保険の「年収・年代別モデルプラン」を真面目に考える

 

よく、年代・世帯 (家族構成)・年収などをもとに保険のモデルプランが提示されたりしていますが、これは本当に全ての方に当てはまるものなのでしょうか?

複数の保険会社のホームページで、年齢・性別・家族構成などを入力して「おすすめの保険」を知るシミュレーションを試してみたことのある方であれば、こうした疑問を一度くらいはお持ちになったことがあるのではないでしょうか。

 

保険代理店の営業マンなどに相談してみると、例えば、20〜40代未婚の人であれば、「医療保険」「がん保険」、それに、(独身であっても、万が一に備えて葬儀費用くらいは用意しておいた方が良いと)「終身保険」への加入を勧められたりします。

子供がいる人の場合であれば、これらの保険に加えて死亡時に1,000万円単位の保険金が確保できる「定期保険」などへの加入が不可欠になる…かもしれませんね。

 

その他にも、病気やケガで長期間仕事に就けない事態に備える「就業不能保険」や「個人年金保険」などなど、様々なタイプの保険が販売されています。

このように、年代や家族構成別に様々なリスクを想定し、最適な保険を探そうとすると、一生涯、何かしらの保険商品を利用することになります。

 

ここで一般的に考えられる保険の選び方は以下の通りです。

 

 

 

 

重大性と緊急性から保険を選ぶ

 具体的には

1 重大性 (自分では用意できない大金に備える)
2 緊急性 (直近にも必要になり得る)

 

を意識するといいでしょう。

 

 
まず、死亡に備える保険は重大性・緊急性ともに〇ということになります。仮に、幼い子供がいる世帯主が急死すると、国の遺族年金を考慮しても、遺族の生活費として年間100万円単位のお金がかかることもありますし、すぐに必要になるお金でもあるからです。

次に、例えば「就業不能保険」などは重大性・緊急性の評価が難しいところです。あなたなら〇ですか?△ですか?それとも❌?

 

こうした判断は個人個人の価値観に委ねられますが、例えばあなたが病気やケガで障害が残り、仕事に復帰できない状態が何年も続くかもしれない、と考えた場合、この保険の重大性・緊急性は◯になります。

この場合、当人や家族の生活費を補塡するには多額のお金が必要になりますし、住宅ローンの返済などは収入が途絶えても待ったなしだからです。

 

 

 

 

「介護保険」と「がん保険」は?

この2つは、私の判断では重大性・緊急性ともに△です。公的介護サービスを限度額まで利用した場合の年間自己負担額を試算してみると、要介護レベルにより異なりますが、だいたい20万~43万円です。10年で200万~430万円といったところでしょうか。

余裕のある方であればこれらの保険にも加入して良いと思いますが、子供1人を育てるのに1,000万円単位のお金がかかることを考えると、優先順位は低い保険であると考えられます。

 

「がん保険」も同様に△です。仕事への影響から収入減になる人もいるとしても、死亡や就業不能状態で収入が途絶える場合に比べると影響は小さいとみて、重要性は△にしています。

要介護状態になる人やがんにかかる人は高齢者に多いことから、緊急性も△です。そして、「医療保険」の重大性については、給付額が大金になりにくいので✖。

 

 
そうやって考えていくと、「学資保険」や「個人年金保険」といった貯蓄型の商品は重大性・緊急性ともに✖だと思われます。これらは、保障目的で利用する他の商品のように多額のお金が用意できる仕組みではないからです。

こうしてあれこれ考えてみて、あなたのライフスタイルに適した保険の加入方法を吟味していく必要があります。

 

 

 

 

保険の仕組みを考える

「重要性」「緊急性」という2つのキーワードを軸に考慮していくと、保険の利用がふさわしいのは「現役世代の急死」や「長期の就業不能状態」に備える場合だと結論づけられます。

「いやいや、入院リスクなどは加齢とともに高まるのだから、『終身医療保険』加入は必須なのでは?」といった反論もあるでしょうね。でも、遠い将来に備えるほど、契約内容の「不確実性」が増すのではないでしょうか?

 

ここでもう1度、保険の仕組みを考えてみてほしいと思います。「健康保険」や「公的介護保険」の保険料が値上げされる理由を想像してみると分かりやすいでしょう。

まず、高齢者の入院保障などは保険の仕組みに馴染まないことはお分かりいただけますでしょうか。なぜなら、入院リスクが高まる年齢で充実した保障を得るには、高額の保険料を負担する以外にないからです。

 

 

「若いうちに終身型の保険に入っておくと、老後も安い保険料で充実した保障が持てる」という見解もありますが、「不確実性 (保障内容が時代に合わなくなる)」が高まることは覚えておきましょう。

 

 

 

 

まとめ

近年、通院治療で対応できるがんの場合、入院と死亡保障中心の古い「がん保険」がさほど役に立っていないケースがみられます。これからも、医療の変化などを予測するのは難しいため、遠い将来に備える契約には「不確実性」が増すのです。

相対的に、保険料負担が重くならず、将来においても契約の価値が劣化する危険性が低いのは、若年層から中高年までの人が、一生涯ではなく期間限定で保険を利用する場合だと考えられます。

 
従って、モデルプランを検討するのであれば、一定期間の死亡に備える「定期保険」や「就業不能保険」などを優先したらいいはずです。

もちろん、考え方は皆さん異なるはずです。例えば、「大病になっても生活のレベルを落としたくない」と考える人は、介護やがん保険の重大性・緊急性を大きく見るかもしれません。

 

このように具体的に検討していくと、モデルが細分化するという皮肉な流れになります。現実問題としては、損得に関係なく、親身になって相談に乗ってくれるファイナンシャルプランナーなどに相談するといいでしょう。

その際には、今回紹介したような考え方を意識してほしいと思います。

 
 


最終更新日:2017/12/03