ることができず、どんどん痩せていきます…

     

    それから…

    父は他界し、今度は母が認知症になりました。今は定年退職したばかりの同郷出身の夫もAさんの実家に移り住んでくれ、共に協力しながら介護をしています。

    「母に本音をぶつけ、いよいよとなれば人に任せればいいと割り切れるようになり、気持ちが少し楽になりました。」

     

     “遠距離介護” から始まったAさんの介護生活は辛く大変なものでしたが、全力で父の世話ができたことで後悔はないといいます。一方で、「母が家事をしなくなったのは面倒をみすぎた自分の責任でもある」と反省。

    「これからは、母を精一杯みてあげたい!」

     

     

     

    母に優しくなれない…

    スマホの着信音にBさん(40代女性)はため息をつく。母(70代)からの電話だ。「病院に送って!」「あれ買ってきて!」というお願いに始まり、「腰が痛い!」「足がしびれる!」とグチり、揚げ句の果てに「死にたい…」とぼやく。

    旅行や家庭菜園を楽しんでいた母が変わったのは昨年。腰の病気を患ってから。Bさんには兄と姉がいるが、兄嫁には遠慮し、遠方で暮らす姉には心配をかけられないと、近くに住むBさんばかりを頼るようになっています。

     

    「つらいのもわかるし、育ててもらった恩義もある。面倒を見なきゃいけないとは思うけど、こう毎日続くとさすがにうんざりなんです。」

     

     

    一人娘は大学生。学費のため、Bさんは契約社員としてフルタイムで働いています。

    「もう少しで子育てから解放されるというのに、今度は親の介護?…と思うと切なくなります。やりたいことがたくさんあるのに……。」

     

    一方で、老いた母に優しくなれないことに自己嫌悪も感じてしまうのです…

     

     

     

    矛盾して当たり前

     

    いかがでしたか?

     

    介護にまつわる事例を2例紹介しましたが、皆さんにも多少心当たりのある感情だったのではないでしょうか?はい、いくら親子とはいえ、全てがうまくいくわけではありません。

    事実、世の中には “親との関係に悩む人たち” が大勢いらっしゃるのです。特に、子どもが40〜50代で親が70~80代という親子。中でも母と娘には、「特殊な関係性がある」ようです。

     

     

    社会の中の新しい価値観と古い価値観の間で、親自身が揺れ動き、矛盾したことを言ったり過剰に干渉したり。。。一見愛情深く育てられてきたかのようにも見えますが、その実、支配されてきたと感じている子どもたち。

    そしてその支配は、就職、結婚、育児にまで及んだと感じている子供たち。。。

     

     

    ところが、そんな親が老いて弱った途端、認知症でミスを繰り返すようになった途端、子供たちは頭では仕方ないとわかっていても異様に腹が立ってしまうのです。エスカレートする親のわがままに…

    ただでさえ親が老いていくことには喪失感があり、そこに『散々支配してきたくせに今さら何よ!』という根深い感情が複雑に絡み合って、怒りやイライラに変わるのです。

     

    でも、しばらくすると「なんて自分は冷たい人間なんだ」と自らを責め、逡巡して苦しむのです。

     

     

     

    終わりに

    介護はそれ自体がすごくストレスの溜まる作業の連続です。それに加えて、こうした感情の揺れを抱いてしまうと、心身共に消耗し、介護うつになる危険性も出てくるのです。

     

     

    親への感情は、「好き」「嫌い」「憎い」といった単純な一言では言い表せない多層的なものです。その時どきに万華鏡のように様々な感情が噴出します。

     

    だからこそ、「矛盾して当たり前なんだ」と割り切りましょう。その上で、趣味や友人との付き合いなど自分自身の生活を充実させることに心を砕きましょう。

    こうして、親から感情を切り離す時間を意識的に作ることが大事なのです。

     

     

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