オーストラリアの移民対応型高齢者介護施設の現状
世界有数の長寿大国オーストラリアの介護は今、転換期を迎えています。海外から移民を受け入れる多文化社会の中で、通訳のいる言語は増加しています。また、食事面での配慮も必要になってきています。
そしてついに、2016年10月、現地日本人高齢者向けのサービスも始まったのです。
そこで今回は、介護施設 in オーストラリアの現状をみていきましょう。日本においても採用すべきサービスのヒントがあるかもしれませんよ。
「今日のランチのメインはハンバーグで〜す!アジア人向けのメニューとして魚の照り焼きと白ご飯もありまーす。」
「糖尿病患者向けのデザートは低カロリーにしていまーす!」
多様性・多文化主義のオーストラリアでは、このように食事を洋・アジア系の2種類用意するのは当たり前!
オーストラリア南部の街アデレード郊外にある介護施設「リージェンシー・グリーン」は、中国、ベトナム、カンボジア、マルタなど7ヵ国からの移民計80人が暮らす高齢者施設です。入居者の多くは80歳以上。英語の他に多様な言語が飛び交っています。
サービスを受ける移民の出身国や地域は多彩です。今後はアフリカや中東からの高齢者も増えます。先回りして考え、言語や食事に限らず、細かなニーズに応えていかなければならないのです。
ベビーブームが20年近く続いたオーストラリアでは、65歳以上の人口が今後40年間で現在の倍以上 (約890万人) に増えるとされています。
ちなみに、平均寿命は82.8歳で世界第4位です!
40年ほど前に多文化主義へと舵を切り、移民してきた人々の高齢化も加速していきます。「多様な国々から来た移民が暮らす高齢化社会」という未知の局面を迎えつつあるのです。
2015年春の時点で、全人口 (約2,378万人) のうちおよそ3割の670万人ほどが外国生まれ。移民の出身国・地域は200以上で、話される言語は先住民アボリジニーの言語を除いても200以上に上るのです。
となれば、介護制度に関する政府のウェブサイトは中国、アラビア、イタリアなど、18の言語で説明され、診察などでも各言語の通訳サービスが無料で受けられるようになっています。
オーストラリアの高齢者介護は基本的に税金で賄われており、政府は補助金の支出を抑えようと1980年代に、施設中心から在宅ケア重視へと移行してきました。
それでも、数年前から資源ブームは終わり、好景気に陰りが出始め、2016年度の予算案では財政赤字が3兆円近くと予想されています。
介護向け支出は現在1丁4,000億円ほどですが、今後は補助金が削減され、介護事業者間の競争が激しくなると予想されています。
各業者は、移民向けの多種多様なサービスの提供で生き残りを図るしかないのです。
オーストラリアに住む60歳以上の日本人はおよそ3,000人。これまで、日本人向けの介護サービスはありませんでしたが、2016年6月、ジャパン・トータル・ケア・サービス社が初めて政府の認可を受け、10月から日本人向けのサービスを開始。
これは日本の看護師資格を持つスタッフや介護職員を利用者の自宅に派遣し、家事・入浴なとを介助するサービスが中心となっています。
利用者負担は、「65歳以上」「永住権保持者」「年金暮らしで収入の少ない人」であれば1日最高800〜2,000円ほどで利用できます。
若い頃は堪能だった英語…
しかし、認知症になり、日本語しか話せなくなった人もおり、「日本語が通じる」「和食が食べられる」介護サービスはとても助かるのです。
2015年時点で、オーストラリアに永住している日本人の数は5万人ほど。国別では、アメリカ、ブラジルに次いで3番目に多いのです。
バブル経済期に移民した人たちの高齢化が進んできています。1980年に始まったワーキングホリデー制度で訪れ、定住した世代もついに高齢者となり始めているのです。
移住先でも質の良い介護が受けられるといいですね!
日本の介護も財政難に苦しんでおり、人手不足も懸念されています。税金の無駄遣いをやめ、政治家・役人にかかる無駄金をなくし、健全に医療・介護の充実を図っていただきたいものです。